日本における民間開発支援(PDA) 2009年度 | ||
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億円 | 10億USD | |
PDA | 3,089 | 3.31 |
助成財団 | 53 | 0.06 |
NGOs | 431 | 0.46 |
民間企業 | na(44) | na(0.05) |
ボランティア | 2,605 | 2.79 |
大学 | na | na |
宗教団体 | na | na |
2011年度、当財団が大阪大学国際公共政策研究科NPO情報センターの協力のもとおこなったPDAの量的把握調査では、この分野で先駆的な役割を果たしている、米国ハドソン・インスティテュート、グローバル・プロスパリティ・センターの調査手法に基づき、PDAを助成財団、NGO、民間企業、ボランティア時間、大学、宗教団体の6分野に分け、そのうち既存の入手可能なデータの存在する助成財団、NGO、ボランティア時間について集計をおこなった。
結果は右図のように、助成財団によるPDA資金が53億円、NGOによる資金431億円、そしてボランティア時間を金銭換算した資金が2,605億円となり、3分野の合計は3,089億円となった。
民間企業によるPDA資金については、既存のデータより、44億円という額を参考として提示しているが、この金額や調査方法については後述するとともに、今後独自調査をおこない、より実態に近い金額の把握を目指したい。
OECDに提出されているPDA資金規模は、2009年度498億円、2010年度607億円となっており、これらの数字と比較すると、今回の調査により把握できた額ははるかに大きなものとなった。特に国際協力に関わるボランティアの経済価値が大きく、この額はその年の米国のボランティアの経済価値(30億ドル)と比べても遜色はない。今回、データの不足により、宗教団体および大学によるPDA額は把握できなかったが、日本の場合、米国に比べ経済規模はそれほど大きくないことが予想される。
助成財団に関する調査について
助成財団については、公益財団法人助成財団センターの協力を得て、当センターが1987年以来毎年おこなっている「助成団体データベース」に関するアンケート調査の中の、海外への助成金、および外国人に対する奨学金についての2009年度の数字をいただき、調査の元データとした。
2009年版特例民法法人に関する年次報告書によれば、事業種類の中で「助成・給付」をおこなっている財団法人は3,802団体、社団法人637団体、社会福祉法人67団体であり、日本における助成団体総数は、推定で4,506団体とされる。
当センターでは、①個人や団体がおこなう研究や事業に対する資金の提供 ②学生、留学生等に対する奨学金の支給 ③個人や団体の優れた業績の表彰と賞金等の贈呈をおこなう団体を「助成型財団」と定義し、従来からの調査対象団体約1,700団体と、総務省の公益法人データベース中、事業種類に「助成・給付」「借与」「表彰」等を含む約1,000財団に調査表を送り、2009年度は1,290団体から回答を得ている。
センターからいただいたデータでは、各団体の助成事業が、研究助成、事業助成に区分され、それに加えて外国人に対する奨学金の助成件数と助成金額がリスト化されていた。このデータに、リストに含まれていなかった規模の大きな団体(トヨタ財団、上原記念財団等)の数字を追加し、途上国以外への助成金、奨学金を、OECDが公表している「DAC List of ODA Recipients, Effective for reporting on 2009 and 2010 flows」をもとに除外した。更に、政府資金のダブルカウントに配慮し、公的補助金の収入総額に占める割合を海外事業費から差し引いた金額も参考のため算出した。 公的補助金割合が大きかった団体は、ジャパンプラットフォームという国際緊急援助を専門とする団体で、収入の約80%が外務省からの補助金となっていたため、海外への事業助成金の約2割のみを計上する数字も参考のために提示する。
助成団体から途上国に流れる開発支援にかかわる資金(2009年度) | ||||||
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団体数 | 助成件数 | 助成金額 (¥1,000) |
助成金総額に おける割合(%) |
補助金を除外した 助成金額(¥1,000) |
助成金総額に おける割合(%) |
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研究助成 | 42 | 384 | 213,084 | 3.2% | 213,084 | 4.1% |
事業助成 | 30 | 374 | 2,352,427 | 34.9% | 856,003 | 16.3% |
留学生奨学金 | 149 | 5,680 | 4,182,289 | 62.0% | 4,182,289 | 79.6% |
総計 | 221 | 6,438 | 6,747,800 | 100.0% | 5,251,376 | 100.0% |
NGOに関する調査について
国際協力NGOセンター(JANIC) がウェブ上に掲載している「国際協力NGOダイレクトリー」をもとに集計をおこなった。「国際協力NGOダイレクトリー」とは、以下の①~③の事業をおこなう非政府・非営利の市民組織の自主的な事業概要報告を全国規模で収録したものである。 ①開発協力:開発、人権、環境などの地球規模課題に対して、資金・技術・物・人等の支援。②教育・提言:①の課題達成のための情報提供・教育・政策提言。③ネットワーク:①②の活動をおこなう団体間の連絡調整やネットワーキング。 掲載基準としては、①市民主導であること。②意思決定機構があり、責任の所在が明確で、問い合わせに随時対応できること。③自己財源を有すること。④情報公開をおこなっていること。⑤1年以上の実績があること等が掲げられている。掲載団体数は2011年10月の調査時点で403団体であり、この中にはNGOに対して助成をおこなっている団体も含まれていた。
調査の手順としては、ダイレクトリー上の各団体の海外事業費(人件費込)を計上し、未記入の団体については各団体のウェブサイトの該当金額を計上していくようにした。多くの団体が2009年度の事業費を報告していたが、それ以外の年度の報告が掲載されていた団体については、調べられるものについては2009年度の数字を、調べられないものについては、ダイレクトリー掲載の数字を用いた。ダイレクトリーに未掲載で資金規模の大きい日本ユニセフ協会、日本赤十字社の海外事業費にあたる数字は追加した。
また、海外事業費が1,000万円以上の団体については、公的な資金とのダブルカウントに配慮して、収入に占める公的補助金、公的委託金の割合を除外した金額も参考のために算出した。公的補助金、公的委託金については、民間助成金、民間委託金と区別なく計上している収支報告書も多かったため、①補助金・委託金を除外しない金額。②明らかに公的補助金とわかるものの割合のみ除外した金額。③補助金・助成金から明らかに民間助成金とわかるものを除いた金額の割合のみ除外した金額。④明らかに公補助金+公的委託金とわかるものの割合のみ除外した金額。⑤補助金・助成金・委託金から明らかに民間助成、民間委託とわかるものを除いた金額の割合のみ除外した金額。の5つのパターンを提示する。
NGOから途上国に流れる開発支援に関わる資金(2009年度) | ||||||
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団体数 | 海外事業費 (¥1,000) |
海外事業費 (公的補助金 除外) (¥1,000) |
海外事業費 (公的補助金+ 助成金除外) (¥1,000) |
海外事業費 (公的補助金+ 公的委託除外) (¥1,000) |
海外事業費 (補助金・助成金+ 公的委託除外) (¥1,000) |
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海外事業費 1000万円以上の団体 |
115 | 43,874,868 | 42,657,272 | 41,712,387 | 42,123,965 | 40,858,471 |
海外事業費 1000万円以下の団体 |
167 | 442,537 | 442,537 | 442,537 | 442,537 | 442,537 |
海外事業費等の データのない団体 |
123 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
総計 | 405 | 44,317,405 | 43,099,809 | 42,154,924 | 42,566,502 | 41,301,008 |
民間企業に関する調査について
民間企業による途上国への開発援助資金としては、社団法人日本経済団体連合会(経団連)社会貢献推進委員会と1%クラブが会員企業を対象としておこなっている「社会貢献活動実績調査」の2009年度の調査結果より参考となる数字を使用した。経団連では企業による社会貢献活動の実態を明らかにするために、1991年より毎年、前年度の社会貢献活動実績調査を実施している。2009年度の社会貢献活動実績に関する調査では、経団連会員企業、1%クラブ法人会員あわせて1306社に質問表を送り、367社から回答を得ている。このうち、社会貢献活動費の回答が含まれる「支出調査」の部分には348社からの回答があった。また、連結で回答した企業が45社あり、45グループの回答には約3900社の連結対象会社が含まれている。社会貢献活動支出額とは、各種寄付(金銭寄付、現物寄付・施設開放・従業員派遣等を金額換算したものの合計)、自主プログラムに関する支出、災害被災地支援関連支出の合計である。
アンケートに答えた348社の社会貢献活動支出額合計は1533億円で、このうち、国際交流・協力分野の支出は3%、44.26億円である。ただ、国際交流・協力分野には、日本国内での国際交流事業が含まれること、また、環境や災害被災地支援等の他の分野にも途上国に流れる資金が含まれていることから、この数字はあくまで参考の数字と考えなければならない。今後、独自の調査等を用いて正確な数字を把握していく必要があると考えて現在準備中である。
また、企業のおこなっている途上国向けビジネス(BOPビジネスまたはインクルーシブ・ビジネス)や社会的課題解決に資する投資を謳っているインパクトインベストメント等についても今後調査をおこなっていきたいと考えている。
ボランティア時間に関する調査について
日本ファンドレイジング協会発行の寄付白書2010より、2009年度、国際協力に関わったボランティア活動の経済価値を計算した。白書によると、日本のボランティアの総経済規模は10兆5003億円で、そのうち、国際協力・交流分野は2.5%、額にすると2605億円となる。これは、この分野でボランティア活動をしたのべ時間1億2585万時間に、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」の国際協力・交流分野に該当する職業・産業(政治・経済・文化団体職員)の平均賃金2,070円を乗じて算出したものである。ただし、国際協力・国際交流分野の活動から、発展途上国向けの国際協力だけを取り出すことができないため、この額は上限値と解釈すべきである。