CSOネットワーク開発セミナー「ソーシャルイノベーションへの期待~開発課題解決へのアプローチとして~」ご報告

04.25


クリス・デイグルマイヤー氏当日資料[PDF 3.27MB]
イアン・ブレットマン氏当日資料[PDF 627KB]
服部篤子氏当日資料[PDF 2.33MB]

【開会挨拶】

ジョイ・M・サクライ氏
米国大使館 広報・文化交流部 二等書記官

米国大使館を代表してご挨拶申し上げます。

イノベーションと起業家精神の醸成は米国大使館の目的の一つです。デイグルマイヤー氏は、ソーシャルイノベーションの概念とそのグローバルな影響を吟味しつつ、ソーシャルイノベーションがどのように社会の進歩を促進するかについて話すことでしょう。

ナイチンゲールが、看護師養成学校を作り、衛生学と病院の世界標準を作ったように、ソーシャルイノベーションや起業家精神は決して新しい概念ではありません。しかし、近年、米国内でソーシャルイノベーションは主流化し、社会に大きな変化を与えつつあります。そして日本にもその変化は起こりつつあると思われます。

クリス、あなたの専門知識を私たちと共有してくれることに感謝します。このプログラムを協働してくれた黒田さんとCSOネットワークの皆さんにもお礼を申し上げます。そして、ソーシャルイノベーションについて学ぶために今日この会場にお集りいただいた皆さんに心より感謝申し上げます。

【基調講演】「民間開発援助(PDA)におけるソーシャル・イノベーションの役割」

クリス・デイグルマイヤー氏
スタンフォード大学ビジネススクール ソーシャルイノベーションセンター エグゼクティブディレクター

私達は、絶えず変化する社会に生き、その社会は環境問題など大きな課題を抱えています。変化と課題はチャレンジとチャンスをもたらすもので、私達は、ソーシャルイノベーションがグローバルな課題を解決するための新たな考え方を提示すると信じています。より多くのイノベーションをより速く大規模に実現する必要があります。今日はこれから3つのことをお話します。

① ソーシャルイノベーションの定義:ソーシャルイノベーションとは何なのか、ソーシャルアントゥルプルナーシップとはどう違うのか。
② ソーシャルイノベーションの研究から私達が学んだこと。
③ 研究とケーススタディに基づいたソーシャルイノベーションを醸成するための提案。

90年代初めから、社会起業家、社会的企業、社会資本、そしてソーシャルイノベーションなど、「社会」という接頭辞が急増してきました。その中でここ20年最も話題となっているのがソーシャルアントゥルプルナーシップです。ムハメド・ユヌス(グラミン銀行創設者)、カレン・テェ(インターナショナルブリッジトゥジャスティス)、ビル・ドレイトン(アショカ)、ソラヤ・サルティ(中東)、ウィリー・フーテ(ルート・キャピタル)、プレマル・シャー&マットフラネリー(Kiva)などは、国際的に有名、あるいはそれぞれの国内でよく知られている人々です。社会起業家の世界では、恐れ知らずで、責任感が強く、工夫に富み、忍耐力があることが称えらます。社会起業家促進センターのグレッグ・ディー氏によれば、社会起業家とは、変化を起こす人、すなわち社会的価値を創り出し維持するとともに、新しい機会を追求し、変革を続け、大胆に行動ししっかりと説明する人とされています。

ここで過去30年に注目を浴びたソーシャルイノベーションについて見てみましょう。

マイクロファイナンス、排出権取引、チャータースクール、社会的責任投資(SRI)、フェアトレード。これらの類似点や相違点についてお話しましょう。

三脚を思い浮かべてください。最初の脚は先程お話した社会起業家です。変化を起こす人達、この分野には偉大な人間についての理論があります。2番目の脚は社会資本です。インパクトインベストメントに見られるように社会資本は今や最前線の分野です。社会資本は社会を変革する必須材料となってきています。3番目の脚は社会的企業です。この分野には組織論がありビジネスモデルに注目します。マイクロファイナンスを例にとればムハメド・ユヌス氏が社会起業家で、グラミンバンクが社会的企業そして資本はその両方に関わります。ここで重要なのは実際の社会変革、ソーシャルイノベーションであるマイクロファイナンスをどのように醸成するかということであり、3脚をつなぎ止めているものこそがソーシャルイノベーションなのです。

ソーシャルイノベーションの定義:社会問題に対する革新的な解決法。既存の解決法より効果的・効率的かつ持続可能であり、創出される価値が社会全体にもたらされるもの。

イノベーションの二つの基準は、①目新しさ:必ずしもオリジナルである必要はないが使用者にとって新しいということ。②改善:より効果的・効率的に。

これらに私たちは、③持続可能性 と ④公平性 ⑤公共の価値(社会への貢献)を加えました。いくつかの理由から、私たちはソーシャルイノベーションと一般的なイノベーションを区別するべきと考えています。この基準でいえば「グーグル」はソーシャルイノベーションではありません。これから説明する事例を聞いていただければそれが明確になるでしょう。

ソーシャルイノベーションに属するものとしては、社会的責任投資、マイクロファイナンス、雨水利用などがあり、一般的なイノベーションには、インターネット、Hydraulic Fracking、Deep water Trollingがあります。注意すべき点は、社会に対する便益は、ビジネスとって重要なものではないということです。

スタンフォードでは、現代のソーシャルイノベーションを研究する時に「イノベーションの連続」という概念を用いてプロセスや組織を分析しています。この連続は、まず、問題と機会を特定し、解決のためのアイデアを生むために人を集め、試行・試作をおこない、それを広めるという過程です。これからこの「イノベーションの連続」をフレームワークとして用いてケーススタディを分析してみましょう。

ケーススタディの題材は米国における排出権取引です。排出権取引は市場を使って環境保護を行う取り組みで、米国ではSO2の排出に関して大変な成功を収め酸性雨の削減において貢献してきました。

発端は1960年代の、環境汚染に対する抗議でした。1970年に「Clean Air Act」が可決され、環境保護庁(EPA)が設立されました。政府はこの時1975年までに環境基準の設定を求められます。問題の発覚から、様々な政策が出される時期には、政府のかじ取りも不安定で、実業界は経費を懸念、NGOは状況を監視しているという状況です。1970-1975年、Bubble/Netting 政策、1976年にはカーター大統領によるCost-Effective 法の制定。この時期はアイデア生成の時期だったと言えます。たくさんの軋轢、信用、協働が欠如しており、行動はまだあまりなかった時期です。次に我々は実験的な試作品の時代に移ります。ビル・ドレイトン率いるEPAは発明から実施へと移行し、EPAは課題に対して市場を重視するアプローチをとり、政府と産業界は協調路線(ソロモン協議会)へ舵を切ります。1977年にはEPAによって「Clean Air Act」の修正が行われ、1979年にEPAはバブル政策(Alternative Emission Reduction Options)を発行します。1980年代、EPAは産業界との協調路線をひた走り「Controlled Trading」を進めました。この時期、政府と産業界は同じパーティにいましたが、NGOは未だ反対の立場でした。システムや仕組みが変化した時期でした。次は拡散と評価の時代です。問題の発覚した1970年から20年が経過していましたが酸性雨は引き続き解決すべき重要な課題でした。ジョージ・ブッシュが環境重視の大統領として登場し、新たな法律によって酸性雨の問題に対処しようとします。1990年「New Acid Rain Policy」が出され、排出権取引の全米的な市場が提案されます。排出権取引の手法を用いれば、全米で30~250億ドルかかるコストがわずか8億ドルで済むと試算され、1995年には全米すべての州がこの(排出権取引を含む)「acid rain program」を承諾します。

排出権取引の例に見られるように、ソーシャルイノベーションは一日では成りません。近道はないのです。排出権取引のアイデア自体は1972年に出ていましたが、実際の解決法として採用されるまでには23年の歳月が必要でした。

斬新で魅力的なものへの心酔を持ち続けることが大切です。毎週のようにイノベーションを醸成するための様々な施策や機関について耳にします。それらはもちろん意味があるのですが、真の変化はゆっくりとソーシャルイノベーションの険しい山を登る中から起こってくるのであって、息の長い取り組みが必要です。

困難は、イノベーションの連続の節目で生じます。困難を乗り切るにはそれまでとは異なるアプローチ、すなわち、異なる技術、新たなリソース、イノベーションのパートナーなどが必要になります。

フェアトレードの考え方は、ブレスレン教会のプログラムとして1949年に始まりました。チャータースクールのアイデアは1974年に生まれ、最初の学校がオープンしたのは1991年でした。グラミン銀行は1976年に設立されましたが、マイクロファイナンスが広がるまでに20年かかりました。

ソーシャルイノベーションには、イノベーションを推し進める上で決定的な役割を果たす「てこ(leverage)」のようなものが存在することを我々の研究では発見しています。

パレート原則(80-20の法則として知られている)は、たいていのできごとにおいて20%の原因から80%の結果が得られることを主張します。ソーシャルイノベーションの分野では、80%の効果を与える「てこ」を見つけることが最も重要だと思われます。

例えば、排出権取引で言えば、それはビジネス的な効率であり、フェアトレードで言えばマーケットへの浸透です。排出権取引は今や規模が大きくなり簡単に消すことはできないものとなっているのです。

過去30年ソーシャルイノベーションの醸成過程は、セクター間の壁を取り去る過程でもありました。かつてはフィランソロピーと言えば政府のプログラムと相場がきまっていましたが、最近では産業界、非営利組織と政府との協働は非常に重要とされています。

途上国へ流れる資金も大きな変化を遂げました。1970年代には途上国に流れる資金の70%は政府からのものでしたが、2003年の時点で民間セクターの資金が全体の80%を占めるようになっています。

市民セクター(非営利)の進化にも著しいものがあります。例えば、20年前インドネシアには独立系の環境団体が1つしかありませんでしたが、現在では2000以上もの団体があると言われています。また、ブラジルでは90年代に市民団体が60%も増加したそうです。

この市民社会の台頭は産業界にも影響を与え、ソーシャルイノベーションを促進するセクターを越えた協働を引き起こしたと言えるでしょう。例えば気候変動について議論する際、グローバルな石油会社シェブロンや、米国EPA、ブラジル環境省、非営利組織WWFやsave the Amazonらの役割を考慮せずに議論することはもはやできないでしょう。

セクター間の相互作用の重要性を踏まえ、セクター間で、アイデアや価値、資本や才能が行き交うような政策や実践を考えるべきなのです。

ソーシャルイノベーションについて研究しているアカデミックな機関としては、Institute for Social Innovation, Carnegie Mellon、Lien Centre for Social Innovation, Singapore Management、 Program on Social Enterprise, Yale、Social Innovation Center, INSEAD、Skoll Center for Social Entrepreneurship, Said Business School, Oxfordなどがあり、またその他の機関としては、White house office of social innovation and civic participation、Center for social innovation, Vienna、The Young Foundation Center for Social Innovation, London、OECD LEED, The Forum on Social Innovations、Social Innovation Park, Barcelona & Singaporeなどがあります。

質疑応答

Q: 6月にリオで地球サミットが開かれ、環境と開発の会議をNGOでする予定である。どのようにして持続可能な社会を目指せばよいか。

A: まず、日本人、日本社会が持続可能な世界を目指していくべき。小さなことから始めて、周りに賛同者を増やしていくことが大事。そして同様な活動を行う者同士でネットワークを構築する。また、セクターを超えた協力関係の構築も大事。(パートナーを誰にするかを考える)最終的には、スタンダードになることを目指す。

【事例報告】「ソーシャル・イノベーションとしてのフェアトレード-社会的・経済的アクターとしての生産者と消費者をつなぐ-」

イアン・ブレットマン 氏
国際フェアトレードラベル機構 副理事長

<フェアトレードラベルとは>

フェアトレードラベルのビジョンは、「全ての生産者が安定した持続可能な生活を実現し、自らの未来を切り開いている世界」の実現である。そのためのミッションは、「不利な立場にある生産者と消費者をつなぎ、より公正な貿易の仕組みを根付かせることで、生産者が貧困に打ち勝ち、自らの力で生活を改善していけるようにすること」である。

そんな中でフェアトレードラベルは、認証を行う事業体というだけではなく、運動のファシリテーターとして存在している。Entrepreneurはsocialが接頭辞につかなくても価値があり、それが当然とされる世界をつくりたい。

<市場拡大と生産者へのインパクト>

フェアトレード認証製品の生産者サイドには3つの生産者ネットワーク組織があり、60の国で生産されている。また、その認証をおこなう組織は26カ国で活動している。フェアトレード認証製品はアフリカやアジア、ラテンアメリカなどの小規模農家や農園・工場の労働者が作る製品であり、70カ国以上で販売されている。商品は27,000以上の商品ラインが流通しており、コーヒーからワイン、コットンまで幅広く展開している。フェアトレード認証製品の市場規模は年々確実に成長を続けており、2010年における世界のフェアトレード推定小売市場では、約43.6億ユーロに達している。

フェアトレード認証ラベルとは、そもそも世界で最も認知されたエシカル(倫理的な)ラベルである。生産者だけでなく、輸出入や販売に携わる組織もフェアトレード基準を守っている商品につけられるラベルであるからだ。また、57%の消費者がフェアトレードラベルを見たことがあるとし、90%が信頼していると回答している。これは信用性を表している。

フェアトレードの基準としては、生産者への利益として最低価格の保証、買い手からの長期的コミットメントなどがあり、それによって実現できることとしては、労働者の権利確保や地域環境保護、持続可能な農業経営などが挙げられる。

<社会運動としてのフェアトレード>

フェアトレードは社会運動化してネットワーク化することが重要である。世界にはロンドンやサンフランシスコなど24カ国1,000以上のフェアトレードタウンがある。行政や企業、学校、メディアなどもこの運動に加わっている。

<企業セクターの取り組み>

企業セクターにおいても、グローバルブランドによるフェアトレード認証製品への切り替えへの動きがある。スターバックス社では、ヨーロッパで100%フェアトレードのエスプレッソを製品化している。そのほかに、ネスレ社、ベン&ジェリー社などでもフェアトレード認証製品を販売している。

<ケーススタディ-コンゴ民主共和国、アフガニスタン->

事例として、紛争に苦しんできたコンゴ民主共和国のコーヒー豆、アフガニスタンのレーズンを紹介する。コンゴ民主共和国東部のクヴ湖の紛争地域では、以前はルワンダへ密輸出するしか売る手立てが無かったが、英大手スーパーやNGO、DFID等が協働で技術支援や物流面、販売面で協力をし、市場へ流通させることに成功した。アフガニスタンにおいては、長年の紛争によりマーケットへのアクセスや生産性向上のための技術支援策が断たれていた。そこで、フェアトレードプロジェクトを実施することで、技術支援をおこなうとともに、最新のマーケット情報入手のための携帯電話サービスも提供し、高品質レーズンを良い値段で取引できるようになった。

今後は1つの品目を拡大するだけでなく幅広く品目を増やしていき、付加価値を高めていくことが重要である。

「社会投資で途上国と日本をエンパワー」

功能 聡子 氏 ARUN代表

<ARUN概要>

ARUNは日本の個人や企業から出資を集め、途上国経済の発展や社会的課題の解決を目指す社会企業家を現地で発掘し投資を行う機関である。投資家と投資先のコミュニケーションをサポートし、参加型社会的投資のプラットフォームを目指している。この社会的プラットフォームを通じて、途上国側では雇用機会の増加・人材育成を通じた貧困削減を、日本側では途上国へのより深い理解を生み出すことを目指す。

投資の対象は中小企業レベルを対象としている。個人や家族経営の小規模な企業はマイクロファイナンス機関が対象としており、また、規模の大きい企業については商業金融機関が対象としているが、中小規模向けの資金提供者や機関が不在という現状がある。商業金融機関にとっては、中小規模業者は財務諸表が未整備であったり物的担保がなかったりでモニタリングコストがかかり、リスクが大きいとみなされやすい。一方、マイクロファイナンス機関にとって中小規模業者は、必要資金規模が大きく、融資期間が長いことから敬遠されている。このような現状を踏まえて、ARUNは中小企業レベルを対象に投資を行っている。

<ARUN投資先>

現在、Sahakreas CEDAC(サハクレアセダック)、Arjuni International, Ltd.(アルジュニ)、Perfexcom(パーフェクスコム)の3つの社会的企業に投資している。

セダックでは有機農産物の流通・販売事業をおこなっている。農民グループから適正価格で有機農産物を買い取り、市場に流通させ、利益の一部を農民組合の自立的な農村開発活動に還元している。

アルジュニではヘアーエクステンションの製造・販売事業を行っている。パーフェクスコムでは人材派遣業や就学の機会を与えるために、農村学生に対する英語やパソコンのトレーニングを実施している。

<モニタリング>

ARUNは投資先の事業がもたらす社会的インパクトを評価する指標と、これを起業家や投資家と共有しコミュニケーションを深めていくための仕組みを構築している。この社会的成果のモニタリングは、投資先の現状把握や投資家との情報共有、ステークホルダーとの対話促進、そして事業の改善へと結びつけることを目的としている。

<ARUNの特徴>

以上を整理すると、ARUNの特徴として、現地での社会的インパクトの大きい事業への投資や、「寄付」ではなく「投資」による自立の促進、中小企業への投資を通じて地域経済の発展への貢献や、日本におけるソーシャルなお金の流れの創造などが浮かび上がってくる。今後の課題としては、「社会的」とはどこから来るものなのか、つまりインパクトの測定と評価を明確にしなければいけないということと、社会的投資を広めていくことが必要である。そのためにARUN LABでは調査研究やソーシャルビジネスコンペティションをおこなっており、アドボカシー的な活動にも積極的に取り組んでいる。

「復興とソーシャル・イノベーション」

服部 篤子 氏
一般財団法人DSA常任理事 CAC-社会実業家研究ネットワーク代表

<現場の課題(市民アクター、地域の視点)>

東日本大震災により自宅を離れている避難者が33万を超えていることからコミュニティの再構築が必要。また地域として高齢化、過疎化が進んでいるのでコミュニティのゴールと合意形成を目指す必要がある。失われた雇用に対しては雇用の創出が不可欠であり、同時に若者のリーダーシップをどう吸い上げ活かしていくかも重要である。

このように社会的・経済的問題が山積みの中で、ソーシャル・イノベーションの概念は解決に活かされていくのだろうか。

<ソーシャル・イノベーションのファクター>

ソーシャル・イノベーションの担い手としてアントレプレナーシップを持つ人々や組織が挙げられる。活躍の分野は技術やデザイン、公共政策など多岐にわたっている。このような担い手の目的は、新しい価値を提示し、社会の変化を促すことである。

これを復興の視点としてとらえてみると、担い手に関してはアントレプレナーシップを持った若者の夢をいかに実現させ、現地の人のモチベーションをいかに高めていけるかが課題となる。分野に関しても住環境の再生、商店街、産業復興、地域ケア、教育やエネルギー問題など複合的であり、限られたリソースの中で地域の資源を見直せるかがカギとなる。また、復興は長期にわたることからゴール設定をどのようにするのかも重要である。

<解決にむけた取り組み事例~合掌の家~>

解決への事例として、地域資源と地域の匠の技を活かした復興住宅がある。仮設住宅に地域の資源を使い、期間が経過した後にも住宅として再利用できる地域の匠の技を使った復興住宅である。これは、現地に大量にある国産材や耕作していない土地、多くの仕事を失った働き手、そして気仙大工という匠の技術があることから考えられた住宅である。これは資源を見直す動きから始まった。

<復興へ向けて>

ソーシャルとビジネスの両立を多様な担い手で実現していくことが必要であり、それには以下の2点が重要である。一点目はリソースを集めること。専門性、継続性のあるボランティアなどの人材や、市民ファンドやソーシャルファイナンスといった資金循環の促進が必要となる。二点目はアントレプレナーシップの醸成である。若手リーダーのサポートや企業と社会セクターとの連携、都市と地方の連携を考えていかなければいけない。

質疑応答・ディスカッション

<グローバリゼーションのソーシャルイノベーションに与える影響について>


デイグルマイヤ氏:企業間の激しい競争がソーシャルイノベーションにネガティブな影響を与えているかとの問いにはNOと答える。企業の努力がソーシャルイノベーションを次のステージに押し上げるものと考える。

<アクター間の協力に関して>

ブレットマン氏:パートナーシップの中で、用語の共通点が増えてきた。(開発効果などの言葉)お互いの役割や責任を明確にしておくことが重要であり、企業がNGOのような行動をしてもうまくいかないし、その逆もそう。お互いの専門性や価値観を活かしていくことが大切である。また、時間的な枠組みに現実的であることも重要。そのためにはオープンに対話していくことが必要である。

服部氏:復興は連携が進みやすい環境である。企業の中に志を持った人がいないと進まないが、そういう人が増えている。

<大学との連携について>

デイグルマイヤ氏:大学には、ケーススタディをおこない、実務家を育て、ソーシャルイノベーションを育てる役割がある。

<ピラミッドの底辺にいる人たちはどのように社会の変化に参加できるのか>

デイグルマイヤ氏:オンラインによる教育などにより、エリート層だけでなくより多くの人々に教育を広めることができている。

<若い世代に働きかけるのに効率的な手段とは>

デイグルマイヤ氏:若い世代は前の世代よりもソーシャル・ビジネスへの関心が高まっている。さらにインターネットの発展によりチャンスが広がっている。これをどのように行動に向けていくのかがカギとなる。

ブレットマン氏:マラウイの事例だが、農業従事者に携帯電話を持たせることでSNSとつながり、世界につながるようになった。ソーシャルネットワークの可能性は感じている。

<日本に期待するソーシャルイノベーションの形>

ブレットマン氏:日本には、途上国に対する社会的ビジョンを明確に示して取り組んでいる会社がある。資本主義は創造的に進化していく必要がある。日本企業のフェアトレードへの参加に関しては、他国の企業と同じである。イギリスでビジネスをしている日本企業の評判は高い。日本企業の土台はできていると感じている。

服部氏:日本企業が社会貢献をおこなう理由として、ブランド力向上、離職率の低減、投資効果などが挙げられる。契機はCEOが信念を持っている時や、企業が危ない時である。経営が悪化した時には業績を挽回しようとして新たな方策を模索する。

<企業との連携におけるボトルネックは>

服部氏:今日この場でお聞きになったことを必ず活かしていってほしい。情報発信していくことが重要。

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