ポストMDGsの行方は? 第三世界ネットワークの分析

09.25


【2012年8月7日 マレーシア発】本年6月、ブラジルで持続可能な開発のためのサミット(リオ+20)が開催された。国連はこのサミットを終え、次の大きな動きとなる、2015年以降の国連開発アジェンダの準備にとりかかっている。

このアジェンダの内容や期待される具体的な効果はまだはっきりとしない。しかし、途上国の経済的・社会的開発を進めるコミットメントを強化する方向に世界の流れを加速させ、国連のリーダーシップを再確認することが期待されている。 先進国の急速な経済状況悪化によって、途上国への影響が深刻化し、不確実性が増大している今日において、国連主導の包括的な開発アジェンダの設定は、今まで以上に重要となっている。

ミレニアム開発目標(MDGs)以降の開発アジェンダに関する議論を進めるべく、2010年の国連MDGsサミットにおいて、潘基文国連事務総長に2015年以降の開発アジェンダ策定に向けた提言書を提出するよう要請がなされ、また、2013年9月の第68回国連通常総会において「特別会合」を開催することが決められた。この特別会合において「2014年または2015年の開発サミット開催」が決議されることが期待されている。

このような大枠のもと、国連事務局はすでに開発アジェンダの準備を進めている。その内容は次の3つだ。

第一に、国連の50の部署および機関から構成される国連タスクチームは、新しい開発アジェンダにおいて国連システムが考慮すべきことについて、6月末に報告書を発表した。この報告書は、「人権」「平等」「持続可能性」の3つからなる基本的原則と、「包括的な経済開発」「環境の持続可能性」「包括的な社会開発」「平和と安全保障」の4つからなる重点事項を提案している。また、同報告書は、これらの重要事項を実現する上でカギを握る4つの要因を定義した。

第二に、国連の各組織は主要なテーマに関する8つの国際的なワークショップの実施にすでに着手している。加えて、国連開発計画(UNDP)は、政府や市民社会が国連開発アジェンダに何を望んでいるかを討議するコンサルテーションを、50ヵ国で主催する。

第三に、潘基文国連事務総長は、開発アジェンダに関して同氏に提言を行うためのハイレベルパネルを招集した。7月31日に、潘氏はデービッド・キャメロン英国大統領、バムバン・ユドヨノ・インドネシア大統領、エレン・ジョンソン=サーリーフ・リベリア大統領という3 人の政治リーダーが同パネルの共同議長を務めると発表した。他の23人のパネルメンバーには、ベナン、ブラジル、中国、コロンビア、フランス、日本、ヨルダン、ケニア、インド、ラトビア、メキシコ、オランダ、ナイジェリア、ロシア、南アフリカ、韓国、スウェーデン、東ティモール、トルコ、米国、イエメンの各国から、大臣や著名人、有識者が名を連ねている。

同パネルには、2013年の上半期中に「大胆かつ実行可能な開発のビジョン」を提起することが求められている。パネルによる提言は、2013年9月の国連通常総会において開催が予定されている特別会合で各国政府が検討することになる、事務総長の報告書に反映される予定だ。同パネルは「ポスト2015年の開発アジェンダとして、貧困との闘いと持続可能な開発が中心に据えられ、すべての国々の共同責任が明記された提言」を提出することとなる。

同パネルにはまた、MDGsを遂行する中で見えてきた成果や改善点に加え、開発における新たな課題を反映させることが求められている。加えて、リオ+20(国連持続可能な開発会議)のフォローアップとして持続可能な開発目標(SDGs)をデザインするために結成された30ヵ国からの専門家からなる作業部会との協働も求められている。

上記のように、国連の進める開発アジェンダは向こう数年間における国連の主要なプロセスとしてその姿を明確にしつつあるが、未解決の課題もまだ多い。

まず、このプロセスとSDGsの策定を含めたリオ+20のフォローアップとの連携についてだ。SDGsはMDGsの後継者となるのだろうか?両者はどのような関連をもって進められるだろうか?

次に、開発アジェンダはMDGsのような形の目標とターゲットをもつものとして狭義に定義されるのだろうか?あるいは、より包括的な枠組みとして、原理原則、分析枠組み、行動計画、実施方法を明示するものとなるのだろうか?

さらに、各国政府は開発アジェンダの形成、行動計画、目標、ターゲットなどの策定に、いつ、どのプロセスで加わるのだろうか?

国連事務局と多くの国連機関がすでに開発アジェンダのための準備を進めている一方で、各国政府がこれらの議論に加わるのは2013年9月の特別会合以降となる。これは、特に開発アジェンダにオーナーシップをもち、実際に運用していく国々にとっては、非常に遅い段階での参加だ。

最後に、どのようなプロセスを経るにせよ、開発アジェンダの内容が的確なものであることが何よりも重要だ。それには、迫り来る世界経済危機の現実を中心に据え、社会および環境危機を直視しなければならない。MDGsのような目標とターゲットを据えるだけではなく、危機を招来した構造的な要因に取り組むべきだ。

出典:Third World Network
原題:UN plans new Development Agenda Published in SUNS #7426 dated 7 August 2012
URL:http://www.twnside.org.sg/title2/sdc2012/sdc2012.120802.htm

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