【開催報告】3月1日開催シンポジウム「対話から考える責任あるビジネス推進のあり方~外国人労働者の労働環境に関する課題を中心に~」

03.08


3月1日(金)に、CSOネットワーク主催シンポジウム「対話から考える責任あるビジネス推進のあり方~外国人労働者の労働環境に関する課題を中心に~」を、ハイブリッド形式(赤坂インターシティコンファレンスとオンライン)にて開催しました。

第一部では、「日本における外国人受入れの現状と高まる「対話」の必要性〜持続可能な地域と職場づくりに向けて〜」と題して、田村太郎氏(一般財団法人ダイバーシティ研究所代表理事)が基調講演を行い、続いてCSOネットワーク長谷川事務局長から、今年度開始した「対話による外国人材の労働・人権問題改善に向けた調査」の進捗報告がありました。  

第二部では、中尾洋三氏(責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム(JP-MIRAI)アドバイザー)、北御門織絵氏(佐賀県 地域交流部国際課 多文化社会コーディネーター)、田中竜介氏(ILO駐日事務所 プログラムオフィサー渉外・労働基準専門官)から、外国人材をめぐる課題や、課題に対する「対話」の必要性について、それぞれの立場からご報告をいただきました。

シンポジウムバナー

第一部
基調講演:「日本における外国人受入れの現状と高まる「対話」の必要性〜持続可能な地域と職場づくりに向けて〜」
田村太郎氏(一般財団法人ダイバーシティ研究所 代表理事)


田村氏からは、日本における外国人材受け入れ政策の変遷と現在の受け入れ政策の方向性、日本の外国人材の現状と課題、それに対する対話を含む必要な取組みなどについてお話いただきました。外国人材と共につくる社会に向けて、まずは全体を俯瞰し議論の前提となる共通の理解をつくってくださった上で、今必要となっている「対話」に焦点を絞り込んでくださった、まさにシンポジウムの基調となるお話でした。
田村氏基調講演資料

報告:「対話による外国人材の労働・人権問題改善に向けた調査」進捗報告
長谷川雅子(CSOネットワーク 事務局長・理事)

長谷川からは、CSOネットワークが今年度開始した「対話」を切り口にした、外国人材の労働・人権問題改善に向けた調査について、その問題意識や、インタビュー調査や国内外の訪問調査から得た気づきが報告されました。当日配布された「創造的対話のススメ」を紹介しながら、「対話」を単なる理解の促進や利害関係の調整を超えた、新しい価値や取組みの創造に繋げる方向性が提案されました。
長谷川ご報告資料

第二部
個別発表
企業の視点から
「対話から考える責任あるビジネス推進のあり方 JP-MIRAI外国人労働者の相談・苦情対応の報告」
中尾洋三氏(責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム(JP-MIRAI) アドバイザー)

中尾氏からは、アドバイザーを務めておられるJP-MIRAIの取組みから、「責任ある外国人労働者受入れ企業協働プログラム」の内容と実績を中心にお話しいただき、そこから浮かび上がってきた課題の一つとして、グリーバンスメカニズムとしての公益通報者保護制度の浸透の鈍さとその背景にある企業の意識について問題提起をいただきました。
中尾氏ご報告資料

行政の視点から(佐賀県の取組み):
「共生社会実現の視点から地域の多様な主体の支援から見えてくる「対話」とは~佐賀県の取り組み~」 北御門織絵氏(佐賀県 地域交流部国際課 多文化社会コーディネーター)

北御門氏からは、地元企業等における働く環境整備の取組みとして、県による企業へのコミュニケーション支援や、外国人受入れの際のオリエンテーションの提供などをご紹介いただきました。その上で、企業内の環境づくりに留まらず、企業と様々な地域の主体の関わりをつくっていき、 外国人も日本人もともに暮らしやすい共生社会に向けた明確な方向性を示されました。
北御門氏ご報告資料

「ビジネスと人権」の視点から:
「ILOの取組みから見えてくる人権尊重のための「対話」の在り方とは」
田中竜介氏(ILO駐日事務所 プログラムオフィサー 渉外・労働基準専門官)

田中氏からは、移民労働者の権利侵害は日本だけに留まらず国際的な問題であること、それに対して「ビジネスと人権」のアプローチが有効であり、「対話」を含む労使間のエンゲージメントにより両者にとっても社会にとっても「win-win」の関係づくりが重要であることなどをわかりやすく説明いただきました。職場における「ダイバーシティ(多様性)・エクイティ(公平性)&インクルージョン(包摂性)」の推進により、労働者全員の心理的安全性と企業への帰属意識の醸成が重要であると締めくくられました。
田中氏ご報告資料


パネルディスカッション

3つの個別報告の後、CSOネットワークの古谷由紀子代表理事による進行のもと、本日のご登壇者によるパネルディスカッションを行いました。パネリストからは「形式的なものではなく本音を掬い上げられるような対話が重要である」、「対外国人として出会うのではなく、人としてしっかり正しく出会うことが必要である」、「労組の存在は心理的安全性につながるもので、たとえ労組がなくても頼るところが必要である」など、必要とされる対話やそのための仕組みについて活発な議論が交わされました。

今回のシンポジウムにはオンライン・会場あわせておよそ80名の方々にご参加をいただきました。CSOネットワークでは、引き続き様々なアクターの方々と連携しながら、「対話」を切り口にした外国人材の労働人権問題改善のための調査に取組み、具体的な現場での取組みにつなげていきたいと考えています。

会場で配布したパンフレット『外国人材との共生をめざす創造的対話のススメ〜持続可能な地域と職場づくりに向けて〜』は、こちらのページでPDF版を公開しています。
本パンフレットでは、外国人材を取り囲む人々の間で対話が必要になる場面とその場面における対話のポイントや、創造的対話に繋げるための手法や工夫、そして外国人材との共生社会を目指す「創造的対話」を進めるための原則などを紹介しています。

  

 

 

 

 

 

 

 

登壇者の発表資料は一部を公開しています。
本シンポジウムは公益財団法人 トヨタ財団の助成を受けて実施しました。

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