(イベント報告)8/31持続可能な開発のためのハイレベル政治フォーラム(HLPF)2016 参加報告会

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8月31日(水)、持続可能な開発のためのハイレベル政治フォーラム(HLPF)2016報告会を開催しましたので、下記の通り報告致します。スピーカーやご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

HLPF報告会議事録(PDF)

共催:動く→動かす、一般財団法人CSOネットワーク
日時:2016年8月31日(水)16:00-17:30
会場:地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)

報告1:HLPF2016と市民社会
今田 克司 動く→動かす代表、一般財団法人CSOネットワーク代表理事
(プレゼンテーション資料:PDF)

7/11-20、ニューヨークにてHLPFが開催されたが、日本の市民社会から今日発表する3名、ユース2名が参加した。今日は日本の国内実施の話はしないが、SDGs市民社会ネットワークでも政府のSDGs推進本部が開催する円卓会議に向けて提言を取りまとめる準備をしているところ。今日はSDGsについての概説もしないが、SDGsにおいて国際課題と国内課題がどうリンクするのか、今後も発信していきたい。岡山でも今日、SDGsに関するフォーラムが行われていて、動く→動かすの関係者が出席している。

今回のHLPF10日間のうち最後の3日間が閣僚級のハイレベルセグメント。毎年SDGsをレビューする会合として開催される。テーマも決まっている。今回は「誰も取り残さないを確保する」というもの。

HLPFのポイントだが、昨年9月SDGs採択後の初の国際会議であり、モメンタム・勢いを維持している。グローバルデータ指標の議論が完結していないが、データ作りやモニタリングについては大変関心が高かった。Disaggregated Data(細分化されたデータ)について民間や市民社会の力を活用するという話が多かった。SDGs Business ForumやPartnerships Exchangeなどのマルチステークホルダーの関心の高さあり。日本の取り組みも発信していかなくてはいかない。

目玉はボランタリーレビューで、 22か国が自発的に手を上げ進捗状況を報告した。日本は入っていない。SDGsは国際的に見てもそれほど知られたものにはなっていない。日本に限らず、国連では盛り上がっているが外ではそうでもない。ようやくSDGs Action Campaignが開始されたところ。

グローバル市民社会の動きとしては、A4SD(Action for Sustainable Development)、Together 2030の2つのネットワークにだんだん集約されてきている。A4SDは提言を発表し、22か国の市民社会にSDGs実施に向けた課題を調査し、6項目にまとめた[1]。日本の文脈でも共通するものが多いと感じる。特に市民社会スペース制限に対する懸念は大きい。9.11以降のテロとの戦いで、先進諸国がそのレトリックを使って市民社会スペースを制限する傾向があり、それに倣って、途上国が市民社会への締めつけをする例が多く見られる。

日韓市民社会イベントを開催したが、趣旨としては市民社会XアジアXドナー国という観点でSDGsを使って国内・国際イシューをつなげる試みを紹介するものだった。韓国側で発表された取り組みとしては、KCSN(Korean Civil Society Network for SDGs)が立ち上がっており、市民社会の総和としてSDGs実施をモニタリングしていこうという機運が盛り上がっている。また、韓国のボランタリーレビューに対する市民社会のポジションペーパーを発表し、韓国政府の報告書を「国内政策をSDGsと照合したつぎはぎ文書」、「市民との十分な協議なしに作られた」等、批判的に検証している。

Eval SDGs(SDGs評価のイニシアチブ)サイドイベントにも出席した。SDGsの国際的な評価ネットワークが立ち上がっており、グローバル評価アジェンダが昨年11月に策定されている。SDGs実施においてデータとモニタリングの議論は盛り上がっているが、十分な評価の議論になっていないことに警鐘を鳴らしていた。SDGs評価は価値判断や学びを伴うもので、これを置き去りにしてはならないというもの。CSOネットワークもこのイニシアチブに参加している。欧州、米国、アジア太平洋の評価関係者とのネットワークに関わっていき、注視していきたい。

(質疑応答)

・評価について、最後の部分の意味がわからなかったので説明されたい。

・今田:SDGs自体は3層構造(目標、ターゲット、指標)になっているが、その指標のレベルで、統計データをどうやって集めるかの議論にとどまっているということ。それを分析し評価し、政策につなげるというサイクルにまで至っていない。

・韓国について。政府はボランタリーレビュー報告も出しているが、市民社会からは批判的意見もあったというところについて。韓国政府と韓国市民社会のお互いに対する前向きなコメントはあったのか。

・今田:前向きなコメントはあった。ドイツはよくやっていると思うが、ドイツのCSOに聞くとそうでもないというコメントもある。韓国は国を挙げてSDGsに取り組もうという姿勢を国外に対して大胆に示しているが、それは外向きの顔だという市民社会の批判もある。いずれにせよ、政府と市民社会がしっかり関係性を作って、お互いの信頼関係のうえに建設的批判を行っているという構図で、単なる外からの批判ではない。

・市民社会のスペースについて。原発関係でも会場が使えるところが限られてきている。今後、脱原発や安保法制の動きと一緒にデモや記者会見で訴えをしていくことはできるか。

・今田:その点は重要で、国際的な動きと呼応するもの。市民社会のスペースが制限されている実例があるのであれば、具体例を交えて訴えていくことが説得力を増す。SDGs実施指針においても、このテーマをしっかり入れていく方法は何かあるのではないか。

報告2:HLPF2016に参加して
堀江 由美子 公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン アドボカシー・マネージャー
(プレゼンテーション資料: PDF)

今田さんの補足と感想を述べたい。自分自身は2泊4日、実質1日しか参加できなかったという限られた日程だった。日韓市民社会イベントと他のサイドイベントに出席。データ、モニタリングに関するフォーカスに加え、脆弱なコミュニティの包摂、後発途上国の支援、市民社会の参加、民間セクターの貢献など様々なフォーカスがあった。フィンランドの政府主導で包摂性のある力強い取り組みは参考になった。

率直な印象として、「誰も取り残さない」が実現可能か疑問を持った。これを繰り返し連呼したところで達成できるものではないとの発言もあった。

そもそもHLPFはRio+20(2012年)に設立が決定されたもので、CSD(Commission on Sustainable Development)に代わるもの、画期的な役割を持たなかった。フォローアップ・レビューは交渉過程で非常にもめた分野であり、最終的に文言が緩められ、強固なモニタリングとアカウンタビリティのメカニズムはできなかった。国連事務総長のレポート、SDGsプログレスレポートが発表されているが、グローバルレベルのざっくりしたモニタリングで、分析にまで至っていない印象。成果文書(閣僚宣言)も2030アジェンダをなぞるもので新しい内容には乏しい。また、「フォローアップ&レビューに関する決議文」が、HLPFの7月29日にようやく採択され、今後のHLPFのモダリティが決められた。今後のHLPF(フォローアップ&レビュー)のテーマも決定された[2]

ボランタリーナショナルレビュー(VNR)は、拘束力はなく自発的に行われるもので、ピアプレッシャーによる各国の参加を目指す。一応レビューのガイドラインはあるが、決まったものではない。2016年は各国が頑張っていることを強調するものだったが、各国の市民社会がカウンターレポートで不十分な点を指摘していた。

HLPFはSDGs実施において政府へのプレッシャーを高める機会として活用することが必要。VNRへの参加への働きかけをすることが必要。市民社会としても各レベルでの連携を強化し、モニタリング・進捗報告の作成をして、世界に発信していくことも重要ではないか。

(質疑応答)

・実施手段というのは具体的に何か。

・堀江:特に目標17、アジェンダ2030のMOIの部分も含めてのレビューということ。

・日本の市民社会に求められる関与と連携については、今後の「動く→動かす」の方針ということか?国際レベル、地域レベル、国レベルの線引きが曖昧に感じる。また、企業やユースの顔も全然見えないが、是非呼びかけをして共同でナショナルレビューをやってもらいたい。

・堀江:ユースは2名参加し大活躍していたが、今日は都合のため不参加。企業やユースも含めて、あらゆるレベルのマルチステークホルダーの連携を強化し、イベント等の機会を使って働きかけを強めたい。

・各国のVNRは公開されているか。レベルとしてコミュニティが必要ではないか。国と言ってもどこまでのレベルに落ちていけばいいのか。

・堀江:VNRの各国の報告書はウェブに公開されているので参照されたい。国レベルの報告の中では、地域(コミュニティ)レベルに落とし込んで報告している国もあったので、そこも含めてレビューすることは必要ではないか。私自身、地方に住んでいて、どう関与できるか考えている。中央の推進本部から地方に対する発令が待たれるが、並行して地方にネットワークを持つ組織とも連携して直接自治体に働きかけられると良いのではないか。

報告3:SDGsに関する青年意識調査
永井 忠 創価学会インタナショナル(SGI)
(プレゼンテーション資料: PDF)

SGI平和運動局でSDGsを担当している。軍縮もそうだが、SDGsはなかなか分かりづらいので、意識啓発を頑張っているところ。今日は青年SDGs意識調査の結果を発表させていただきたい。SGIとしてはTogether2030にも参加している。オンライン意識調査は私たちとしても初めてだった。回答者は、日韓両国で350人と少なかったが、91%が20代。

SDGsについて知っているかを聞いたが、約半数が知らなかった。ニューヨークの会場では、これに対して意外と知っている方ではないかという反応もあった。

どのように知ったかという質問は、これが一番いい質問だったと個人的には思うが、友人を通じてという回答が多く、SNSが低い。

SDGsとMDGsの違いを知っているかという質問を設定したのは、MDGsの経緯を知っているのと知らないのとでは理解が違うので、入れたほうがいいとの外部の助言で入れたもの。多数が理解していなかった。

SDGs達成の取り組みについては、8割が重要であると回答。個人レベルでは目標3,4,5が多く、国レベルでは目標4,5,16が多かった。韓国国内では目標8(労働)というのが特徴的。

グローバルレベルで国がどの目標に取り組むべきだと思うか?という点では、日韓では大きく異なり、日本は目標1,2,6、韓国では17,16,8という結果。

全体を通じて回答率が低かったのは、個人レベルでどう取り組むかという質問で、国レベル、グローバルレベルの質問の方が多かった。まだ個人のレベルにまで落ちていないということではないか。

どのセクターが重要かという点では、両国とも「政府」だが、日本は続いてローカルコミュニティ、韓国は民間セクター。3位は両国とも教育機関と回答した。

「誰も置き去りにしない」ためにどのような政策と行動が必要だと思うかという記述式のアンケートでは、教育と回答した人が多かった。

実施した感想としては、データに関する関心の高さ。特に民間のデータは関心が高く、こういう調査があれば国連でも発表して欲しいと言われた。政府のデータもあるが活用されていないことも多い。CIVICUSのデータのイニシアチブもあるので、参照してほしい。データは力であり、レジティマシーを与えるものと感じた。

(質疑応答)

・質問2のSDGsをどう知りましたか?では、日本は教室と答えているのが興味深い。創価大学でSDGsを扱う授業があるのか?

・永井:創価大学だけではなく、他の大学生の回答も多い。そのうえで、日本については、調査実施期間が短ったため、統計分析としてのサンプリング数が少なかった。従って、全体の傾向を表すには十分ではなかったことが次の課題となると思う。一方で、韓国は十分な数が集まったように思う。

全体を通しての質疑応答、意見交換

IMG_1736・国連での次のステップはどう考えているのか。HLPFでは強固なアカウンタビリティのメカニズムにならないのだとして、国連総会でも扱っていくなどで、拘束力を高めることをするということをしていくのか?

・国レベルのレビューでの優先課題は、グローバルなものと少しずれていると感じる。国際レベルの議論を国内レビューでもするのか?企業セクターも関与していくことになるが、どう関与していくのかよく分からない。

・言いたいのはムーブメントの重要性である。周りの教養のある人であっても、誰もSDGsを知らない。MDGsの時はホワイトバンドがあったが、SDGsを広めていく歌など、工夫することが重要ではないか。

・2-3週間前、アジアのネットワークNGOの会議があったが、SDG16だけを取り上げた。人権については、universal periodic reviewという仕組みがあるが、政府はディフェンシブになってしまい、人権状況を改善できていない。SDGsはこれを打破するものになるのではないかとの期待が高かった。また、SDGsの国内実施について、MDGs時代の援助効果の議論はどうなってしまったのか。どういう原理原則を継承していけばいいのか。

・例えば長野県にとっては海のサステナビリティと言ってもピンとこない。地域の多様性についてどういうアドレスをするのか、今後地域ベースで考えていく必要がある。

・今田:開発・環境・人権というくくりでいえば、開発はMDGs以来、国際的な取り決めとしての努力目標型で約束を守らせようというもの。SDGsもその後継で拘束力はない。人権(国連人権理事会を中心にしたジュネーブ型)は国家の責任を強調するもの、環境は気候変動枠組みのような条約型が基本線。SDGsはもちろん環境や人権の視点がはいっているが、基本的には開発型スタイルで「目標を守ろう」という打ち上げに意味があるが、拘束性は弱い。しかもマルチステークホルダーの努力を強調しているので国家の責任は薄まっている。なので国連総会を含め成果文書や宣言は出すとしても、基本的には強い拘束力の取り決めにはなりにくい。指標の話は、国レベルで設定、モニタリングが中心になり、グローバル指標の役割はあいまい。今後のグローバル進捗報告で、指標をもとにした達成率等を示すやり方がどのように展開するのか、現段階ではよくわからない。援助効果については、今は開発効果と言われているが、パリ、アクラ、釜山を経て、枠組み自体、Global Partnership for Effective Development Cooperationは生きている。HLPFの際もサイドイベントをやっていた。しかし、SDGs全体の動きのなかでそれほど話題にはなっていない。

・堀江:冨田さんのご質問については、SDGs Progress Reportでは付録が付いていて、目標に沿って各国のデータベースができているし、今後もフォローされる。しかし、グローバル指標は国レベルで全てフォローしなくてもいいと理解されているので、何を優先化し、国レベルではどんな指標を策定していくのか。そこにインプットしていくことも重要。さらに、地域レベルの指標設定があってもいい。地域レベルで抱える課題は異なる。ムーブメントの話があったが、歌やダンスはYoutubeにも上がっているが、皆さんに知れ渡るような仕掛けを今後考えていくことが必要。

・永井:A4SDのウェブサイトにアクセスいただきたい。NYでも議論のポイントはそこにあったと思う。ツールはあるが、伝え方が下手ではないかという話が多かった。UNICなども取り組んでいるが、市民レベルでなかなか浸透していかない。国内実施に取り組む上で、若い人も取り込みながら理解を深めること。地球憲章インタナショナルとの共同でアプリを現在作成中で、11月に英語版を発表する予定である。地球憲章インタナショナルのユースにもこの製作に関わってもらっている。アプリはインスタグラムのように写真等を投稿するもので、世界地図でわかるようになっている。

・黒田:今後もSDGsに関してはこうした場を設けていきたい。

以上


[1] (1)市民社会のスペース制限に対する懸念、(2) 国レベルの市民社会の効果的なコーディネーションの必要性、(3) SDGs実施の市民社会によるモニタリングとレビューの必要性、(4) 各国政府が主導する意味のある意見交換プロセス、(5) 各国政府における、SDGs実施を戦略的に主導する機関の存在、(6)SDGs実施の各段階における市民社会の関与
全文は http://action4sd.org/tools-resources/ に公開されている。

[2] 2016「誰一人取り残さないために」(目標:全て)、2017:「貧困の解消と変化する世界における繁栄の促進」(目標: 1,2,3,5,9,14)、2018: 「持続可能でレジリエントな社会への変革(目標: 6,7,11,12,15)、2019:「人々のエンパワーメントと包摂性・平等性の確保」(目標: 4,8,10,13,16)、4年を1サイクルとして、4年に1度は各目標をレビュー、実施手段は目標17と共に毎年レビューする。

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