第6回「ソーシャルメディアとNGO」

07.01


2009年7月

環境政策コンサルタント(在ワシントンDC)
リチャード・フォレスト
(翻訳:CSOネットワーク)
原文はこちらから→


NGOや社会運動の世界は、新しいウェブ上の「ソーシャルメディア」サービスを利用して、 多くの人々から発信・共有される短く簡潔なメッセージの威力によってその形を変えてきている。

Twitter革命

この短いメッセージの威力は、今年の4月にヨーロッパ東部のモルドバで、初めて大きなインパクトとなって現れた。 学生や活動家たちが、TwitterやFacebookといったソーシャル・ネットワーキング・サービスを利用して 1万人以上の一般市民を駆り立て、政府に対する選挙違反疑いの抗議活動を実現させた。 ミニブログのウェブサイトTwitter.comが抗議のメッセージを瞬時に広めるという画期的な役割を果たしたことから、 このモルドバの政治的な反乱は「Twitter 革命」とまで呼ばれている。

また、6月の大統領選挙結果をめぐって混乱の続くイランでは、 外国メディアが国外追放されるなど報道規制が厳しくなるなか、 改革派のムサビ元首相の支持者や市民は、ソーシャルメディアを駆使し、 国内においては情報共有やコミュニケーションをはかり、 世界に向けては情報、動画、画像などの配信を行った。 米国国務省がイラン国民のために、 サイトのメンテナンスによりTwitterが使用停止になるのを延期するよう求めたというニュースは、 ロイターやCNNをはじめ、日本でも大きく報じられた。

Twitterや他の「ミニブログ」サイトは、新しい形のコミュニケーション・サービスで、 ユーザーはインターネット上で自分の考えを投稿したり、共有することができる。 通常のブログと違うところは、従来のブログでは、 ユーザーは情報を得るためにはブログのウェブサイトに行かなければならないが、 Twitterでは、ユーザーが情報を得たいと思っている人あるいは団体を選んで登録しておけば、 その人たちが発信した「一言メッセージ」をTwitterのサイトですべて時系列的に見ることが出来る (特定の人や団体の発信するメッセージや情報を追い続けることをTwitterでは「フォロー」するという)。 Twitterではメッセージの長さを140字に制限しており、あまりに短いので、 これらのメッセージは鳥のさえずり(Tweets)になぞらえられる。 それで、チ、チ、チとさえずる小鳥がTwitterのシンボルになっているのだ。

ソーシャルメディア-チェンジの大きな仕掛け人

「ソーシャルメディア」とは、 Twitterのようにユーザー間のコミュニケーションをウェブ上で提供する新しいサービスの総称である。 ユーザーが意見や考えを発信し、それに複数のユーザーが返信し、 双方向のコミュニケーションが派生するソーシャルメディアのウェブサイトやサービスは爆発的に増えている。 ソーシャルメディアにはいろいろな種類があり、それぞれが異なるホスト会社により運営され、機能もさまざまである。 その多くは、「Ning」、「Digg」といった変わったネーミングがつけられている。 ユーザーは、パソコンからだけでなく携帯電話からも伝言板を見たり、また伝言板に書き込みをすることができる。

最近では、このあたらしいソーシャルメディアをうまく活用するための、 ウェブページ、会議、コンサルティングサービス等も増えている。

このソーシャルメディア上で共有されるほとんどの情報はありふれたもので、 一番「フォロー」されているのは有名人である。 しかし、多くの人や組織により、 社会的な課題や行動を世に広めるためにソーシャルメディアを使う方法が次々と編み出されている。 一つの方法は、政策作成のプロセスをより透明にする、あるいは、双方向にすることである。 例えば、今年の5月から6月にかけて米国下院議会の委員会では、 米クリーンエネルギー法案の審議が行われたが、 公聴会に出ていたNGOのメンバーらは、外にいる人たちに向けて、法案の文言が変わったり、 まだ修正案が出されたりするたびにTwitterにメッセージを送った。 Twitterの報道により、その場に居合わすことができなかった人たちまで臨場感を味わうことができたのである。

企業もまた、ソーシャルメディアを駆使して、人と人をつなぐネットワークを編み出している。 IBM社の「スマーター・プラネット」(http://www.ibm.com/ibm/ideasfromibm/us/smartplanet/index.shtml)のように、 会社と顧客や市民を結ぶ双方向のオンライン・コミュニケーション開発などが行われている。 このウェブサイトを訪れる人は、エネルギー問題、都市問題、 水などの地球的課題などのなかから重要だと感じるものについて、コメントや投票を呼びかけられる。 スターバックス社は、「V2Vコミュニティ」(http://www.v2v.net/starbucks)を作っている。 これは、特に地域社会において、社会的活動を行うために人々をつなぐサイトである。

米国政府機関も交通事故の報告や、豚インフルエンザの感染の把握等にソーシャルメディアを使っている。 さらに国連食糧農業機関(FAO)、国連開発計画(UNDP)、国連環境計画(UNEP)、 国連難民高等弁務官(UNHCR)などの国連機関もTwitterを使い、出版物や活動について発信を行っている。

大手のNGOのなかにもソーシャルメディアのユーザーは少なくない。 たとえば、全米野生生物連盟(NWF)、世界自然保護基金(WWF)といった環境保護団体や、 オックスファム、動物保護団体のヒューメイン・ソサエティ・オブ・ザ・US(HSUS)などのNGOもそうである。 実際、ソーシャルメディアを利用するNGOは日に日に増えてきている。 これらのNGOでは、多くのスタッフが「さえずり」を発信している。 中には、Twitterや他のシステムにメッセージを送り、それをモニターすることを正式な職務としているところもある。 大手NGOの中には、このために新しく職員を雇ったり、ボランティアを募って、 メッセージを転送したり、広めたりしているところもある。

多くのNGO、企業、政府機関にとって、ソーシャルメディアは、単に伝えたい情報を送る手段として有用なだけでなく、 そのメッセージに対する反応やフィードバックを得たり、一般社会におけるイメージや評判をモニターするのに役立つものである。

これらの活動の目的は、組織を世に広めることで、その結果、会員や寄付の拡大を目指している。 同時に、情報を伝えることで、会員が組織の活動に関わる手伝いをすることもできる (たとえば、家の近所で見かけた野生生物を報告したり、政治家に連絡して意見を伝えたりなど)。 それによって会員は組織をより身近に感じることができるようになり、将来の強い支援者になる可能性がある。

以上のようなプラスの可能性がある一方で、問題もある。 まず新しい可能性を追い続けることや、変化の激しいオンラインの世界を継続的に最大限に活用することはむずかしい。 NGOは、発信者として、システムに興味深い情報を送り続けることも、 受け手として、その結果返信される情報の洪水をふるいにかけることも大変なことである。 また、ソーシャルメディアやネットワークサービスにより情報を瞬時に送り届けることができることで、 従来のニュースレターやその他のコミュニケーション手段が古いメディアとなってしまうのである。

NGOへのインパクト

この新しい動きはNGOにどんな影響を及ぼすだろうか。 ソーシャルメディアは、NGOの活動方法を根本的に変えてしまう可能性がある。 NGOは、これらの新しいツールをどう使えば、自らのメッセージを効果的に一般社会やメディアに届けられるか、 またそれにより大きな支持を集め自分たちのミッションを遂行することができるか、を模索すべきである。

近い将来、パッケージ化された、簡単に理解できるような情報やメッセージを 最速かつベストに提供することができるNGOほど、 メディアや、一般社会、ひいては政府からもっとも注目されるようになるかもしれない。 組織の継続と成功は、たった140字のメッセージにかかっているかもしれないのである。

ソーシャルメディアとはどのようなものか、 それらがどのように米国の大手NGOによりうまく利用されているかの一例として、 全米野生生物連盟(NWF)のサイトはわかりやすい。
http://www.slideshare.net/danielle.brigida/nwf-staff-intro-to-social-media

 

月別アーカイブ

ページ上部へ戻る