持続可能な開発目標(SDGs)案 全文の日本語仮訳が公表される

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【2014年9月 神奈川発】民間のシンクタンク地球環境戦略研究機関(IGES)は、持続可能な開発目標に関するオープン・ワーキング・グループ(Open Working Group on Sustainable Development Goals)が承認した持続可能な開発目標(SDGs)案の仮訳を公開した。

この仮訳には前文、17個の目標、169個のターゲットの日本語訳が掲載されている。文書はIGESのホームページから無料でダウンロードできる。

▼持続可能な開発目標(SDGs)に関するオープン・ワーキング・グループ成果文書(IGES仮訳)はこちら
http://pub.iges.or.jp/modules/envirolib/upload/5436/attach/SDGs_OWG_outcome_document_IGES_translated.pdf

▼Open Working Group proposal for Sustainable Development Goals(原文)はこちら
http://sustainabledevelopment.un.org/focussdgs.html

持続可能な開発目標

目標 1. あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる

目標 2. 飢餓を終わらせ、食糧安全保障および栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する

目標 3. あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する

目標 4 . すべての人々への包括的かつ公平な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する

目標 5. ジェンダー平等を達成し、すべての女性および女子のエンパワーメントを行う

目標 6. すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する

目標 7. すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な現代的エネルギーへのアクセスを確保する

目標 8 . 包括的かつ持続可能な経済成長、およびすべての人々の完全かつ生産的な雇用とディーセント・ワーク(適切な雇用)を促進する

目標 9. レジリエントなインフラ構築、包括的かつ持続可能な産業化の促進、およびイノベーションの拡大を図る

目標 10. 各国内および各国間の不平等を是正する

目標 11. 包括的で安全かつレジリエントで持続可能な都市および人間居住を実現する

目標 12. 持続可能な生産消費形態を確保する

目標 13. 気候変動およびその影響を軽減するための緊急対策を講じる*
*国連気候変動枠組条約(UNFCCC)が、気候変動への世界的対応について交渉を行う一義的な国際的、政府間対話の場であると認識している。

目標 14. 持続可能な開発のために海洋資源を保全し、持続的に利用する

目標 15. 陸域生態系の保護・回復・持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・防止および生物多様性の損失の阻止を促進する

目標 16. 持続可能な開発のための平和で包括的な社会の促進、すべての人々への司法へのアクセス提供、およびあらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包括的な制度の構築を図る

目標 17. 持続可能な開発のための実施手段の強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する

持続可能な開発目標に関するオープン・ワーキング・グループの提案についての序論

1. 国連持続可能な開発会議(リオ+20)の成果文書である『我々が望む未来』では、決議事項の1つとして、オープン・ワーキング・グループ(OWG)を設置して持続可能な開発目標(SDGs)を設定し、第68回国連総会における検討および適切な行動に付すことが定められた。また、同成果文書ではSDGsの概念的基盤として、SDGsは国連ポスト2015年開発目標と整合・統合されるべきであると定めている。

2. 貧困撲滅は、現在世界が直面している最大の地球規模課題であり、持続可能な開発にとって必須の条件である。リオ+20の成果文書では、喫緊の課題として貧困と飢餓からの人類の解放に対するコミットメントが再確認された。

3. 貧困撲滅、持続可能でない生産消費形態の変更および持続可能な生産消費形態の促進、ならびに経済・社会開発の基礎となる天然資源の保護と管理は、持続可能な開発の総体的目標であり、不可欠な条件である。

4. 持続可能な開発の中心は人々であり、このためリオ+20では、正当かつ公平で包括的な世界を目指して努力し、持続可能かつ包括的な経済成長、社会開発および環境の保護を促進し、これを通じ、年齢、性別、障害、文化、人種、民族、出自、居住資格、宗教、経済的地位その他の状況によって区別することなく、世界中の子ども、若者、および次世代の人々をはじめとするすべての人々の利益のために協力して取り組んでいくことを約束した。

5. また、リオ+20は、とりわけ第7原則として規定された「共通だが差異のある責任」を含め、環境と開発に関するリオ宣言のすべての原則を再確認した。

6. またリオ+20は、リオ宣言、アジェンダ21、アジェンダ21の更なる実施のための計画、持続可能な開発に関する世界首脳会議のための実施計画(ヨハネスブルグ実施計画)、持続可能な開発に関するヨハネスブルグ宣言、小島嶼開発途上国の持続可能な開発のための行動計画(バルバドス行動プログラム)、小島嶼開発途上国の持続可能な開発のための行動計画の更なる実施のためのモーリシャス戦略の完全実施に対するコミットメントを改めて再確認した。そして、2011~2020年の10年における後発開発途上国のための行動計画(イスタンブール行動計画)、アルマトイ行動計画(内陸・通過開発途上国の通過運輸協力のための新たな国際的枠組みにおける内陸開発途上国の特別なニーズへの対処)、アフリカの開発ニーズに関する政治宣言、アフリカ開発のための新パートナーシップの完全実施に対するコミットメントも再確認した。更に、国連ミレニアム宣言、2005年世界サミットの成果、開発資金国際会議のモンテレイ合意、開発資金に関するドーハ宣言、国連総会におけるミレニアム開発目標(MDGs)に関するハイレベル本会合の成果文書、国際人口開発会議の行動計画、国際人口開発会議の行動計画の更なる実施のための主要な行動、および北京宣言および行動綱領、ならびに上記のレビュー会議の成果文書を含む、経済、社会、および環境分野に関するすべての主要な国連会議や首脳会議の成果に盛り込まれたコミットメントを再確認した。2013年9月に開催されたMDGs達成に向けたフォローアップのための特別イベントの成果文書では、強固なポスト2015開発目標の立案に関する決定を再確認した。国際的な人の移動と開発に関するハイレベル対話の宣言において人の移動と開発に対するコミットメントを再確認した。

7. リオ+20の成果物は、国際法およびその原則を十分に尊重しながら、国際連合憲章の目的および原則に引き続き従う必要性について再確認した。更に、自由・平和・安全の重要性、そして発展の権利、および水・食糧の権利など十分な生活水準への権利を含む人権の尊重、法の支配、グッド・ガバナンス(良い統治)、ジェンダー平等、女性のエンパワーメント、ならびに開発のための正当で民主的な社会への総合的なコミットメントを再確認した。世界人権宣言をはじめとする人権および国際法に関連する国際的な手段の重要性を再確認した。

8. OWGは、気候変動は国際的な問題であり、世界的な温室効果ガスの排出削減を促進するには、すべての国々による可能な限り広範な協力および効果的かつ適切な国際的対応への参画が求められることを強調した。国連気候変動枠組条約(UNFCCC)において、締約国は、衡平の原則に基づき、かつ各々の共通だが差異のある責任と各国の能力に従い、人類の現在および将来の世代のために気候系を保護すべきであることを想起した。2020年までの世界の年間温室効果ガス排出量についての締約国の削減目標を総計した効果と、世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃または1.5℃以内に抑える見込みに合致した排出シナリオの総計の間に大きな隔たりがあることを重大な懸念をもって留意するとともに、UNFCCCの下での究極的な目標は、気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガス濃度を安定化させることであると、再確認した。

9. 地球とその生態系は我々の故郷である。「母なる地球」は多くの国や地域で共通の表現であり、持続可能な開発の推進との関連で、自然の権利を認識する国もあることに我々は留意する。リオ+20では、現在および未来の世代における経済的、社会的、環境的ニーズの正しいバランスを達成するためには、自然との調和の推進が必要であると認めている。また、世界における自然および文化の多様性を認め、すべての文化および文明が持続可能な開発に寄与し得ることを認識している。

10. 各国は持続可能な開発の実現に向けて独自の課題に直面している。最も脆弱な国々、特にアフリカ諸国、後発開発途上国、内陸開発途上国、および小島嶼開発途上国は特有の課題に直面している。紛争状態にある国にも特別な注意を向ける必要がある。

11. リオ+20では、国際協力を強化し、すべての人々、特に開発途上国の人々に対する持続可能な開発に関わる根強い課題に取り組むというコミットメントを再確認した。この点に関し、経済的安定、持続的な経済成長、社会的平等の促進、および環境保護を達成すると同時に、ジェンダー平等、女性のエンパワーメント、およびすべての人々の雇用均等、ならびに子どもの潜在能力を完全に実現すべく教育などを通じた保護、生存、および開発を強化することが必要であることを再確認した。

12. 各国は自国の経済および社会開発に対する第一の責任を負うものであり、国内政策、国内資源および開発戦略の役割の重要性は計り知れない。開発途上国は持続可能な開発のための追加の資源を必要としている。持続可能な開発を促進するためには、さまざまな供給源から多大な資源を動員し、調達金を効果的に利用する必要がある。リオ+20では、持続可能な開発のためのグローバル・パートナーシップを再活性化させ、そのために必要な資源を動員させることに対するコミットメントを認識した。持続可能な開発資金に関する政府間専門家委員会の報告書では、持続可能な開発資金戦略案を提案する予定である。2015年7月に開催予定の第3回開発資金国際会議の実質的成果として、モンテレイ合意およびドーハ宣言の実施進捗状況が評価される予定である。国家および国際レベルでのグッド・ガバナンスと法の支配は、持続可能かつ包括的で公平な経済成長、持続可能な開発、および貧困と飢餓の撲滅に不可欠なものである。

13. リオ+20では、我々の全般的目標である三次元的な視点からの持続可能な開発を実現するための利用可能なアプローチ、ビジョン、モデルおよびツールは各国の状況や優先事項に従って異なることを再確認した。

14. 持続可能な開発目標の実施は、政府、市民社会、民間セクター、および国連機関の積極的関与を伴った、持続可能な開発のためのグローバル・パートナーシップに依存している。実施レビューの強固な仕組みは、SDGsの成功に不可欠なものである。国連総会、経済社会理事会(ECOSOC)のシステム、およびハイレベル政治フォーラムは、この点において中心的な役割を担う。

15. リオ+20では、植民地または外国の支配下で暮らす人々の自決権の完全な実現に対する障害を取り除くため、国際法に従い更なる効果的な手段と行動を取ることに対するコミットメントを繰り返し表明した。これらの障害は、こうした人々の経済および社会開発ならびに環境に引き続き負の影響を及ぼしており、人間の尊厳および価値とは相容れないものであるため、撲滅すべく対処しなければならない。

16. リオ+20は、憲章にあるとおり、国家の領土保全や政治的独立に反する行動に正当性を与え、また助長するものであると見なされないことを再確認した。また、国際法に従い、複合的人道危機やテロリズムの影響を受ける地域に暮らす人々にとっての障害や制約を取り除き、支援を強化し、特別なニーズに対応するために、更なる効果的な手段と行動を取ることを決定した。

17. SDGsの実施モニタリングにあたっては、所得、ジェンダー、年齢、人種、民族、居住資格、障害、地理的位置、およびその他SDGsの実施モニタリングを支援する各国事情に関連する特性別のデータや統計の入手可能性とアクセスを向上させることが重要である。SDGsの実施から取り残される者が出ないよう、非集計データの質、対象範囲、および入手可能性を向上するため、緊急に措置を講ずる必要がある。

18. 持続可能な開発目標にはそれぞれターゲットが設定されており、更に今後、成果の測定に重点を置いた指標により詳細化される。本目標は行動を中心とし、グローバルな性質を持ち、あらゆる国に例外なく適用できるものである。また、各国の異なる原状、開発能力および開発レベルに配慮し、国内政策と優先事項を尊重している。本目標は、MDGsの成果を基盤とし、MDGsの未達成事項の完了を目指すとともに、新たな課題に対応するものである。これらの目標は、持続可能な開発における世界的な優先事項の統合的かつ不可分な総体をなしている。ターゲットは、世界全体の野心的ターゲットであり、各国政府は世界的な野心のレベルを指針としつつ、国内の状況を勘案して独自の国別ターゲットを設定する。目標とターゲットは、経済、社会、環境面を統合し、あらゆる次元での持続可能な開発の達成において、これらのインターリンケージを内包するものである。

出典:公益財団法人地球環境戦略研究機関
原題:持続可能な開発目標(SDGs)に関するオープン・ワーキング・グループ成果文書(IGES仮訳)
URL:http://pub.iges.or.jp/modules/envirolib/view.php?docid=5436

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