「IFOAM有機世界会議」に参加して ―アジアの活発な有機農業運動―

NPO福島県有機農業ネットワーク理事長
菅野正寿

<ブータンの有機100%宣言に感動>

2014年10月13日~15日にトルコの古都イスタンブールの会議センターで開催された「IFOAM有機世界会議」に参加した。大会テーマ「有機の橋をかけよう」には、地元トルコが世界に向けてドライフルーツや乳製品をはじめ有機生産物の展開をすすめる力が込められていた。世界80余国900人が参加し、特に、中国、韓国、インド、カンボジア、ブータンなどアジア諸国の積極的で活発な活動に目を見はった。IFOAMアジアの事務局長を務める韓国の女性は日本も加入するよう勧めていた。次回3年後の開催候補地に向けて、インド、ブラジル、中国、ロシアが派手なロビー活動をしていた。特に中国は積極的なアピールをしていた。結局次回開催地はインドに決まった。インドは生産者中心の大会をすると宣伝していた。この世界会議の参加者は農民が少なく、環境団体、流通団体、大学研究者などが多く感じられた。

2014年10月 IFOM有機世界会議にて、原発事故後の福島における有機農業の取り組みを伝える「ふくしまからのアピール」を行いました。 ブータンの有機100%宣言に感動2

アジア諸国の中で私が最も注目したのはブータンである。講演の中でブータンの農林大臣が、「2020年にはブータンは有機農業100%めざす」と言ったのは圧巻であった。この世界会議に農林大臣が参加し宣言をしたことが素晴らしい。(残念ながら日本からの政府関係者の参加は、東南アジアで有機農業推進を担当するJICA職員のみであった。)

2013年11月にインド南東部の山岳地帯アラク地方を訪れたときの稲作や家畜、コーヒー豆栽培は家族農業、集落農業の姿であった。この小規模、家族農業、集落の共同の力、有機農業の力こそをアジアの中で連帯していくことが大切だと感じた。

<「ふくしまからのアピール」と持続可能な社会>

有機世界会議に参加した大きな目的は2011年3月11日の東日本大震災と原発事故の現状を世界に伝え、この教訓をアピールすることであった。さらに2014年8月に福島で開催された、「福島原発事故から3年よみがえれ!福島“生きる”“耕す”有機農業のつどい」での全国の有機農業者の「原発と有機農業は共存できない」「再生可能エネルギーへの転換」を訴えることであった。

大会2日目の午前に「ふくしまからのアピール」を訴えた。通訳はCSOネットワークの黒田かをりさんにお願いし、厳粛にしっかりと伝えることができた。特に放射能で土壌は汚染されたけれども肥沃な有機的な土壌ほど放射性セシウムは土中に吸着、固定化されること。この土の力、有機農業の力が再生の光であることを伝えたかった。さらに放射能に汚染された福島だからこそ環境保全型の農業の果たす役割と持続可能な価値、多くの市民の皆さんの支援を受けてあらためて都市と農村の共生の大切さを訴えた。スピーチの後、大変素晴らしかったと数人から握手を求められ手応えを感じた。

大会3日目にはIFOAM本部のそばに特別に「ふくしまブース」を設けていただき、ポスター、福島県有機農業ネットワークのチラシ、アピール文を配布することができ、多くの方に足をとめて手にとっていただいた。ルーマニアの方からは、「ベジタブルオイルのトラクターの技術を教えてくれ」という質問もあった。

エーゲ大学と有機農場1 エーゲ大学と有機農場2

トルコで反原発運動をしている女性活動家のプナールさんにお会いすることができ、「チェリノブイリの原発事故のとき、トルコ北東部にも放射能汚染が広がったが政府はなんら実態調査をしなかった」と聞いた。さらに日本の技術でトルコにも原発2基建設の計画が進められようとしているとのこと。「トルコから見ると汚染された福島で農業は不可能と感じていた。話を聞くことができて良かった」との言葉が印象的だった。

4日目はIFOAMの総会であった。福島から一緒に参加した福島県有機農業ネットワーク理事の大河原海さん、福島大学特任准教授の石井秀樹先生の3人でアピールをすることができた。大河原さんは震災後に農業に就き、野菜の他にリンゴ栽培もはじめ、市民放射能測定所も自宅に立ち上げ、積極的に福島のPRに努めている若手のホープである。福大の石井先生は震災後福島大学に赴任し、農協、農家と共に土壌測定をはじめ実態調査に福島県内を駆けまわり、福島県農産物の検証を発信している。3人の発表の後には大きな拍手が湧いた。

この総会ではIFOAMジャパンから出された、「反原発・再生可能エネルギー促進に向けて行動を起そう」という動議が採択された。

このIFOAM有機世界会議に参加して、貧困、飢餓、気象変動、環境と土壌の悪化、生物多様性の保護など世界を取り巻く様々な課題に対して、「有機」が大きな鍵であり、「持続性」がキーワードであるということが見えてきた。有機にかかわる草の根の運動をさらに広げていくことが求められていると思う。ブータンが有機100%宣言をしたように、世界情勢を捉え判断する政府の姿勢が問われていると感じる。原発事故を起こした日本だからこそ、脱原発と再生可能エネルギーに転換をし、舵を切る政府の決断が問われている。戦争に突き進み多くの犠牲を負った責任から憲法9条がうまれたように。

IFOAM有機世界会議に参加するにあたり、IFOAMジャパン理事長の村山勝茂さんには大変お世話になった。ふくしまからのアピールの時間枠を入れ込むために本部との調整にお骨折りをいただき感謝している。また事務局の渡辺悠さんには現地でのホテルや交通手段の手配、会場での調整などご迷惑をおかけした。あらためて感謝したい。

<エーゲ大学と有機農場>

総会の後の2日間は新潟大学の野中昌法教授のご紹介でエーゲ大学と有機農場を視察することができた。

エーゲ地方のイズミール空港で待っていたのは、かつて新潟大学に留学していたアンカラ大学のジャン先生と新潟大学からアンカラ大学に留学している鈴木一輝さんであった。このお二人にはレンタカーでの案内はじめ、エーゲ大学との調整など本当にお世話になった。

エーゲ大学では農学部長さんにお会いし、部長室にて福島の現状を伝えることができた。福大の石井先生からの提案でエーゲ大学と福島大学との連携の話もすすみ、とても歓迎していただいた。その後農学部長さんの福島の大事な問題との計らいで、土壌学の学生30名に、「ふくしまからのアピール」を福島からの3人で発表する機会を与えていただいた。またエーゲ大学のホームページにも掲載していただくことになり、大変感謝している。

エーゲ大学と有機農場1 エーゲ大学と有機農場2

午後は、13の家族が共同経営をする大規模な有機農場を視察した。ここは、トムブルさんという方の農場で、家畜、穀物、ざくろ、加工などテーマパークを思わせる広さである(数か所の農場で約500ha)。畜産と穀物、そして加工の循環システムには驚いた。搾乳の牛の糞尿をバイオマスプラントにて液肥と堆肥化する装置が備わる近代化されたシステムと同時に、ざくろの特有成分を生かために代々伝えられてきた足踏み方式による伝統的な技法も取り入れられていた。安全や衛生面には、ITを駆使した最新技術が使われており、守るべき良いものと革新的なものがバランスよく共存していた。

共同型の農場経営では、各家族に給料が支払われるほか福利厚生も充実しているとのことであった。また敷地内には博物館があり、トルコでの古くからのオリーブ栽培の歴史などがわかりやすく展示されていた。ここに大規模とはいえ持続可能な農業の循環のしくみをしっかり組み入れている姿に感動した。

最後の夜はトルコ料理を囲み、交流をして気さくなトルコの方々の人柄を感じることができた。

エーゲ大学と有機農場3

菅野さん「ふくしまからのアピール」

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