エレン・マッカーサー財団インタビュー

サステイナビジョン

 Ⅰ. インタビュー

日時:2015年3月25日(水)11:00~12:30

場所:Ellen Macarthur Foundation Office
   The Sail Loft, 42 Medina Road, Cowes, Isle of Wight, PO31 7BX

面談者:Ellen Macarthur Foundation
   Jocelyn Bleriot, Executive Officer, Lead, Communications and Policy
   Lenaic Gravis, French Content and Partner Relations

Ⅱ. 内容

Ellen Macarthur Foundation Office

エレン・マッカーサー財団は、英国ワイト島を本拠地とし、英国チャリティ・コミッションに登録する団体で、サーキュラー・エコノミーへの移行を加速させることを目的に2010年9月に設立された。同財団はサーキュラー・エコノミーのフレームワークを通じて、ポジティブな未来を構築するため、現世代を鼓舞することを目的としている。

1.      エレン・マッカーサー財団の主要エリア

①    教育(Education)

エレン・マッカーサー財団は、主に大学との協働を行っている。パイオニア大学、ネットワーク大学との協働で、それらの大学が、大学院のプログラムでサーキュラー・エコノミーを提供し先進的に教えるとともに、大学内でサーキュラー・エコノミーの実践も行っている。

パイオニア大学は次の4校:

ネットワーク大学は次の12校:

シュミットーエレン・マッカーサー・フェローシップ・プログラム

Entrance

Entrance

またシュミット・ファミリー財団(米グーグル前CEOシュミット・エリックが創設)とのコラボレーションで、シュミットーエレン・マッカーサー・フェローシップ・プログラムを行っている。これは提携の大学のフェローや教授とともにサーキュラー・エコノミーについてのプロジェクトを実施するもので、このプロジェクトは、学生が中心でサーキュラー・エコノミーに関する開発を行い、プロジェクトからの学びを大学内で実践している。毎年6月にロンドンでサマースクールを行い、参加大学の教授陣と生徒が、1週間もの間、他大学そして専門家とも協議を行っている。またこの期間には、サーキュラー・エコノミーの基本的な研修も行われている。シュミットーエレン・マッカーサー・フェローシップ・プログラムからは、生徒に対して奨学金(贈与)を支給。

参加校は、上記のパイオニア大学4校、ネットワーク大学12校、また、ワイルドカード大学として毎年不定期だが参加する大学がある。

ワイルドカード大学は、2014年:HEC大学(フランス)、2015年:ロイファナ大学リューネブルク(Leuphana University Lüneburg:ドイツ)、リバプール大学(英国)、サンクトペテルブルク大学 (Saint Petersburg State University:ロシア)。

国際バカロレアとの協働

エレン・マッカーサー財団は、各国政府と高校に関する教育も計画している。エレン・マッカーサー財団自体は、組織として小さいので、効果的にサーキュラー・エコノミーを広げることができる方法を考えている。国際的に広がりがあり、世界からの興味を引き、世界の他の国々にもより効果的に影響を与えることができるという理由から「国際バカロレアIB:International Baccalaureate)」との協働を行うことが今後好ましいと考えている。

②     分析(Analysis)

エレン・マッカーサー財団は、サーキュラー(円形)モデルの経済的潜在力を定量化し、この価値を捉えるアプローチの開発のために活動している。ナレッジパートナーである、マッキンゼー·アンド·カンパニーと協働し、エレン・マッカーサー財団は、サーキュラー・エコノミーへの移行を加速するために論理的根拠を強調した、経済レポートをシリーズで作成している。同財団は、サーキュラー・エコノミーが、発展するフレームワークであり、主要なサーキュラー・エコノミーの研究者と学者を含む国際的な専門家のネットワークとともに活動することによって、その理解を広げていくことができるとしている。これら外部の専門家が、財団が運営する主要なプログラムとレポート、リソース、ケーススタディや出版物への貢献している。同財団の分析チームは、サーキュラー・エコノミー関連の法令の改訂についても掲載している。

CE100メンバーは全てを閲覧することができるが、一般公開はその情報の中でフィルターをかけたもののみがされている。

Ellen Macarthur Foundation Reception

Ellen Macarthur Foundation Reception

③     企業(Businesses)

主要ファンディングパートナーとしてルノー、ユニリーバ、シスコシステムズ、キングフィッシャー、フィリップスがいる。それぞれの企業内では、サーキュラー・エコノミーのプロジェクトを実施しており、エレン・マッカーサー財団としては、社内セミナーや研修などをこれら企業の従業員に提供している。さらにオープン・ダイアログやワークショップを頻繁に実施し、サーキュラー・エコノミーのプロジェクトの効果を確認するとともに、プロジェクトの分析も実施している。またパートナー企業は、グローバル企業で、各産業のリーダーとして非常に重要な役割を担っており、サーキュラー・エコノミーのイニシアティブを世界的規模で導入することができている。

サーキュラー・エコノミー100

Workspace

Workspace

サーキュラー・エコノミー100(CE100)は、グローバルのパートナー企業が参加するプラットフォームであり、それら企業がサーキュラー・エコノミーに興味を持ち推進している。メンバーは企業のみならず、公共団体、地域組織や、大学、小規模の起業家が含まれている。

それぞれの企業に対するエグゼクティブ・トレーニングの実施、年2回CE100の全メンバー向けサーキュラー・エコノミーのワークショップ(2日間)の開催。現在は産業・分野を横断的にカバーする10の作業部会があり、これらの作業部会で得た結果を1年1回1日のワークショップで発表している。

また、「CE100 Summit」を年1回1日のイベントとして例年6月に開催している(2015年は6月23日、場所:ロンドン)。これは前述のサマースクールの期間内に合わせて開催され、専門家、実務担当者が、1年間に何を実施してきたか、また最近の開発内容について発表するものである。これはCE100メンバー限定で、公開イベントではない。

CE100の全てのメンバーが集い、ネットワーキングもCE100の一部として機能し、様々なアイデアを交換できる良い機会となり、多くのコラボレーションが発生しているという。このネットワーキングの機会には、普段話すことがない違うセクターの企業と会話を交わすことができる。例えば、繊維企業と自動車企業が素材の交換について意見を交わすことができるなど。このようにメンバー間のコラボレーションがこのCE100の中では実施されており、とても具体的なイニシアティブとなっている。プロジェクトやリサーチプロジェクトとして実施されたり、収入源となるプロジェクトであったり、ジョイントベンチャーの場合もある。提供される情報は非常に具体的なものになっている。

また伝統・歴史の古い産業ほど、自分達のやり方に固執する傾向があるが、これらのやり方に変化を与えることができるものとしても機能している。これらの産業のリーダー企業が参加することができる円卓会議を実施し、CE100の作業部会と対話させる。例えば、食料品産業のリーダー企業が、作業部会との対話により、具体的にサーキュラー・エコノミーのシステムをどのように機能させるのか、その中で従業員がどのように役割を果たすのかに焦点をあてている。

メンバーシップについては、CE100のメンバーの募集はもうすぐ打ち切られ、メンバーを最終的に固定する予定である。現在は95団体がメンバーで残りの5つの席が埋まった後、その数は今後増やす予定はない。それ以上にメンバー数を増やすことは、財団として充分な管理ができなくなり、適切なサービスを提供することが困難になる。財団は、メンバーとより深い関係での協働を行うことを目指しているので、CE100 をこれ以上大きくすることは考えていない。

このCE100で培った模範的な事例については、エレン・マッカーサー財団のウェブサイトにて掲載し公開しているが、全てではない。掲載については企業の意向にもよる。このCE100は純粋にコミュニケーションのプラットフォームとして機能し、行動を起こすことを目的としたものであり、マーケティングに使用されるものではないとしている。CE100を推進する上で重要なのは、企業がビジネスの中でサーキュラー・エコノミーの原則に沿って行うことである。これは企業の中核としてビジネスとして行われるべきものとしている。

Disruptive Innovation Festival

またDIF(Disruptive Innovation Festival)というサーキュラー・エコノミーのトレンドを扱い4週間(2014年)のイベントを開催している。専門家、若手起業家、CEOなどによるオンラインによる発表とセッションにおける最近のサーキュラー・エコノミーについてとそれに関連するトピック(例えばバイオミミクリ―などの開発)を伝えている。2015年は2年目になるが、11月2日~22日までの3週間を予定し、197か国へそれぞれの言葉と違うタイムゾーンに提供する予定としている。これはエレン・マッカーサー財団のネットワーク大学を通じて広げていく。

Ⅲ. Q&A

MDGs、SDGsについて

国連主導のグローバルプロセスであるSDGsを中心に持続可能性アジェンダを進めようとしていることについて、エレン・マッカーサー財団はどのように意識しているのか?また、エレン・マッカーサー財団は、持続可能な消費や持続可能な生産のようなSDGsの要素についてどの程度関連性と相乗効果を持とうとしているのか?

エレン・マッカーサー財団は、国連主導のMDGs、SDGsなどに直接関与していないが、国連の環境プラットフォームとは話をしている。国家資源プラットフォーム、国際資源プラットフォームとも同様に話をしている。我々はサーキュラー・エコノミーのアイデアがMDGsなどに貢献することに非常に興味を持っている。限りある資源を使うことにおいて、発展途上国にて多くのサーキュラー・エコノミーを導入している事例もある。特に公のプロセスではないが、国連内の別のステークホルダー(UNEP, UNIDO)、国際資源パネルなどと様々な対話を行っている。

我々はサーキュラー・エコノミーのコンセプトを伝えることに興味がある。MDGsは国際機関に、より関係がある。MDGsやSDGsは、より願望を含むゴールを掲げているが、どのようにそれを達成したらよいか具体的なことは挙げられていない。我々が言えるのは、いくつかのゴールは、企業のサーキュラー・エコノミーの実践を通じて達成できるということである。例えば欧州委員会などは、産業の成長は、企業のサーキュラー・エコノミーの実践を通じて行われるので、それらを実践できるような法令整備を実施していくと述べている。そして、これらは企業が実施するというところに降りてくるので、企業がサーキュラー・エコノミーのコンセプトを正しい方法で実施していくことになる。しかしながら、企業自体がMDGs、SDGsの目標に到達するのにサーキュラー・エコノミーの実践をしていると言ったりはしない。我々は、国際機関に対してロビーイングもしてないが、MDGsやSDGsについて確認し、自分達としては正しいフレームワークの作成を行う中で、サーキュラー・エコノミーのコンセプトが、国際機関などに良い形で見つけられれば良いと考えているし、CE100の企業にMDGsやSDGsについて固執してサーキュラー・エコノミーを実施することを促したりはしていない。

持続可能な消費と生産についてであるが、持続可能な消費を促していくためには、持続可能な生産が必要となる。その仕組みがないのに消費者に持続可能な消費を実施しろといっても難しいからである。まず企業が持続可能な生産を行うシステムを作り、そして持続可能な消費を実施できる下地をつくり、消費者に促していく必要があると考えている。この点においては、持続可能な生産の方が、持続可能な消費よりも重要となる。企業が通常のやりかたで生産をしていて、消費者にだけ持続可能な消費を実施しろというのは正しい方法とは言えない。

サーキュラー・エコノミーを拡大する要素

エレン・マッカーサー財団が(企業の優しい持続可能性のアジェンダ、環境保護/自然保護)などの通常予想されることを越えて、サーキュラー・エコノミーの動きの範囲を拡大しようとする上で重要な要素は何か?影響を拡大するために主要なアジェンダとスケールアップする戦略は何か? (アイデアとして、CSOネットワーク·ジャパンは、「コミュニティの力」を測定ツールとしている)

エレン・マッカーサー財団が推進する3つの柱が、重要な要素となる。また欧州委員会の中にもサーキュラー・エコノミーのコンセプトを推進する考えがあり、その情報を提供するサポートも行っている。また環境DGが出したレポートにもサーキュラー・エコノミーが触れられていて、関心が高いので、エレン・マッカーサー財団としては、欧州委員会と対話を重ねている。しかしながら、エレン・マッカーサー財団としてロビーイングを行うということはしていないし、他の国際機関や政府へアプローチをするということは、3つの柱に入れていないことでもわかると思うが、我々の主要な要素としては掲げていない。

本年発行が予定されているCSRに関するコミュニケーションペーパーについても、エレン・マッカーサー財団として情報提供という部分で貢献している。しかし、その前の欧州資源効率化プラットフォームではメンバーとなっているので、その形成の際にすでに多くの貢献をエレン・マッカーサー財団としては行っている。

CSOネットワークとのコラボレーションについては、CSOネットワークのことをエレン・マッカーサー財団としてもより理解する必要がある。その可能性についてはあると考えている。我々は、特定のプロジェクトをパートナーの為にNGOとの連携は行っていないが、正式で具体的なプロジェクトを行う際のパートナーとの連携を通常は行っている。

日本政府、日本企業との関わりと今後エレン・マッカーサー財団が期待すること

我々エレン・マッカーサー財団は、日本政府、環境省や通産省との対話、とくに循環経済や資源に関する方針について、また3Rの取り組み、特にどのように資源の枯渇に対応しようとしているのかについても興味がある。また日本の循環型経済と我々の推進するサーキュラー・エコノミーのコンセプトとの差異についても興味がある。また正式なプロジェクトを通じて組織と協働することにも興味がある。言語のバリアが、政府や企業に情報を伝える障害となっていることも認識しているので、その点においても何か協働することができないかとも考えている。

日本には、サーキュラー・エコノミーのコンセプトを実践している事例があり、特に日本企業の持続可能な生産やデザインの事例などの情報を共有ができれば喜ばしい。

今までに通産省にフランス大使館などを通じてアプローチしようとしたがうまくいかなかった。日本政府の通産省、環境省で日本型循環型経済を推進している方とインタビューなども今後実施できると良いと思っているので、その可能性があるか探って欲しい。またそのステークホルダーがどのような人達で何が行われているのかなども知りたいと思っている。

これらの組織とコミュニケーションを取る際に、日本語でのコミュニケーションがとれることも我々としては非常に興味がある。

多様な言語での情報共有と和訳について

他の言語での情報共有については、フランス語で、フランスで実施されている事例を翻訳して発行している。代表のエレン・マッカーサー自体がフランス語に堪能で、単独で世界一周最短記録をもっていたこともあり、フランスでも有名人であることもフランス語での発行を後押ししている。また、その他ではスペイン語でも発行しており、また中国語での発行、またブラジルにも焦点を当てている。またロシア語でも少し提供している。また日本語での情報提供にも興味があるが、我々自体のファンドに限りがあるため日本語まで手が回らないのが実情である。

これらの多言語への翻訳は、エレン・マッカーサー財団自体の資源と財源が限られていることがあり、その多くは大学のネットワークを使用して行っている。そして現在行われているネットワーク大学のコラボレーションによりボランティアで実施されている。例えば、ネットワーク大学のメンバーであるTongji Universityの生徒や教授陣が中国語への翻訳を行い、その品質についても確保している。

エレン・マッカーサー財団の所有する資料などを英語から日本語へ翻訳することでのサーキュラー・エコノミーの推進を図ることに非常に興味がある。もしそのようなプロジェクトを日本側で立ち上げることができる場合には、事前にどのような組織が実施するのかなどの協議がエレン・マッカーサー財団との間で必要となるので、その点についても考慮して頂ければと思う。

付録

<サーキュラー・エコノミーCE100メンバー>

Global Partners

1.Kingfisher
2.Philips International
3.Unilever
4.Cisco Systems Ltd
5.Renault France

Regions

6.Walloon Ministry for Economy
7.Danish Business Authority
8.Scotland
9.Cd2e – region Nord-Pas-De-Calais
10.Taiwan CE Network
11.Catalonia/Accio

Business

12.Delta Development Group
13.Rabobank
14.DHL
15.Dragon Rouge
16.Granta Design
17.H&M
18.Antea Group
19.Apple
20.Aquafil
21.Arup
22.Marks and Spencer plc
23.Veolia Environment
24.Vodafone
25.National Grid
26.Nespresso
27.Royal BAM Group
28.Royal DSM
29.SABMiller
30.SGW Global
31.Steelcase
32.Suez Envionnement
33.Tarkett
34.IBM
35.IKEA
36.De Lage Landen
37.WRAP
38.Orange
39.Midal Cables
40.Ragn-Sells
41.Chervon
42.Wermuth Asset Management GmbH
43.Vestas Technology R&D
44.Desso BV
45.Wm Morrison Supermarkets plc
46.BT Group plc
47.The Coca Cola Company
48.Ricoh UK Ltd
49.Hewlett Packard
50.SunPower
51.UBM Built Environment
52.CHEP/Brambles
53.PGGM
54.Michelin
55.Schneider Electric

Emerging Innovators

56.FLOOW2
57.Recoup
58.Closed Loop
59.Aero Farms
60.Turntoo
61.iFixit
62.Innoverne
63.Micromidas
64.The Agency of Design
65.ZeroBin
66.Anaerobic Digestion and Biogas Association
67.National Physics Laboratory
68.Selfrag
69.Ecovative Design
70.Environcom England Ltd
71.TerraCycle
72.Lithium Balance A/S
73.Envotherm A/S
74.bio-bean Ltd
75.Stuffstr
76.Replenish

Universities

77.Cranfield University
78.University of Bradford
79.University College London
80.TU Delft
81.Rochester Institute of Technology

他14団体

合計95団体が登録(2014年3月25日現在)

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