【セミナー報告】SDGゴール16(平和と公正)と市民社会の取り組み

05.23


2017年5月9日(火)、CSOネットワークは、セミナー「SDGゴール16(平和と公正)と市民社会の取り組み」(共催:SDGs市民社会ネットワーク、国際協力NGOセンター(JANIC)、日本NPOセンター)を開催しました(会場:日比谷図書文化館)。本セミナーは、持続可能な開発目標(SDGs)のゴール16「平和と公正をすべての人に」に焦点を当てたもので、当日は関心を有するNPO/NGO関係者、研究者、政府機関関係者、市民など、幅広いステークホルダーの方々約30名の参加を得て、日本国内の議論を開始する第一歩として貴重な機会となりました。

市民社会の立場からすると、SDG16には行政の透明性、情報へのアクセス、市民の基本的自由の確保など、他のゴールを達成するために必要不可欠な諸条件が含まれており、SDGs全体の達成のためにも力を注いでいく必要のあるゴールとして捉えています。

SDG16に定められた12ターゲットの進捗をモニターするには、現行の23指標では十分ではないとの考えから、世界110カ国が加盟している政府間機関で、日本も30カ国からなる運営理事会の立場をもっている「民主主義共同体(Community of Democracies:CoD)」では、SDG16の補助指標の作成の作業に着手しています。今回はその議論に参加しているアンセルモ・リー氏と今田CSOネットワーク代表理事からその取り組みの紹介がありました。また、外務省総合外交局人権人道課の中川課長に出席いただき、CoDへの日本政府への関与について説明いただきました。さらに、SDG16への取り組みに関し、日本国内の文脈からみた諸課題について、情報公開クリアリングハウスの三木由希子理事長より提起いただきました。

CSOネットワークでは、今後も関係CSOと連携しながら、SDG16と国内外の市民社会の取り組みをつないでいきたいと考えています。

 

今田克司 一般財団法人CSOネットワーク代表理事 

・CoD(民主主義共同体)について。日本国内ではほとんど知られていないが、110カ国の加盟国、30カ国の運営理事会(日本含む)がある政府間機関。2000年発足時から、市民社会の関心が高い。政府間の協議・交渉のほかに、学術諮問委員会、議会関係者、市民社会の3つの委員会があり、本日のスピーカー、アンセルモ・リー氏はこの市民社会の委員会のメンバーである。

・ポイントは、CoDとSDGsがくっついたこと。SDGsのゴールは1から17まであるが、市民社会(CSO)はその中でも16を非常に大事だと考えている。現在のSDGsの公式な指標だけでは、CSOとして政府の取り組みをモニターするのには不十分。一方CoDは民主主義を世界に広げることが使命であるから、SDGsと関連づけることでその理念や活動がより広く伝わるのではないかと考えた。

・今年2月にニューヨーク、4月にオスロでSDG16補助指標の会合が行われている。日本政府はこのニューヨーク会議を財政面で支援している。4月のオスロ会議には、国際協力機構(JICA)、アンセルモ、そして今田も参加した。補助指標はまだドラフト段階であるが、9月ワシントンでのCoD閣僚級会合で発表するべく作業を進めている。特に議論を深めているターゲットは、16.3(法の支配)、16.5(汚職)、16.6(透明で説明責任のある公共機関)、16.7(公的機関の意思決定)、16.10(基本的自由)など。

 

 

 

発題1SDGsと民主主義共同体(CoD)の補助的指標作成」
アンセルモ・リー氏 アジア民主主義ネットワーク(ADN)事務総長/韓国人権財団事務局長


・CoDでは世界に民主主義を広める活動をしてきたが、SDG16によって新たなチャンスができた。平和、汚職、アカウンタビリティー、市民の参加等は民主主義の伸長のためにも大切。2015年にSDGsができる前から、私はCSOのメンバーとしてCoDがSDGsに対して強いイニシアチブをとっていくべきだと主張していた。ニューヨークやオスロのCoD会合に日本のJICAや外務省が参加していたのを見て嬉しく思った。

・SDGsとその前身MDGsとの大きな違いはゴール16にある。SDG16をしっかり活用することにより、ガバナンス関係の活動ができ、それが貧困削減につながる。NGOは分野を超えて一堂に会する機会はなかなかないが、SDGsは横のつながりが必要で意識を共にすることができるから、横の連携をもっと大切にしたい。

・また横だけでなく、国際的なものから地域へという縦の繋がりも重要。私たちの住んでいる北東アジア地区は難題を抱えている。北朝鮮や中国にとって人権や民主主義についての話題は正面切って話すのは難しい。しかしSDGsを使えば他の課題も交えて話すことができるのではないか。例えばG20(今年はドイツ開催)では日中韓の首脳が集まって話すことができる。G20の中でもSDGsをアジェンダに据えてやっていこうという話もあるから、三ヶ国、また全世界でSDGsに取り組む話が進めばいい。2015年の国連総会で北朝鮮の当時の外務大臣がSDGsを進めて行くと話していたが、そういう意味でもSDGsは大きなチャンスを提供している。

・今はゴール16に限らずSDGs全体的として実施する段階であり、これは国が変わるためのチャレンジである。MDGsは国際協力なので外向きのことを考えていればよかったが、これからは自国のことも考えねばならない。先進国(日本や韓国も含め)は国内の課題と国外の課題をどうやって結びつけるかで苦労している。昨年ニューヨークで行われたハイレベル政治フォーラムでは、韓国やフィリピンや中国が進捗報告をした。日本は今年の7月に自発的国別レビューを示す予定だが、日韓は国的にも近いのだから相互に学びあっていった方がいいだろう。

・2019年というのは非常に重要な年で、SDG10(格差・不平等)と16が、国連HLPF(ハイレベル政治フォーラム)のレビュー対象目標となる。2019年に向けて、CSOがこの指標を自分たちのものにして政府の動きをモニタリングし、2019年にはSDG16に関して政府からも進捗報告を出してもらい、それに対してCSOからも進捗報告を出すなど、活動を加速させていきたい。

中川周 外務省総合外交政策局人権人道課課長

 ・従来から日本は特にアジアに対して法整備支援、ガバナンス支援、選挙改革支援、メディア支援など民主化の支援をしてきた。例えばカンボジアなどに法律の専門家を送り、法制度の再構築をしたり、公務員に汚職をしないような行政研修を行っている。日本政府は2013年からCoDの運営理事会に入っており、民主主義と教育、民主主義と女性のワーキンググループに参加し、またポーランドの事務局にも人的貢献を行なっている。SDG16の自主的な補助的指標作成に対し会合開催費用の拠出や専門家の派遣など、積極的に貢献をしている。

・日本政府は価値観外交を重視している。その観点から、アジアの中では韓国やモンゴルとともに国際社会における民主化、法の支配に貢献していきたい。今後、2030年アジェンダの中の5つのPが連携して達成される必要がある。SDGsのゴール16を含んだ、国内国外両方での達成を目指す。

 

大久保晶光 JICA(独立行政法人国際協力機構)産業開発・公共政策部ガバナンスグループ法・司法チーム課長

・当課は途上国での法支援や民主化制度支援、警察への支援を行なっている。もう一つの課がガバナンスグループ関連で、SDG16はまさにガバナンスであるから、私たちがオスロ会合に参加させていただいた。事前にJICAの中でどんな指標を提案するかを話し合っていたので、それを提案できたのはよかった。

 

 

 

発題2 「SDG16と日本国内の課題」
三木由希子 特定非営利活動法人 情報公開クリアリングハウス理事長


・SDGsに関して、国外と国内の課題を分けて考える傾向があるが、ゴール16に関して国内と国外という分け方は適切ではない。私たちはずっと情報公開について取り組んでおり、その視点から見たSDGs、特にゴール16について話したい。

・1980年に神奈川県知事が県庁の職員に向けて話したこと。「現在は情報社会だが、私たちの生活に必要な的確な情報が本当に手に入れられているか?情報公開を制度化すべき。この制度を、限界をわきまえた上でどう活用していくか。」ここにはSDG16の要素がたくさんに入っている。情報公開は手段であり、「公開」がデフォルトである社会なら行政の変革が起こる。アカウンタビリティを果たす行政組織を作ることが大事。

・ゴール16は法治を念頭に置き、選挙などの手続きとしての民主制以上を視野に入れている。法律は権力機構のつくり方については規定しているが、一旦権力が誕生するとやりたい放題にできてしまうのも実態。だから、いかに権力の運営を健全なものにするか、責任のあるものにするか、より開かれた民主的なものにするかが大事。

・行政や立法が何をしているかを知ることができないと、選挙で選んだ私たちの信頼が低下する。だからどの国であっても、政府や議会や国会が何をしているのか、何をしたのか、何をしようとしているのかをよく知って、市民が良い選択をするためにはどういう状況や環境を用意すればいいかをきちんと議論すべき。

・SDG16の主眼のひとつは、政策決定の民主的なプロセスやアカウンタビリティをどう担保するか。持続可能な社会を目指すなら、まずそのための政策決定をいかに民主的にしていくかということとセットにする必要がある。この点にゴール16の重要性がある。

・すなわちゴール16は他のゴールを達成するための政策決定を妥当なものにするための基盤である。だから国内外の諸課題に対し、日本が何ができるかを考える必要がある。これは、①一般的な基盤。それぞれの課題がどうではなく、情報に関わる法制度などすべての人が使えるルール。②個別分野や課題ごとの基盤。貧困、保健、ジェンダー、経済など、それぞれの分野で開かれた公正な意思決定をするためにどんなプロセスがいいかというのは個別的。この2つの側面で考えられる必要がある。

・Open Governmental Partnership(OGP)について。開かれた政府を作るための国内改革を進めるための国際的なプラットフォームであるOGPを紹介したい日本はまだこの国際枠組みに加盟していない。どうやって開かれた政府を作るのかというアクションプランを作るのが加盟国としての第一条件。SDGsだけではなく、CoD、OGPなど、目指している方向が同じ他の枠組みを組み合わせて、達成に向かっていくのが良いのではないか。

<質疑応答>

Q:CoDは、国連組織とはどうつながっているのか。効果的に進める戦略はあるか。

A:補助指標を国連の枠組みの中に入れていくべきという意見はCoDでもあり、SDGsのモニタリングの時には一緒にモニタリングをしていくというのが理想。

Q:SDG16 の補助指標は、各国の指標として展開していくのか。

A:補助指標・追加指標は国レベルで自発的に採用してもらう。現在国連開発計画(UNDP)が6カ国と連携してCSOとのコンサルテーションの機会を作りながら、SDG16に関して国としての指標を作ろうとするパイロット事業をしている。大事なのは、補助指標を自主的に使おうという動きをどうやって加速させていくか。また、CSOが研究機関等と協力して作っている指標群を、政府に補助的あるいは代替的に使ってもらおうと提案している。公式なデータ収集は特に途上国ではハードルが高い場合も多く、CSOや民間の研究機関が作った指標がSDG16の進捗度チェックの上で使えると思う。公的な統計と合わせながら使ってもらうことも一案。ちなみに、sdg16.orgというサイトは国連や研究機関、CSOで一緒に作ったもの。

Q:この補助指標を使うのは政府の責任なのか、市民社会も含めた責任なのか。

A:政府にこの指標を使ってもらうことが主たる狙い。これによって影響力を持たせる。しかしCSOが自分たちなりに使ってモニタリングをしていこうとするのもあり。

    (了)

 

<配布資料>
セミナー案内・プログラム(PDF)
三木氏プレゼン資料(PDF)
SDG16ターゲット・指標(総務省公開資料)(PDF)
アジア民主主義ネットワーク(ADN)パンフレット(PDF)
アジア開発アライアンス(ADA)パンフレット(PDF)
「G20ハンブルク・サミット議題における市民社会の取り扱いに関する要請書」(PDF)

(文責:CSOネットワーク)

 

 

 

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