(参加報告)第12回アジア太平洋持続可能な消費と生産ラウンドテーブル(APRSCP)

09.20


第12回アジア太平洋持続可能な消費と生産ラウンドテーブル(APRSCP)

APRSCP幹部、EU、UNEP、カンボジア環境大臣も出席した。

APRSCP幹部、EU、UNEP、カンボジア環境大臣も出席した。

7月12-13日、カンボジア・シェムリアップで開催された「第12回アジア太平洋持続可能な消費と生産ラウンドテーブル」(The 12th Asia Pacific Roundtable for Sustainable Consumption and Production: APRSCP)に参加しましたので、報告致します。

本年度よりCSOネットワークでは、地球環境基金の助成を得て、「持続可能な公共調達(Sustainable Public Procurement: SPP)慣行の促進に向けた調査および指針の策定とその普及」活動に取組んでいます。初年度の活動の一つとして、国連環境計画(UNEP)の推進する10 YFP(The 10 Year Framework of Programmes on Sustainable Consumption and Production Patterns:「持続可能な消費と生産10年計画枠組み」) SPPプログラムに参画しながら、国際的に議論されているSPP政策と各国の先進的取り組みを広くレビューしています。

この10YFPが推進する持続可能な消費と生産(SCP)をアジア太平洋における推進を担う枠組みの一つが、APRSCPです。APRSCPは、事務局をバンコクに置く、アジア太平洋地域でSCPの促進に取り組む国際機関、NGO・非営利団体等のネットワークです。マルチステークホルダーの対話によって、アジア太平洋地域内でのSCP関連の域内協力促進やプロジェクト等のベストプラクティスの共有を図るフォーラムで、1997年よりこれまで11回の会合を重ねています。今回の会合では北東アジア(中国含む)、東南アジア、豪州、南アジア(インド含む)の国々の関係者と、UNEP等の国際機関や欧州の約300名の代表者、専門家が参加しました。

第12回APRSCPはカンボジア環境省共催、IISR(International Institute for Scientific Research)、UNEP等が協力しました。未来の持続可能性のために共に行動しよう」というテーマを掲げ、会合の目的としては、①アジア太平洋地域におけるSDGs達成に向けて、SCP関連イニシアティブ、Green Growth、グリーン経済、持続可能な開発に関する取り組みや進捗、得られた教訓を共有する、②国連の10YFPロードマップのアジア太平洋における展開と実施に向けた連携の構築、③SCPの戦略、手法、アプローチ(調査、市民の意識向上、能力強化、革新的ファイナンス、モニタリング評価含む)についてのスケーリングアップに際しての経験と教訓の共有、の3つが掲げられました。最終的な成果として、SDGsを通じたSCP実施拡大をどのように可能にするかについての提言をまとめた、「SCPアジア太平洋ロードマップ2016-2018」が採択されました。

会合にはSCPに取り組むアジア各国の専門家、政府関係者、国連機関等の代表300名規模が参加した。

会合にはSCPに取り組むアジア各国の専門家、政府関係者、国連機関等の代表300名規模が参加した。

持続可能な生産と消費(SCP)は、SDGsにおいては目標12に掲げられ、特に日本、中国、インド等を含むアジア地域のSDGs実施において大変重要な目標となっています。会合では、経済規模(GDP)に対する資源消費量が世界でもっと高いことが何度か指摘され(つまりアジアは資源効率において世界で最も悪い地域)、UNEPもSDG12達成の鍵がアジアであり、SDGs指標の国別進捗をモニターしつつ、10YFPの各プログラムの実施を積極的に支援する考えを表明しました。

UNEPアジア太平洋地域事務所のイサベル・ルイス代表は、「アジア太平地域は世界経済の約半分を占め、消費も増加しており、SCPにおいて最も重要な地域。今後3年間のSCPロードマップを作成してきたが、SDGsの実施とリンクしている。貧困削減も重要課題であり、各国の政策一貫性が重要となるが、必要な能力強化を進める必要がある。世界で資源を最もインテンシブに消費しているアジア太平洋で、ロードマップの成功は重要課題だ」と述べました。

また、UNEP同事務所で資源効率・SCPプログラムを担当するジャネット・サレム氏は、「UNEPでも各種ツールキットを提供している。アジア太平洋全体では対GDP比資源消費量が他地域に比べて非常に大きく、今後の成長により増えることになる。一人当たりにしても15トンper capitaが基準ラインだが、これを超過している国が多く、大きな課題である。アジア太平洋地域におけるMaterial Intensityは1990年では2.0キロ/ドルであったが2015年現在で3.1キロ/ドルと増加傾向にあり、他地域の約3倍になっている」と発表しました。

分科会「SCP政策とエコラベル、持続可能な公共調達」での発表者。タイ、フィリピン、韓国、インド、ベトナムの取り組みを報告。

分科会「SCP政策とエコラベル、持続可能な公共調達」での発表者。タイ、フィリピン、韓国、インド、ベトナムの取り組みを報告。

SPP/エコラベルについては、韓国、フィリピン、タイ、ベトナム、インド、ブータンの取り組み事例が報告されました。韓国はKEITI(韓国環境産業技術研究院)のSPP担当者が報告し、グリーン公共調達のGHG排出削減インパクトに関する韓国の経験について分析を披露しました。「公共調達は国の目標やSDGsに資するものであるべきであり、現在の公共調達の実施(価格競争方式)は社会環境のコスト、ライフサイクルコストを考慮したものに移行するべき。持続可能な製品の製造能力についてSMEへの支援をする必要がある」と指摘しました。ブータン環境省からは、2009年にSWITH-Asiaの支援を得て新しい公共調達政策を導入したが、導入にかかる財政上の負担や民間企業側の対応力不足、環境省の権限が多少に比べて弱いことなどの課題が指摘されるとともに、能力強化の実施、モニタリング評価の実践、公共放送での周知徹底などの普及努力等の取り組みも共有されました。

次回の第13回は、来年10月にマレーシア、クアラルンプールにて開催される予定です。

【参考リンク】
12-APRSCP-Logo
第12回アジア太平洋持続可能な消費と生産ラウンドテーブル(APRSCP)ウェブサイト
「SCPアジア太平洋ロードマップ2016-2018」

 

分科会(Roundtable)一覧

1. 持続可能な食料システムと農業
(a) 食料の安全性、供給、質
(b) 食料安全保障:持続可能な農業のプラクティス
2. 持続可能な都市と生計:グリーンな経済成長と社会的包摂
(a) エネルギー効率と持続可能なインフラと輸送
(b) 持続可能な土地利用、環境管理、都市開発(特にSDG11達成に向けて)
3. 持続可能な観光
(a) 観光政策における持続可能な消費と生産(SCP)の主流化の現状と域内の実施
(b) アジア太平洋地域における官民パートナーシップを通じた持続可能な観光政策の競争力強化
4. 教育と持続可能なライフスタイル
(a) 教育と情報の啓発
(b) 低炭素なライフスタイル:現状から未来のライフスタイルへの転換
5. SCP政策とエコラベル、持続可能な公共調達(SPP)の実施
(a) エコラベリングと持続可能な公共調達(SPP)
(b) 環境認証と製品情報に関するSCP政策

特別セッション
(1) 持続可能な開発2030アジェンダとSCPの実施におけるSMEの役割:SDGsにおけるビジネスセクター・SMEの役割とニーズ
(2) 第5回LCA AgriFood Asia:SCPに向けた動き
(3) アジアにおけるSCPの統合的一部としての廃棄物管理と循環型経済

(報告:リサーチフェロー 高木 晶弘)

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