CSO連絡会
Top English

第3回日米CSOフォーラム
 
トランスナショナル・シビル・ソサエティと新たなグローバル・ルール

進行役:
エバン・ブルーム氏
 パクト副代表(キャパシティ・ビルディング・サービス担当)

発表者:
ナンシー・ボズウェル氏
 トランスペアレンシー・インターナショナルUSA常務理事・事務局長
高橋清貴氏 日本国際ボランティアセンター(JVC)調査研究政策提言担当
フロレンス・アドカイエ・アミエシマカ氏 国際女性弁護士連盟会長(ナイジェリア)
エリザベス・E・シェパー氏 宗教と平和世界会議プログラム開発ディレクター



 このセッションでは、NGOが国際舞台で発揮できる力と直面する困難についてのさまざまな視点が提供された。トランスペアレンシー・インターナショナルは、汚職問題に関する考え方をグローバルなレベルで変えるキャンペーンの成功例を示した。パレスチナとナイジェリアの事例からは、紛争状況下におけるアドボカシーと救援活動に伴う複雑さと、途上国の貧困を維持・助長する南北関係の問題が明らかになった。平和構築に関するディスカッションも前のセッションから引き継がれた。

 最初の発表者であるナンシー・ボズウェル氏は、まず同氏の団体であるトランスペアレンシー・インターナショナルの概略を述べた。この団体は汚職に立ち向かうという困難な課題に取り組むために、先進諸国の少数の人々が中心となって1993年に設立された。以来、汚職に対する考え方が大きく前進するなかで、団体も数々の成功を収めてきた。創設時には汚職についての議論を目にすることはまったくといっていいほどなかったが、現在は、何が必要なのかについての合意がかなり形成されてきており、あとは行動を起こすだけという状態になっている。投資家、世界銀行、各国政府は、すべて汚職問題に取り組む重要性を十分認識している。グッド・ガバナンス(良い統治)を成立させる状況は現在では広範な社会で整っており、多国籍企業による贈賄は米国では犯罪行為と規定されるようになった。発展途上国の人々は自国の政府は信用できないとたびたび表明しており、汚職が横行する状況の改善を願っているとボズウェル氏は語った。トランスペアレンシー・インターナショナルの成功は、グローバル・ネットワークがいつにも増して現在重要になっていることを示している。紛争、貧困、病気、汚職といった諸問題は目新しいものではないが、市民の力は新しく、現状に不満を抱き懸念を表明する市民の声の影響力は大きい。ボズウェル氏は、周囲の状況が必ずしも民主的とは言えない場合でも、声を上げること、声を上げる方法を見いだすことは大切だと述べた。メッセージやそれを伝える人間が非難されるおそれもあるが、トランスペアレンシー・インターナショナルのような団体自身が透明性を確保し説明責任をまっとうすれば、大きな変化が訪れることもある。

 2番目の発表者である日本国際ボランティアセンター(JVC)の高橋清貴氏は、パレスチナにおけるJVCの体験について詳細な考察をおこなった。JVCは主にアジアで活動しているが、アフリカ、イラク、パレスチナでも活動をおこなっている。おもに開発の分野で活動しており、まだアドボカシーの分野では弱い。高橋氏は、効果的なアドボカシーのためには、マクロレベルの政治的背景に現地レベルの情報をうまく組みこんでいくことが必要だと説いた。先進国の一般大衆は、メディア報道だけでなく、困難な状況下にある現地の人々の声を聞く必要があり、和平プロセスには一般市民の視点を盛り込まなければならない。JVCは1992年からパレスチナで活動しているため、現地情勢についての充分な情報を持っている。パレスチナでは、夜間外出禁止令や占領が非常に長い期間続いており、至る所に検問所がある。その結果、パレスチナの人々には移動の自由がない。道路に開いたいくつもの巨大な穴が通りを遮断していて、車両の通行が妨げられ、戦車が救急車を攻撃することもある。医療設備は極めて乏しい。高橋氏は、パレスチナ、米国、イスラエルのNGOのネットワークがつくられ、医療品を供給する車両を走らせるなど医療サービスを提供していると報告した。イスラエル人とパレスチナ人の連携の状況はよくなりつつあるものの、9.11に続くテロリズムの言説は、情勢の悪化につながっている。現状ではグローバル・ガバナンスの考え方が明らかに不足しており、先進国NGOは9.11以後の世界平和の推進に向けてそれぞれの団体の役割を見直さなければならないと高橋氏は述べた。

 3番目の発表者であるフロレンス・アドカイエ・アミエシマカ氏は、ナイジェリアのニジェール川デルタ地帯の状況を紹介した。この地域は、石油生産によりナイジェリアの富の90%以上を生みだすと同時に、最貧の人々が生活する場所でもある。この地域の多国籍企業は、自分たちはただの企業で、一般市民の面倒は政府が見るべきだと主張するが、ナイジェリア政府は一般市民よりも多国籍企業を保護している。アミエシマカ氏の団体は、この地域の女性たちと緊密に連携を取りながら、女性が自ら声を上げて権利を求める活動を展開している。女性は特に権利を侵害されやすく、最貧層に占める女性の割合も高いためである。この団体は、法律相談、人権教育プログラムや、地域社会で活躍する人材の育成のために、弁護士補助員養成プログラムを提供している。アミエシマカ氏によると、残念ながらこの地域の紛争状況は悪化している。和平プロセスと交渉の場に女性も含まれなければならないと同氏は痛感している。この考えにもとづき、氏の団体は女性に参加のためのスキルトレーニングを提供しているが、同時に参加を阻む障壁も取り除く必要がある。重要な点は、先進世界の人々が自国の多国籍企業の行動をもっと知ることである。先進国の人々は自分たちの資金がどこに投資されるかを決定することにより、貧しい地域での搾取を防ぐことができるのである。アミエシマカ氏は、NGOの正統性は活動目的の誠実さで決まると述べて締めくくった。ナイジェリアの事例からもわかるのは、選挙によって選ばれた人が必ずしも一般市民を守るわけではなく、したがってそれが正統性を保障するものではない。NGOの正統性は、選挙による正統性をはるかに凌ぐことができる。

 最後の発表者であるエリザベス・E・シェパー氏は、10年間オランダのNGOであるNOVIB(オックスファム・オランダ)に勤務していた。1995年にNOVIBはオックスファム・インターナショナルの一員になっている。これは、連携を組むことが重要になってきているという認識があったにもかかわらず、当時、NOVIBには世界各国とのしかるべきリンクがなかったためだとシェパー氏は述べた。NOVIBとオックスファム・インターナショナルは紛争予防に関してさまざまな取り組みをしてきたが、この分野での活動はあまり成功しなかったため、シェパー氏はこの2年間はハーバード大学で紛争の研究をしている。研究の成果として、平和構築の取り組みに3つのギャップがあることがわかっってきた。第1のギャップは、平和をプロセスではなく最終結果と見なす点である。戦闘が開始する直前の状態は完全な和解が成立している状態ではなく、したがって戦闘終結時というのは、平和構築の出発点に過ぎない。第2のギャップは、紛争を招く経済的社会的不公正の解決のための構造的な変化が平和構築には必要だという理解が欠けているという点である。平和構築のためには、社会的不平等への取り組みは不可欠である。第3のギャップは、関係者同士の縦のつながりが不足しているという点である。関係者は身内だけで話し合い、必ずしも部外者の意見を聞かないことも多い。次にシェパー氏は、NGOの自国での活動の重要性を強調した。国境を越えた統治が存在するのは確かだが、資金の流れはやはり国民国家レベルで起こっている。先進国の一般市民は、これらの意志決定をおこなうリーダーを選出するのだから、問題の所在を理解していなければならない。シェパー氏の現在所属する団体は、世界中に宗教コミュニティを広げているが、これは病人や貧民の世話をし、人種の壁を越えるアプローチをとっている。シェパー氏は、この団体の活動に見られるように、コミュニティ間での誠実な話し合いの必要があると考えている。
 
   
TOP BACK NEXT