地域密着中小企業事例2

地域とともに継続できる農業経営を目指す

有限会社伊万里グリーンファーム

http://www.imari-gf.com/

佐賀県西部に位置する伊万里市の有限会社伊万里グリーンファームでは、「土づくり・人づくり・夢づくり」にこだわり、農家の常識にこだわらないさまざまな試みで地域とともに継続できる農業経営を目指し、革新的な取り組みを進めている。「農業を継ぐ気は全くなかった」と語る代表取締役の前田清浩氏に事業継承からのこれまでの経緯や地域への思いを伺った。

ヒアリングから見えてきた気づき

地域に密着した中小企業の持続可能性向上に繋がる取り組みのポイント・必要とされるサポート

・前田氏の信用金庫で10年務めた経験が、事業運営、現在の金融機関を含めた地域との付き合いにも活きている。自社以外の業界の経験があることがその後の経営に有効なものになっているケースは他社のヒアリングからも見受けられる。

・農業は内向きになってしまう傾向が多いところがあるからこそ、情報収集、ネットワーキングを積極的に行っているという。外部から得た情報を自社内できちんと共有することも重要であり、次世代へのスムーズな事業継承のためにも重要である。

SDGsとの連関

農業を行っている企業組織としての従業員の雇用における配慮および取り組み、第6次産業化、商品の生産における安心・安全への対応の取り組みなど有限会社伊万里グリーンファームの事業はSDGsのゴール5、8、12、17などの達成に貢献する取り組みである。

地域とともに継続できる農業経営を目指す
 有限会社伊万里グリーンファーム

◆創業からこれまで
土づくり・人づくり・夢づくり

代表取締役の前田清浩氏は、高校を卒業後、地元の金融機関に就職。当時は農業を継ぐつもりはなかったと語る。父親の体調不良により、事業の継承を決意。事業継承時から経営の安定、従業員の雇用の安定をするためにきちんと稼ぐことを意識し、作業の効率化と規模拡大を行いながら法人化や部門、部署などの担当を明確にした組織化に取り組んだ。地域とともに継続できる農業経営を目指し、農業の欠点(価格決定権、経営の安定など)を改善するためにカットネギの販売や乾燥ネギの加工品などにも進出した。現在、業務用だけでなく家庭にも需要が拡大しているカットネギだが、当初は長さなどの規格外や市場単価変動による原価割れで出荷しない未利用品のネギの有効活用に着目して始めた事業であった。現在では、カットネギ、加工品とも消費者ニーズとも合致し、主力商品となり、自社で適正価格を設定できることから経営の安定と同時に、フードロス削減にも繋がっている。さらなる展開として海外への販路拡大も視野に入れている。

◆従業員に対する取り組み
農家ではなく農業を行っている企業組織に

現在、社員13名のほか、パート、アルバイトとして約10名雇用しており、そのうちの大部分を女性が占めている。女性を積極的に雇用していることから2017年には「農業の未来をつくる女性活躍経営体100選」にも選出されている。

同社は正月三が日を除いてほぼ出荷等で稼働をしている。しかし、年中休みのない農家ではなく、農業を行っている企業組織として、従業員には週休2日制を徹底し、安心して働ける職場づくりを行っている。

◆環境に対する取り組み
安全安心な商品を食卓へ

同社の自社工場では、伊万里市内9か所の60棟以上のハウスで栽培したネギをカットネギ、乾燥ネギ、ドレッシングやスープなどさまざまな商品に加工している。安全安心な商品を、美味しいネギを食卓へとの思いから、世界的な衛生基準でもある「HACCP(※)」認証へ向けた体制として社内横断の取り組みとしてHACCPチームを作り、改善に取り組んでいる。

※HACCP:「Hazard(危害)」「Analysis(分析)」「Critical(重要)」「Control(管理)」「Point(点)」という言葉の略語で食品を製造する際に安全を確保するための管理手法。食品の製造・出荷の工程で、どの段階で微生物や異物混入が起きやすいかという危害をあらかじめ予測・分析して、被害を未然に防ぐ方法を指す。

◆地域・社会に対する取り組み
伊万里への愛着とともに

「子どもたちにもっと伊万里に愛着を持ってもらいたい。伊万里グリーンファームの事業には上流から下流に流れる水など環境が大切であり、地域とともにある。」と語る前田氏は、地域のさまざまな役員を兼務している。二里町まちづくり推進協議会の会長や地元のボランティア団体では、地元の小学生を7泊8日間の宿泊体験塾など青少年育成や河川の草刈りなどの環境保全や町の花火大会やお祭りに関する活動にも従事している。伊万里のご当地グルメづくりにも地元の飲食店や観光協会とも協働し、取り組んでいる。最近では、地域農産物の商品開発や販路開拓など地元のJA伊万里との連携や全国からJAバンクの新入社員研修先として、同社に受け入れるなどの取り組みも行っており、地域への愛着心と佐賀県農業法人協会の副会長を務め若手農業者の育成など次世代の農業従事者を育むことに力を入れている。

◆今後の展開
地域とともに継続できる事業経営を目指して

前述した「農業の未来をつくる女性活躍経営体100選」WAP認定(日本農業法人協会)だけでなく、「地域未来牽引企業」(経済産業省)や「佐賀農業賞(先進的農業経営部門)最優秀賞・農林水産大臣賞」を受賞するなど、先進的な取り組みがさまざまな形で評価されているが、前田氏は「色々と表彰をいただいたが、たまたまという感覚。それぞれの活動も地域貢献もこれからの社会に必要だからやってきた。地域貢献度に連動した制度など地域に対しての意識改革に繋がる仕組みがあると地域発展と企業発展が両立できるような中小企業支援をしては良いのではないか。」と語り、地域とともに継続できる事業経営を目指している。

(ヒアリング実施日:2019年7月9日 ヒアリング協力:株式会社Green prop)

企業情報

会社名 有限会社伊万里グリーンファーム
会社設立日 1991年(1963年創業)
代表取締役 前田 清浩
本社所在地 佐賀県伊万里市二里町八谷搦926番地2
事務所、工場 佐賀県伊万里市二里町大里乙562番地
資本金 1,950万円
事業内容 ・農産物、畜産物及び水産物加工及び販売
・食品、清涼飲料、果汁及び調味料の仕入れ、加工輸出入及び販売
・農産物、畜産物及び水産物を活用した飲食の提供に関する事業
・インターネットによる各種情報提供サービス事業
・前各号に付帯する一切の事業
従業員数 24名
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