「企業と人権」枠組みセミナー(2013/9/6)ご報告

11.19


日時:2013年9月6日(金)14:00~16:30
会場:地球環境パートナーシッププラザ セミナースペース

主催:一般財団法人CSOネットワーク
助成:大竹財団 協力:NNネット

開会挨拶  一般財団法人CSOネットワーク事務局長 黒田かをり

黒田今回はNGO/NPOを対象としており、このセミナーでは「企業と人権」枠組みや指導原則がNPO/NGOにどのように適用できるかを確認していけたらと考えています。
多くのセミナーがおこなわれていますが、NPO/NGO対象のものは少ないのではないかと思い、今回のセミナーの開催に至りました。

登壇者の紹介

サンドラ・アトラー氏:弁護士、「企業と人権」に関する専門家。スウェーデンECPAT(子どもの買春をなくす国際NGO)リーガルアドバイザー。ISO26000 NGOステークホルダー・グループ元議長。
白石 理(おさむ)氏:(一財)アジア・太平洋人権情報センター所長

参加NGOの紹介

(特活)ハンガー・フリー・ワールド 事務局長 渡邉 清孝氏
(特活)オックスファム・ジャパン  事務局長 米良 彰子氏
(特活)ACE 事務局長  白木 朋子氏

このセミナーは、大竹財団の助成とNNネットの協力を受けておこなわれました。

講演 「企業と人権」枠組みをNPO/NGOはどのように活用するのか
サンドラ・アトラー氏

「企業と人権」枠組みセミナー サンドラ・アトラー氏資料(PDF 568KB)

皆様、お招きいただきありがとうございます。
主催者である一般財団法人CSOネットワーク、また多くの皆様にお礼を申し上げます。
私はこのセミナーに参加できることを楽しみにしてきました。

サンドラ氏&通訳熊野氏

サンドラ氏&通訳熊野氏

まず今日は「企業と人権」枠組みについての指導原則とは何なのかということをお話し、今日ここにいる参加者の皆さんや市民社会にとって重要なことは何かということをお話したいと思います。
ふたつ目に指導原則がなぜ市民社会や皆さんのお仕事に対して役立つのか、どうしてそれが可能かを話していきたいと思います。

私は長い間CSOやNPOの世界に身を置いてきました。また逆に政府の側で仕事をしたこともありますし、ここ2年程は企業側でこの指導原則を実施していく仕事に携わってきました。

このセミナーでは皆さんに質問を投げかけることがあると思いますが、そのときは是非賛成、反対など手を挙げて意見をお示し下さい。まず皆さんにお伺いします。今日の参加者の中でNPOや市民団体からの参加者の方は手を上げて下さい。約半分ほどですね。では次に企業、または企業関係の組織からの参加者の方は手を上げて下さい。では学術界、シンクタンク関係者の方は手を上げて下さい。ありがとうございます。今日は沢山の分野からの参加者の方がいるので、色々な角度からお話をしていきたいと思います。
まずは国連のビジネスと人権についての指導原則についてお話していきます。そしてこの指導原則をどう考えていくべきか、そして皆様の仕事の文脈の中でどう考えていくべきなのかという点についても、重要な点に絞ってお話ししていこうと思います。

この国連の指導原則は大多数の方になじみがあるものではないでしょうか。指導原則が出来たのはほんの8年前、コフィー・アナン事務総長が国連の代表者を任命しビジネスと人権という問題を理論的に解決するためにできたものです。2011年国連人権理事会が採択したこの指導原則では、国家、企業は何をすべきかが定義され、そしてこれらが共同で責任を負って、企業の活動により害悪がもたらされることがないようにしようということが提案されました。議論の中で企業が果たすべき具体的な役割や人権を尊重するという企業の役割とは何なのかということが言われます。ここできちんと思い起こしておかなければならないことは、市民社会であれ、企業であれ、研究者やシンクタンクであれ、知っておかなければならない重要な点は、この問題を解決するためには、まず国家が国際的に責務を負い、法を守らなければならないということです。
ただここで企業は国家とは別の独立した責任を負います。国家や政府が人権を促進したり守ったりすることができない、あるいはその意思がない場合でもやはり企業が人権を守らないといけない責任は存在します。

最初にお話ししたいポイントとして、フィランソロピーと言われる活動とCSR、人権の尊重というものの違いについてです。指導原則中で人権を尊重するというのは害または害悪をもたらさない、侵害しないということを意味します。グローバルコンパクトや世界のその他の取り組みの中で言われるのは、人権尊重を支持することです。CSRやコミュニティーの開発、またはコミュニティーでの慈善活動は前の話とは違うことを意味します。

人々の人権を侵害しないことはまず企業としてのベースラインとなる責任です。企業としてあるところで悪い影響を与えることをし、一方で慈善活動等をして相殺するという考えを取ることはできません。ここで重要な点は2つ、人権を尊重することは、まず悪い影響を引きおこす行動をする前にそれを回避すること、そして害悪をもたらし人権を侵害する事態が起こったらそれに対処し、その活動をやめるということです。そして被害者を助成することが重要です。企業であれ、市民団体の方であれ、重要な概念はインパクト―影響ということです。企業として理解すべきこと、また責任を負うべきことは、実際企業活動がどのような影響をもたらしているのか、そして人々の人権にどのような影響を与えるのかを理解しなければなりません。
私たちはどの影響に焦点をあてるかを選ぶことはできません。例えばある時は水の汚染について、またある時は児童労働に、そしてまた別の時には別の点に注目するというやり方はできません。そうではなくあなたの活動自体が全体にもたらす深刻さ、深刻度を考えなければなりません。企業活動が人々にもたらす最も深刻なものは何なのかと言うことをまず考えなければなりません。企業活動がもたらす害悪の深刻さを考える場合、その活動が人としての完全性を損なうものなのかどうか、例えばちょっと指を切ってしまった程度のものなのか、それとも生命に関わるようなものなのか、あるいは、それが一人なのか、100人なのか、あるいは侵害が起こった後に元の状態に復旧できるのか否か、と言うことを考えていきます。

全ての人権に関連することも話しておきたいと思います。この日本滞在において既に何度も、日本の文化、日本という文脈の中での人権というのは世界の他の地域で言われる人権と必ずしも一緒ではない、と言うことを言われました。これが意味するところを話したいと思います。もしかしたら彼らが間違っているのかもしれませんし、後で皆さんの意見をお聞きしながらお話したと思います。

人権というのは、少なくとも国連が築いてきた人権というものが意味するところは、人が生まれながらに持っている権利であるということです。
裕福な家庭に生まれても、王家に名を持つ家に生まれても、正式な国籍を持たない貧しい移民の家庭に生まれたとしても、それらに関わりなく、人であることで享受できるものなのです。人間は生まれながらに特定の物事に対する権利を持っているのです。その権利というのは、生きる権利、誰からも拷問されない権利、他人から安全性を侵害されない権利です。自分が思ったように考え、信じ、発言する権利や教育への権利、健康に対する権利、職場で公平に扱われる権利もあります。
また十分な生活水準に対する権利、住居に対する権利、仕事を選び、賃金を受け取る権利、子どもとして児童労働から守られる権利というのもあります。
以上が指導原則に書かれている権利の例です。これはNGOや市民社会から見ると興味深いものであると思います。

指導原則によれば、すべての企業がこれらの原則を実際に守ると表明する・しない、信じる・信じないに関わらず、企業が必ず守らなければならないものとされています。それぞれの地域でどのように解釈されていようと、人権ということであれば、必ず全ての企業が守らなければならないのです。
開発の問題である、と言われるとき、それらの問題の多くは国際的な観点からいうと、人権の問題ということが言えます。市民社会のメリットと、国際的な人権という考え方をきちんと理解することで、企業に対して私たちが関わっている問題が、企業と人権に関する問題でもあるのだと共通言語を使って対話できることが可能になります。

特に興味深いのは、指導原則の中で、企業は影響を受けるステークホルダーの話に耳を傾けなければない、と具体的に規定している点です。現に人権侵害が行われ、最も人権侵害を受けているグループなどに対して働きかけている組織は、企業活動の結果どのような影響を受けているか対話することができるのです。
指導原則の中で強調されているもう1つのものとして、国家も企業も双方が人権に対して影響を持ち、双方が被害者に対し具体的な救済手段をももたなければいけないとなっていることです。また、企業も国家もステークホルダーに対して彼らの視点や彼らの要求事項から、何が起きているのか、なぜこのようなことが起こってしまったのかを聴くことで、原因を追究することができます。そしてここでも市民社会が果たせる役割は大きいと言えます。詳細は割愛しますが、資料の中には実際の指導原則の文書の中で、国家や企業に求められるプロセスが書かれています。具体的に何をどうしなければならないのか、何が企業に求められているかなどが明確になっています。

では実際に実務レベルとしてはどうなのでしょうか。市民社会や皆さんにとってのメリットとは何でしょう?それは皆さんが関与している問題、課題について企業と人権という観点から、共通の言語を持って、それを共通のプラットフォームとして使い、企業に課題に関与させ、権利を要求することができるということです。特に人権デューデリジェンスに着目することをお勧めします。この(デューデリジェンスの)プロセスでは企業は負の影響をきちんと評価し、それに対応しなければいけません。

私からのメッセージとしてはこの指導原則というのは、市民社会にとって具体的な問題課題に取り組まれている方々にとって非常に大きなチャンスをもたらすと言うことです。ステークホルダーとはいうのは‘利害を持っている人たち’を意味します。問題解決のために市民社会は国家、企業、社会に対して人権について説明する手助けをすることができるのです。なぜならば皆さんこそが現場を通して人権とは何かと言うことが分かっている方々だからです。皆さんが取り組まれている問題課題、また働きかけ方もそれぞれ違っているでしょう。

皆さんの中には色々な情報を収集したり、啓蒙活動をしたり、アドボカシーに取り組まれたり、国や企業に対してロビー活動やキャンペーンをしている団体もあると思います。市民社会の中でもさまざまな役割が果たされています。

指導原則のどんな問題にどのように当てはめ生かすかの具体的な事例を挙げていけていきたいと思います。
私は以前エクパット(ECPAT)という組織で働いていました。児童買春、児童ポルノ、児童の人身売買等をやめさせるために活動している組織です。

まず初めに企業の活動がどのように子どもたちに影響を与え、また子どもたちを傷つけているか、それらの真の問題、課題は何かを分析していこうかと思います。ここに掲げている4つの業界の中から実際2つに働きかけを行ったのですが、その中の一つが輸送業界でした。バルト海の輸送業界ではフェリーを使って人身売買の被害者を運ぶということが行われていました。もう一つよくある例としては、スウェーデンの人が東南アジアや他の国々に出かけて、滞在中子どもを搾取、つまり買春するということが多く行われていました。ですので、まずどのようにして企業が子どもに対する人権に関与していたのかを分析する必要があります。企業が必ずしもその事態を引き起こした原因ではありませんが、少なくとも関与していたということは言えます。

二つ目に誰がどのような問題に対して責任を負っているか、そして誰が、実際に何が出来るのかを確定する必要があります。例えば国家がやるべきこととしては法制度、方針を立てるという観点からやるべきことをやっているのか、また企業もやるべきことをやっているのか、問題に実際にどう関わっているのかということを見ていく必要があります。そして国家と企業に対して別々にアプローチし、関わり、それぞれに私たちがこれらの問題をどう捉えているかを伝えていかなければなりません。

例えば、性的な搾取から子どもを守るための選択議定書を締結していないことを政府に伝え働きかけたりします。それから企業に対しては人身売買を防止するために、輸送業界に携わる人に教育し、人身売買の被害者が見分けられるようにすることで人身売買防止に協力するべきであると伝えることができます。そして観光セクターについても、企業に働きかけて、スタッフに対して情報を提供し、警察と協力して、他の国で子どもを虐待することは合法的ではないと伝えていきます。

このようにして各セクターに問題解決に向かって関与してもらうために働きかけていきます。政府、企業両方の当事者に働きかけ、対話をしていきます。しかし対話が上手くいかなければ、他の団体やパートナーと共同で活動し、何度も対話に挑戦します。それでもうまくいかず、抵抗にあった時には、他のプレッシャーをかけていきます。例えばメディアに働きかけ、その企業に公的に公約を求めるということをしていきます。しかし最後の手段に出るのは何度も対話を試みてうまくいかない時だけです。
もちろん政府や国への働きかけの方法にマニュアルはありませんし、この方法がいいと言っているわけではありません。しかしある例として、指導原則と言うアプローチを使い、より効果的に対話に関与してもらったり、あるいはアドボカシーに使ったり、さらに良い対話を目指すものとして活用したお話をしました。

今日お話ししたことで、色々なことを、市民社会の代表者である皆さんに考えてもらい、挑戦していってもらえればと思います。このスライドの最後に書かれている質問ですが、まずご自身に問いかけてほしいと思います。まずあなたは対話していこうとする企業について理解していますか?ご自身が関わっている分野について企業とどのように話をしていけばよいのか、企業の具体的活動に関して理解しているでしょうか?

ここで指導原則は共通の言語というプラットフォームを提供してくれるのです。企業は市民活動を理解できませんし、市民社会は企業活動のエキスパートにはなれません。しかしお互いがお互いの分野で専門家であることを認識すべきです。市民社会の代表者である皆さんは、現場の中で実際、人権侵害が起こったら、それがどのような形をとるのかについて専門家であるということです。

わたしが世界中の多くの企業と話した経験から、大半の企業は実は明確で、批評的な考え方を大変歓迎します。なぜなら、企業がどのように人々に影響を与えるか、彼らが持ってない専門的な視点を提供するからです。この場面でのキーワードは、企業と関わる際には建設的であること。お互いの世界が違うことを認識し、それぞれの活動を尊重することが必要です。実際企業には批評的で建設的な市民社会のコメントは受け入れられ、歓迎されるものです。市民社会からの視点やコメントが、企業活動が現場で実際どのような負の影響を与えているかが分かり、またそれが分かってもらえなくても、少なくともその結果として企業側としてはコンサルティング代も浮くので、そのような観点からも歓迎されるのです。

重要なのは建設的であれということです。

最後に情報源の紹介をいたします。資料の最後にありますが、この中のSOMO(The Center for Research on Multinational Corporations)という組織のサイトの情報は有用です。英語なのですが、どのようにして市民社会が指導原則を使い活用していくか、また指導原則を取り入れている企業をフォローしていけるのかが書かれています。ご参照下さい。

「企業と人権」枠組みの解説とコメント
(一財)アジア・太平洋人権情報センター所長 白石理氏

サンドラ氏&白石氏

サンドラ氏&白石氏

今日の話で日本の人権の考え方と国際基準とはずれているのではないかという話がありました。日本では差別ということに人権が結びつきます。それによって人権は一部の人たちだけと結びついているということになります。

開発に関わるNGOがどのように人権を捉えているか。人間の活動で人権に関わらないことはありません。開発においてもそうです。例えば飲料水のことなどもそうです。

人権は大変大切なものです。しかし企業にとっては胡散臭いものであり、コストがかかるものとして捉えられていることがあります。儲かる話ならしてもいいけれど、ということになります。

企業と人権に関する指導原則を使うにあたって、企業も市民社会も人権についてしっかりと理解しているかどうかを考える必要があります。

人権問題に取り組むと評判が上がるなど功利的な説明をする人がいます。ただそれで済むものではありません。企業も社会の構成員として、社会の期待に応えることを期待されています。人権、消費者保護や環境問題で社会の期待に背くことをすれば社会的制裁を受けることがあります。指導原則は企業に対する社会の期待を反映したものと言えます。それは、国内的に、また国際的に活動する企業に対しても、企業の規模や形態、そして業種に関わりなく適用されるようにできているのです。

人権を尊重する企業の責任を果たす時には、社会的に弱いグループの人々の立場も忘れてはいけません。指導原則は企業に「社会的弱者」に配慮した事業活動の展開を求めます。

企業は人権デューデリジェンスの技術的な側面、手続き的な側面を考えがちです。しかし人権デューディリジェンスが人権尊重を確かなものとするためであるという本来の目的を忘れてはなりません。

人権は一人ひとりが、人としての誇りを持ち、幸せに生きるためにはなくてはならないものであるとの観点が必要です。

NPO/NGOより取り組み事例とコメント

進行:一般財団法人CSOネットワーク代表理事 今田克司

第二部は「NGO・NPOはこれをどう活用していくか」ですので、指導原則を一通り学んだうえで 、市民として、NGO・NPOとして指導原則をどう活用していくかという観点から議論を深めていけたらと思います。

これから日本のNGOの代表者の方にそれぞれプレゼンテーションをしてもらいますが、それに加えて、サンドラさん からの問いかけである、1)NGOとして自分たちとエンゲージする相手としての企業を理解しているか、2)現場を知っている専門家として現場で人権侵害がどのようにおこっているのか知っているか、知っているとしたら指導原則をどのように使っているか、3)その際の関与している相手(企業)に対して何かしらのアプローチをしているのか、についての質問にもあわせて答えてもらおうと思います。

サンドラさんがおっしゃったことで、とても印象的だったのは、こういった指導原則は企業との共通の言語になりうるのだということ、それを持って企業との対話の場を作ることができ、問題に一緒に対処できるということです。特にNGOが企業や国家を助けることができる、つまりどうすれば彼らが正しく人権を保護することができるか、理解を促すことができるのだということです。これらは今回のセミナーのテーマの根幹に関わることだと思いますので、この分野について特に議論を深めていきたいと思います。

(特活)ハンガーフリーワールド(以下HFW)事務局長 渡邉清孝氏

本日招待された理由の一つは、弊団体が「企業と人権」枠組みをどのように活用しているかということだと思うのですが、よくよく考えてみるとうちは使っていません。
なんでうちは使ってないのかということを素直に考えてみました。
「企業と人権」枠組みの内容は知っているのですが、その有効性を考えるよりも、なぜ使ってないのかというその背景、原因を理解しないと普及につながらないのではないかと考え、現状を資料に書いてみました。なんらかのヒントになればと考えています。

ではまずHFWが企業、人権とどういう関わりを持ってきたかをご説明したいと思います。企業と人権枠組み、 NGOの課題と問題について考えます。そしてその普及のために、どういったことが必要かを考察していこうと思います。

まずHFWと人権との関わりについて。足早になりますがご説明していきます。
まず大きいものとして、食料への権利との関わりが挙げられます。FIAN(Food First Information and Action Net Work 50か国以上で活動する国際人権団体)から職員を招き勉強会を行い、人権について学びました。
それから、食糧への権利として実際何をやっているかというと、色々な場面で各国住民の方々に色々な形で、啓蒙啓発しています。(詳細は資料に)

それからアドボカシーについてですが、多くの地域、行政区の人達に、国際会議等を通じて、食糧への権利が政策に反映されるようなアドボカシー活動をしています。(詳細は資料に)

次にHFWと企業との関わりです。これが唯一やっている企業と人権の関わりですが、詳細は後程ACEの白木氏からご説明があると思います。
一つやっているのがCSR監査です。ACEさんに頼んでやってもらっています。
ことの発端はLeeジャパンがウガンダでとれたオーガニックコットンを使ってジーンズを作り、その収益の一部をHFWに寄付したいとの申し出がありました。ただご存じのように
コットンというのは児童労働の温床になりがちな産業です。受けた寄付の一部が児童労働では話にならないということで、児童労働がないことを担保するためにCSR監査をしてもらうよう先方に依頼しました。ただし色々とハードルが高かったので、注文を付けると寄付がもらえなくなるかなという懸念はあったのですが、監査のお願いをしました。そして監査、児童労働などの分野に長けてらっしゃるACEさんに相談して、Leeジャパンさんからも承諾を得て、監査が実施されました。

ここでポイントとしては、寄付がもらえないと思っていてもやはりきちんと人権を尊重するということで、あえてリスクを取るというのもNGOの存在意義でしょうということです。

HFWと企業との関わりについての続きですが、今日ここにJANICの担当者さんもいらしてますが、企業とNGO連携推進ネットワークへの協力をしました。6年前に私自身も、オックスファムの米良氏も立ち上げ人の一人として関わり、プラットフォームを作りました。目標としてはMDGsの達成に寄与するCSRの推進を目的としてのネットワーク作りです。人権CSR,ISO26000等々色々なトレンドについて企業とNGOがともに学び、協働できることを今、探っています。

三つめとしては「ポスト2015開発枠組み」にむけ企業セクターへ向けの提言活動を始めようと模索しています。ただグローバルコンパクトジャパンさんがなかなかこういったことに関心がないので今試行錯誤中です。

次に「企業と人権」枠組み導入のNGOの問題と課題ですが、今までのところでいうと、HFWは企業とか人権等に関して理解はしている、つまり現場でどういう企業活動がどのような影響を及ぼすか、そしてどのようにしてそれを回避するか、そのための方法やツール等枠組みをある程度理解している。かつISO26000もNGOとしてやっていると思います。もちろん倫理観や、不正に対する問題意識も高いほうではないかと思います。ではなんで「企業と人権」枠組みをやってないのかということになりますが、まずこれを理解することが、今回枠組みを普及するきっかけになるのかなと思っています。

ではなぜHFWが企業向けのアドボカシーをしてないのかというと、重要視してないのではなく、優先順位になかなかあがりにくいからだと思います。ではその原因と背景は何なのかと考えるとまずは、活動地域に企業が存在しないことです。もちろん都市部に行けばあるのですが、ウガンダ、ベナン、ブルキナファソ等々にはあまりないのです。今のところ主にG8、TICADや地方行政など政府向けアドボカシーに注力しています。もちろん企業と政府の関連性は認識しています。

では他のNGOさんは企業向けのアドボカシーを行ってないのかというと、

1)活動地域で企業がないこと、農村開発で農村に集中しているということで、企業が存在するケースがあまりないのかなと思います。あと活動地域を絞った活動形態がある。それで企業は‘ドナー様’という立場で、井戸建設ではお金がもらえるのですが、アドボカシーではお金にならないのでやらないという現状があるからです。これは大手の外資系NGOでもそうなのですね。大手のNGOですらアドボカシー担当のスタッフを置いていなかったりするのです。NGO担当者の中でも企業担当者、アドボカシー担当者の連携がとれてないのです。これは企業内でも同じことが言えます。あとまず、‘つまらない’、と言うことです。アドボカシーはなんだか満足感や達成感を感じにくいのです。やればすごく楽しいのかもしれませんが…。

ということでポイントは自組織のイシューに直結しない課題をどう自分ごとにするか、自組織のイシューに直結するが地域が該当しない場合、どう自分ごとにするか、都市部で活動していればなんとかコミットできるのか、そして組織内での横串体制をどう構築していくかということです。

では最後に導入への考察をしていきたいと思います。

まずいくら枠組みが素晴らしいものでも、現場のニーズに合致しなければ導入は難しいと思います。住民の自立支援と同じくらい丁寧な分析と長期的な対応が必要と思います。もちろん民間投資がODAに比べて非常に量が多く、色々な企業の途上国内での、例えば租税回避とか言われ、また問題もありますが、取り組まなければならないことがあるのは十分理解しています。その上で本当に必要であれば、人は喜んで使うと思います。(枠組み自体が有効ではないということではない。)

次の考察として、もしNGOが枠組みの必要性を認識し、枠組みを活用した場合、それをどう効果的に使えるかということです。現状としては多分、政府・企業側のNGOに対する苦手意識、抵抗意識があると思います。先ほどアトラ―氏がこの枠組みは招待状だとおっしゃいました。だけど企業からするとこの招待状はNGOから出されるとひょっとすると果し状になる場合があるということです。ラブレターだったらいいのですが、挑戦状、果し状になり、嫌悪感を持たれている現状があると思います。

今後の課題としては、1)交渉力強化 2)チームビルディング能力の強化 が挙げられると思います。日本電産の社長、永守重信氏が言った言葉で、「君は死んだ野良猫を売れるか」というのがあります。要は血統書もない、死んだ野良猫で可愛がる価値もない、無い無いづくしのものをどう相手に売れるか、それは商品を売る前に自分を売れと、自分を買ってくれなかったから、その商品も売れないということです。まずは人とちゃんと渡り合える存在にならなければならないということです。その為にこの二つの課題をクリアしていかなければならないと思います。

今田:

日本のNGOは伝統的にアドボカシーとサービス提供が対極にあってなかなか結びつかない現状があります。それがために対企業の付き合い方は、‘ドナー様’的なものになるか、アドボカシーの対象になるかのどちらかひとつになってしまう傾向があります。それが企業からしてみると招待状が挑戦状になってしまっている現状については、またのちほどサンドラさんからコメントをいただこうと思います。あと、時代は変わりつつあって、今のキーワードはエンゲージメントです。企業エンゲージメントのひとつとしてアドボカシーがあるとサンドラさんから話がありました。これをどのように広げていくかもNGOの課題ではないかと思います。

(特活)オックスファム・ジャパン 事務局長 米良彰子氏

オックスファムと言うのは今世界17か国に拠点を置きながら90カ国以上で活動している団体です。権利ベースアプローチをもとに活動しています。人が尊厳を持って生きていくために、貧困をなくすためにはどうすればいいかと、いうことで様々な活動を展開しています。どの国でもどのオックスファムでもやっているのが緊急人道支援、最近やっと日本のメディアでも取り上げられるようになったシリアでも活動しています。それ以外では長期開発支援ということで、貧困地域、また地域を問わず活動しています。三つ目の柱というのがアドボカシー、政策提言で、各国の仲間と連携して行っています。この政策提言が効果的に行われていると我々は思いたいのですが、それはやはり現場での色々な情報収集など、そういった経験を基にできているからこそだと思っています。

今日は連合体としてのオックスファム、またオックスファム・ジャパンとして日本でどのような活動がなされているかをお話ししたと思います。

オックスファム全体として企業との関わりというのはどういうものか。先ほどサンドラさんがおっしゃいました、昨今人権という言葉は、日本の企業との会話中に大変よく出てくるようになってきたということはチャンスだと思っています。

OECD多国籍企業ガイドライン、ISO26000、分野がかなり絞られますがドッド・フランク法(米)、世界食糧安全保障委員会「ボランタリーガイドライン」、ラギー・フレームワーク、など人権という言葉が、企業にとって意識せざるを得ないものになり、取り組まないとまずいのではないかと思われている担当者の方も多いのではないかと思います。そのような流れの中で私もお話をさせて頂く機会が増えてきました。

一方で今日のようなNGO/NPOのスタッフ対象の勉強会や情報共有の場は意外と少ないです。共通の言語を話すためにはまず何が必要かというと、我々自身も(CSO)もかなり宿題をやっておかなければならないと感じています。企業の方と対等に対話ができるのか、それを考えるとまだまだ我々は遅れをとっている所は多いと思っています。開発NGO 、国際協力、開発に携わっている団体、人間として、人権という言葉を使うか、使わないかは別として、絶対関わりあっている、人権は切っても切り離せないものでると考えています。逆にとっつきにくいものとか、難しいなと思われるよりは対話のチャンスだと思っています。

オックスファム全体としてもこれは対話のチャンス以上に、企業、特に多国籍企業が各国で及ぼす影響は大きいことから、そういった企業活動が変わることによって貧困削減に大きく寄与して頂けるのではないかと感じています。

人権というのは企業の社会的責任であるということで、我々は不定期で提言書を出しています。その中で一つ、幸い色々なところで取り上げられているのが、ポバティフットプリント(Poverty Footprint)です。これは、企業活動がどういった社会的・経済的影響を及ぼすかというのを分かりやすく見ていくものです。サステナビリティーを企業のコアに盛り込んでいきましょう、と言うことを提言しています。

ここ最近では「Business and Human Rights」、つまり「企業と人権」と題し今年6月に出したものが、今日まさにサンドラさんが言った指導原則をオックスファムはどう捉えているのかを簡単にまとめたものになっています。実際我々が現場で見た人権侵害であったり、事例であったりもいくつか載せてあります。人権侵害は先進国(アメリカのたばこ産業などの事例など)、途上国関わらずおこなわれていることがここから分かると思います。日本でも微力ながらこういった活動を行っています。企業担当の者はおりませんが、少ないスタッフで業務分担しながら活動しています。最近ではフィリピンで栽培されているバナナのうちニュージーランドへ輸出されていたDOLE社のバナナにエシカル・チョイスというシールが張られていたのですが、これはフィリピンのパートナー団体と調査した結果、エシカル・バナナというシールを全てに貼って輸出するにはちょっと違うのではないかということが色々な場面で出てきました。まずは労働環境ですね。それから労働者の雇用形態などがきっちり守られていないという調査報告をまとめてドール社に話しに行きました。実は皆さんご存知ないかもしれませんが、このドールという商標は日本の商社が名前を買い取ったのです。ですので、日本のオックスファムがお話に行くことになり、こんな小さなNGOが日本の大商社のドアを叩くことになったのです。

やはり何度かお話に出ましたように、NGOが企業に対して話がある、それがしかもオックスファムというと企業側もかなり構えられると思うのですが、幸い担当者の方と面識があったということで、まずは状況説明させて下さいと。本来はこういった報告書がいきなり届いて、2~3週間の猶予があり、もしお返事がなければ一般公開、そしてメディアにも送りますよ、という手法も色々な国でと取られているのですが、やはり我々はそうしたくないということでお話させて頂きました。まず、第一ステップとして今、フィリピンからニュージーランドに輸出されているバナナのステッカーは取るということに至りました。そして第二ステップとしては調査報告書の内容を確認調査していくということで、今ゆっくりプロセスが進んでいます。

オックスファムのアドボカシーというのは、現場に根付いた、そしてパートナー団体の力なくしてはできない活動です。日本でもどんどん提言をしていきたいところですが、まだまだ体力不足です。しかし海外のオックスファムと連携を取りながら、今がまさにチャンスと思って、人権について提言していければと考えています。

今田:

非常に良い事例をあげていただきました。どう原則を使うかなかなかイメージが湧きにくいのですが、調査内容をいきなり公開するのではないという方法のエンゲージメントの例をあげていただきました。エンゲージメントするためにはサンドラさんがおっしゃったように、両者が専門性を持っている必要があり、またそこが宿題であるという話がありました。やはり立場の違うものとして、相手がもってない何かをもっているということを相手にしっかり伝えていく必要があります。ご紹介した指導原則に限らず、今、人権に関して国際的なスタンダードを貪欲に取り入れて活用した上で、企業に働きかけていくことも必要になっているのだと思います。またサンドラさんが最後に紹介したSOMOがインドとアルゼンチンの団体と共著で指導原則をどうやって使ったらよいかについて書いたものを出しています。これはウェブサイトからダウンロードできます。この資料をみると、いかに指導原則を使い、どう企業に質問したらよいか、どういう指標を提示したらよいか、どうやって企業と連携していけるかなどが具体的にわかります。

(特活)ACE 事務局長 白木朋子氏

今日のテーマはNGO・NPOは「企業と人権」枠組みをどう使うかですが、私たちも十分に使っていると言えるほどではありませんが、その重要性を認識しています。今後この枠組みを使っていけるチャンスだということで、少しずつ自分たちの活動と関連付け始めているところです。私たちは児童労働というまさに人権問題について取り組んでいますから、今まで見てきた結果、枠組みに基づいて活動しているかもしれないと認識しています。私たちが企業と一緒に取り組んでいるカカオとコットンの事例について今日、お話したいと思います。

まず私たちの団体についてお話させて頂きます。ACEとはAction against Child Exploitation,子どもの搾取に反対して活動している団体です。人権の中でも最も弱い立場にいる子どもたちの権利を守るということを使命に掲げて活動しています。活動の柱は「日本を動かす」、「現地を動かす」のふたつで、児童労働の撤廃と予防に取り組むため、直接子どもたちを保護し、教育を支援する国際協力の活動をインドとガーナで実施しています。日本では、現地の活動や全体的な活動を支えるファンドレイズと言う意味合いも含め、ソーシャルビジネス事業を行うほか、児童労働という問題を根本的に生まないためにも、児童労働という問題にある意味加担しているビジネス・企業、または政府を変えていく活動や、消費する立場に関わっている市民に対する啓発活動などを、行っています。企業との関わりにおいては、日本でビジネスの中でどのような変化をもたらすことができるか、と言うことがテーマになっています。

ご存知の方も多いと思うのですが、児童労働は国際条約で明確に禁止されています。なぜ「児童労働はいけないのですか?」という基本的な質問をされることがあるのですが、これは疑問を持つまでもなく、法律でも禁止されていますし、国際条約でも禁止されています。ILOの中核的労働基準にも位置づけられています。あってはならないけれども、世の中にはびこっている問題、これが人権侵害なのです。

これが実際カカオの生産地で働いている子ども供の写真です。カカオは今、西アフリカが中心 の生産地であり、日本が輸入しているカカオの8割がガーナから来ています。実際に子どもたちを児童労働から守って教育を支援する活動を行っています。

ガーナ国内で何らかの形でカカオ生産に関わっている子どもは100万人いるとする報告書もあります。

児童労働はそもそも数を把握するのが難しいのですが、これは働いているということだけでなく、先ほどのサンドラさんの話にもあったように、子どもたちが健康に生きる権利、教育を受ける権利、人身売買されている子どもたちは親と暮らす権利を奪われている、けがや病気をしても医療を受ける権利を侵害されている、虐待暴力から保護される権利を奪われている、まさに児童労働というのは複合的に権利を侵害されている状態であると言えます。

インドのコットン畑の女の子たちの例なのですが、インドは特に女性差別が根深く、特に女子への児童労働がはびこっています。10、11歳くらい、小学校高学年になるともう結婚するという年になるので、自分の結婚資金を稼ぐためにも働いたり、自分のお姉さんが結婚するために借りた借金を返すために働かされたりしています。またそもそも雇用者側が、安価な労働力を求めるといったこともあります。

カカオとコットンは一例に過ぎません。日本が色々と輸入している商品の原料供給地を辿ると、児童労働に行き当たることもあります。児童労働は私たちの消費活動と直結した問題なのです。世界の児童労働者が2億1500万人いると言われていますが、そのうち約6割が農業分野に集中しています。コルタン、カカオ、コットン、たばこなどです。

児童労働は貧困が原因であるといわれ、貧困がなくならないと児童労働はなくならないと言われています。しかしこれは需要と供給で成り立っている問題で、現地の問題ばかりが注目されがちなのですが、実はビジネスの側の要因も大変大きいのです。裏を返すと、子どもが働いている状態というのは、大人がちゃんと働いてない状況の裏返しと言えます。ですので、両方を同時に変えていかない限りは、児童労働を根本的になくせないと思っていて、企業側、消費者側から変えていこうと活動しています。企業を巻き込んで行っている活動の実例として、カカオ農家のレベルで起こっている児童労働の問題に対し、チョコレートのサプライチェーンに関わっている人たち全員を巻き込んで解決していこうと試みています。

チョコレートでは「しあわせのチョコレート」プロジェクト、コットンでは「コットンのやさしい気持ち」プロジェクトなど、産業に対象を絞って実施しているプロジェクトがあります。カカオの事例は森永製菓と共同で行っている「1チョコ for 1スマイル」です。WEBサイトがありますので是非ご覧ください。このプロジェクトは初め、チャリティーとして始まったものです。キャンペーン月間に対象商品を1箱買うと、売上から1円が寄付として積み立てられて、プラン・ジャパンさんとACEに寄付され、カカオの国の子どもたちを支援する活動に活用されるというものですが、今年画期的なことがありました。私たちが活動している支援地域のカカオを原料としたチョコレートが発売されたのです。チャリティーの取り組みとして支援したプログラムで、カカオ農家を育成し、その農家が生産したカカオをチョコレートの原料に使用するという取り組みです。チャリティーとして始まった取り組みが、ビジネスの本質に関わる原料の調達方法を変えるところに徐々にシフトしてきました。

企業にとっては、サプライチェーンを全部調べて、どこに問題があって、対処するという、そもそもの人権デューディリジェンスを実行するのは大変難しいものであると思うのですが、それができないにせよ、児童労働の問題があるということを認識してもらい、売り上げの一部から寄付をすることで人権侵害がおこらないような措置をとって頂く、まずはそれが最初にできることだろうと思います。そして、その活動を続けた結果として、調達の部分、全体の一部ですが、原料も換えて、もっと根本的にビジネスとなるところを変えていこうというところに徐々にシフトしてきています。元々これは私たちがこうなったらいいなと思ってやってきたことなのですが、NGOと企業が双方向的に結びつくことで、人権問題の回避、予防にも繋がりつつあるということを実感しています。

もう一つの取り組みが、先ほど渡邉氏が紹介されたオーガニックコットンの事例です。もともとリー・ジャパンとHFWが、ジーンズの売上の一部で井戸を建設するというチャリティープログラムとしてやっていたものですが、そこで使われている原料、ウガンダ産のオーガニックコットンが児童労働に関与してないかをチェックするお手伝いをさせて頂くことになりました。Leeの担当者やサプライヤー関係者の方々に一緒に同行してもらい、現地に視察に向かいました。LeeのHPを見るとトップページに「Born in Uganda」のロゴがあるので、そこをクリックして頂くと、今ご覧いただいているページに飛びます。ここにウガンダで実施したCSRレビューの内容が載っています。2010年12月に実際に畑に行って農家の人に話を聞いたり、工場に行ったりしました。工場に行くと、綿埃がする作業なのに労働者の方がマスクをしておらず、そのことなどを指摘させて頂きました。一緒に現地の工場の責任者の方と話をして改善事項について話し合うなどしました。このプログラムの対象となっているジーンズは、基本的に原料がウガンダから日本に輸入されていて、その先は全部日本国内で作るという生産体制なので、日本国内のサプライヤーも一緒に見に行ったりしています。また次のステップとして、ウガンダのオーガニックコットンプロジェクトに関わるCSR調達基本文書というのを作成し、同じ原則のもとビジネスをしていくことについて、リー・ジャパン、そしてサプライヤー側の合意を取り付けることを行いました。

サンドラさんの話で印象的だった言葉があるので、最後にコメントしたいと思います。人権なり、ガイディングプリンシプルが共通言語になり得るという話だったのですが、果たして共通言語になっているのだろうかということです。それは決して、企業が人権を分かってないと言うことではなく、NGOの側にとっても人権が自分たちの言葉になっていないのではないか思っています。ここが今の日本の現状であり、スタート地点だと私自身認識しています。ただ、人権がまだ共通言語にはなっていないと思う反面、企業もNGOも「目指している社会」という意味では同じです。「持続可能な社会」というのは共通言語として共有されていると思いますし、人権が守られている社会というのは持続可能な社会の一部だと思います。そういった観点からは目指すものは同じという姿勢で取り組んでいくことはできると思っています。企業と一緒に働く中でとても良かったと思うことが沢山ありました。セクターが違うのに、同じことを思っている人がいると気づけたことが大変嬉しかったです。企業もNGOもお互いに警戒しているというのは確かにあると思います。一度話してみると、実は求めているものは同じだったと思えてくるのは、いかに最初に対話の場を持てるか、初めの一歩を踏み出せるかということがカギなのではないかと思います。

全体討議・Q&A

サンドラ氏の同僚、ロジャー・ブラニギン氏の紹介:

グローバル・コミュニティー・プラクティスのエグゼクティブ・ディレクターを務めています。

サンドラ氏:

子どもの権利に関する様々な批判についてどう考えるべきか、ということでしたが、まとめて言うと、人権は国家によって国家のために書かれたものであるということです。国家は法的に人権を促進、保障する義務があります。過去10年で子どもの権利をめぐって様々な文書やイニシアティブなど法的拘束力のないものが誕生しました。こういった一連の文書には、通常は国家に適応される原則が、どのように企業にも適用されうるのかが書かれています。ユニセフとセーブザチルドレンのグローバルコンパクトはもともと国際的規範であったものをビジネスに当てはめたものです。企業であれ、CSOであれ、まず理解すべきことは、どのようなところに企業活動の影響があるのかということと、最低限のベースラインとして、人や環境を破壊しないということを理解しないといけません。そうすることで破壊が起きうるリスクのあるところはどこかが見えてきます。例えば児童労働がないということ、子どもが搾取されていないということを担保することはよく理解されるべき問題だと思います。子どもが住んでいるコミュニティーに対しても、そこに対する影響がないということを確実にすることも大切なことです。まず負の影響を潜在的に持っているところ、負の影響を与えうるところはどこなのかを見て、チャリティーのプログラムを考えていくことが必要だと思います。もちろん負の影響を避けることと、チャリティーのようなプロジェクトを同時にやっても構わないのですが、少なくともまず初めに自分たちがどういうことをやっているのか、どこに働きかけているのかはっきり認識することが必要です。

白木氏:

子どもの権利条約、それに付随する選択議定書、ILO条約がすべての基本となります。それ以外の文書は、企業と子どもの権利の問題を解説し、指摘するものといえます。基本的な人権が守られなければならないのは子どももおとなも同じですが、なぜ特別に子どもの権利を保護しなければいけないのかというと、子どもはおとなと比べて未熟な存在であり、より危険なものから守られなければいけないからです。なので、子どもの権利を特別に守るために作られたのが、子どもの権利条約です。この条約で、子どもは18歳未満のものと定義されていますが、18歳未満には参政権が与えられていないので、自分たちの意見を社会に反映するすべを子どもは持っていません。それが子どもという存在です。子どもの権利を守る義務を負っているのは親や自治体などで、そこに企業も含まれることを、子どもの権利を守るためには考えなければいけない要素だと思います。

サンドラ氏:

セーブザチルドレンからの質問に答えたいと思います。餌(支援)をくれる人の手をかむというジレンマは他の組織にもあると思います。まったくこういうことを考えない組織もあります。スポンサーからの批判を用件とする組織もある。私自身はCSOであれば企業とパートナーシップを組むのであれば高い水準のものを目指すべきであると思います。とは言っても、財政的な事情などもあって難しいことであると認識しています。

ドナーとアドボカシーの両立で悩んでいる団体もあり、実際私たちもそのバランスが難しいと思っています。アドボカシー担当としても両立していきたい。

企業としても特定のNGOのスポンサーであることから信頼や利点を得ているわけです。セーブザチルドレンというのは非常に強いブランド力があると思います。ですので、少なくとも対話を試みることが大切だと思います。

ロジャー氏:

私から同じ質問の後半部分について、法的拘束力についてコメントしたいと思います。私たちのグループでもこの話題は議論の的となっている。CSOとして指導原則のどこに法的拘束力を持たせたらこれを効果的に動かせるかということです。

私たちのグループの見解では、指導原則には現在法的拘束力はありませんが、社会が企業に対して何を期待していくかを定義していくものになると思います。指導原則は今、異なる3つの方法で拘束力を持ちつつあると思います。一つ目はこの指導原則がガイドラインなどで多く、力強く浸透し取り入れられつつあることです。二つ目に人権デューデリジェンスに使われているコンセプトの中に取り入れられていること、三つ目にデューデリジェンスというプロセスが社会的に開業の免許を得るための用件となりつつあることです。指導原則そのものには遵守しなければならないものはありません。指導原則はあくまで規範的枠組みであって中身は定義されていないことがあります。具体的に企業がどのようなプロセスを経なければならないかということに関しては、今まさに定義されつつあるということです。ここにこそ企業とCSOのコラボレーションができるチャンスがあると思うのです。

指導原則では企業が雇用や人権に対してどのような影響があるのかを説明しなければならないとあります。企業がそのパフォーマンスについて報告することが求められています。理解しやすい用語を使って、影響を受けるステークホルダーの代表者たちに説明することが求められています。

サンドラ氏:

2つ目の質問は、人権とデューデリジェンスの統合をどう企業の戦略に取り込み、結果に結びつけていくかということだったかと思います。またどう優先順位を決めていくのか、ということだったと思います。

南アフリカというのはご指摘の通り1995年のアパルトヘイトの終焉から大きな変化を経験してきました。その当時の人権に関する問題は現在の課題とは随分違ったものではありますが、今でも人権に関する問題あるというのは事実です。

2年ほど鉱山企業と一緒に働いのですが、それは先ほどロジャーがいっていたようなプロセスでした。プライオリティについては指導原則に明確に書かれています。人権に深刻な影響を与えるものからまず取り組むべきだとされています。

白石氏 NGOへのコメント:

今のところまだ、人権が共通の言語となっているとは思いません。共通言語にするためにNGOも企業側も人権とは何かを知らなければなりません。例として、日本の大企業がエタノールを作るために大農場を建設するプロジェクトに関わった事例があります。そこで代々ずっと生活をしてきた現地の先住民が排除されることになりました。まずこれに反応したのがNGOだったのですが、企業側はNGOに何を指摘されているかわからなかったのです。NGO側も人権枠組みやこの共通言語、人権デューデリジェンスのことを使うことができれば上手く対応できたのではないかと思います。企業も勉強していくべきですが、それをあたりまえのこととして期待しない方がよいと思います。

サンドラ氏 NGOへのコメント:

まずは皆様、ご参加頂きありがとうございました。お話しされたことほとんどに賛同しましたし、本当にすばらしい日本での事例を出して頂きました。

世界の理想像について、皆同じゴールに向かって頑張っているのだと思いましたし、その点について国家、企業、CSOは大きな違いはないと思いました。ですからアドボカシー活動がつまらないということについては異論を唱えたいです(笑)。どのようにやっていくかやり方次第であると思います。実際に対話に関わって、多様なアプローチを認めていくことを奨励していきたい。意見の分かれることがあって初めてどんなアプローチが良いのか深く考えることができるようになると思います。最後に申し上げたいのは企業が人権侵害をしなくなるようになるためには市民社会がその役割を担わないといけない、人権侵害をしないことがまず大切だということです。自分自身時に枠にとらわれない考え方や学びを探っていく必要があると思います。そして色々なステークホルダーから繰り返し耳にすることとして、日本の文脈の中で指導原則は何を意味しているか、NGO同士で膨らませていく、お互い関与しながら考えていく一つのプラットフォームがあれば有効ではないだろうかと思います。これが私から皆さんに考えて欲しい課題です。

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