地域密着中小企業事例4

地域に密着した企業として、世のため人のため価値ある未来を拓く

有限会社谷田建設

http://tanida-eco.co.jp/

昭和48年に建設業の土建業として創業。その後、時代の変化や社会のニーズから産業廃棄物への取り組みを開始し、平成元年に有限会社谷田建設を創設。「地域の困りごとや困っている人を助ける仕事を生業として地域に貢献していきたい」と語る代表取締役社長の谷田政行氏に、創業からの事業の変遷や、従業員の育成、地域への思い、次世代に託す覚悟などについてお話を伺った。

ヒアリングから見えてきた気づき

地域に密着した中小企業の持続可能性向上に繋がる取り組みのポイント・必要とされるサポート

・地域密着企業と大学との共同調査・研究は、事業の発展に研究開発を必要とする企業側と、研究対象やその社会への応用・貢献を必要とする大学側両者の思惑がマッチする双方にとってwin-winの関係と考えられる。共同調査・研究の多くが、人的ネットワークをきっかけとするもののようであるため、そのような関係を創出する仕組みが地域にあることで、より多くの共同調査・研究が生まれるのではないだろうか。

・谷田氏の話の中で、新しい従業員が短期間で退社したとことがあったという話があった。職場内に同世代の仲間がいなかったことが原因の一つだったのではとのことだった。お話を伺った他の企業でも若い世代の新入社員は少数であった。地域に若い世代の働き手が少なくなる中で、一企業を超えた、地域としての若い世代のための交流や研修の機会があると、職場への定着に繋がるのではないだろうか。同世代で、悩みや学びを共有し、地域の中で人材が育成されるような仕組みについても考えていければ良いと思った。

・谷田氏の「中小企業支援が単発のものになっているのではないか」というコメントにあるように、単年度の支援を超えた継続的な支援が求められていると思われる。

SDGsとの連関

廃棄物処理におけるリサイクル製品の開発・販売、従業員自身の自己実現を目的とした人材育成、CO2削減などの環境配慮への取り組み、地域のお困りごとへの対応の事業化など、有限会社谷田建設の事業は、SDGsのゴール8、12、13、14、15、17の達成に貢献する取り組みである。

地域に密着した企業として、世のため人のため価値ある未来を拓く
 有限会社谷田建設

◆創業からこれまで
安定的な雇用の提供を目指し廃棄物処理業に着手

昭和48年に先代が建設業の重機屋として創業。当時は『日本列島改造論』の影響から、建設業界に勢いがあり、創業当初は建設業を主力としていた。農業県であった佐賀県では、農地の区画整理の需要が高く、それが創業のきっかけとなった。
2代目となる谷田政行社長が29歳の頃、農地整備の仕事の将来に不安を感じ、当時はまだ少なかった産業廃棄物業に取り組み始め、有限会社谷田建設を創設した。農地整備の仕事は、田植え後、稲刈りまでが閑散期となるため、従業員の安定した雇用の観点から課題を感じており、年間を通じて操業可能な廃棄物処理業に魅力を感じたという。谷田氏が地元工業高校の建築科の出身で、地元の建設業に従事する同級生より、廃棄物処理に関する要望を複数聞いたことがヒントになった。

◆従業員に対する取り組み
谷田で働いたら独立できる、という社風を

現在、従業員は35名(男性27名、女性8名、平均年齢47歳)。業務上必要となる免許や資格取得のサポートや、変形労働時間制を実施し、週40時間勤務を厳守するなど、従業員の能力の向上や働きやすい環境の整備に取り組んでいるが、採用には課題を感じているという。「採用に際しては、なかなか人が集まらないという現実があります。従業員が不足気味の状況の中で人を育てていくことの難しさを感じています。これまでは社長として従業員を辞めさせないことが大切と思い、厳しい指導はせず大目に見ることもありました。しかし、それでは従業員のためにはならないことに気づきました。従業員にもそれぞれの夢があり、その夢を叶えることがその人にとっての幸せであるならば、独立した時に独り立ちできる人間に育てることこそが大切だと思うようになりました。谷田で働いたら仕事を覚えられ、独立できるほどの実力がつくという社風を創っていきたいですし、それこそが谷田の財産と言えるような会社を創りたいと考えています。」と会社を超えた人づくりの文化を創出したいと語った。

経営理念には、「世のため人のために尽くし豊な未来を拓く」を掲げ、いかなる時代であっても、主体的に考え、前に踏み出す人を育てたいと話す。「事業継承においては事業のバランスを大切にしつつ、現在のルールを変えることも必要であると考えています。重要なことは、古くからの従業員にも新たなルールづくりに参画してもらい、必要性や目的をしっかりと伝えること。従業員の理解とコミュニケーションが企業の発展に繋がっていくと信じています。決断力がより問われる時代になっています。任せた以上は、徹底的に後継者を信じることがこれからの自分の課題と考えています。」と後継者となる長男で現在専務である谷田将拓氏に託す思いを語った。

◆環境に対する取り組み
廃棄物を循環することを生業に

「自社の存在価値は、廃棄物を循環活用し、CO2排出の削減や資源の枯渇を抑制していることです。」と谷田氏は語る。同社では、木チップを燃料化し、CO2の発生を抑制、建設汚泥から再生土を製造販売し環境破壊を緩和、また、瓦を路盤材に活用し、太陽の照返しによる道路アスファルトの温度上昇を抑制するなど、循環型社会の構築に資するさまざまな取り組みを行っている。建設廃棄物のリサイクルについては、JICAを通じ、ブータンから同社の手法や技術に対する興味関心が寄せられ、今後、現地へ谷田氏が趣き協力を模索する予定である。

◆地域・社会に対する取り組み
地域の‘困った’をサポートしたい

急激な人口減少・高齢化が進む地域の中で谷田氏は「地元に残された高齢の方たちの‘困った’を谷田建設はサポートしていきたい。新たな取組みとして遺品整理業を考えています。地域の課題に向き合う地域に密着した企業でありたい。」と語る。

佐賀大学のほか、長崎総合科学大学の環境学科など大学との共同研究にも積極的に取り組んでいる。佐賀大学とは太陽光パネルのリサイクルに関して共同研究を行っており、長崎総合科学大学とは自社の最終処分場の水質調査およびマイクロプラスチック排水調査を実施し、最終処分場の安全性の確認とともに科学的知見の蓄積に貢献している。

◆今後の展開
地域的な活動でSDGs達成に貢献したい

既存の中小企業支援に関して、「単発的な支援となっていないだろうか。単年度だけで必ず良い数字が出せるとは限らないので、企業が生み出そうとしている社会的な価値を評価していただき、継続的・段階的に支援を行って頂けるとありがたい。」と長期的視点に立った支援の形を希望した。

SDGsへの貢献については、「SDGsを地域の取り組みとして捉え、地元企業や地元のさまざまなネットワークと連携し地域の活動として行えれば、もっとSDGsに貢献できるようになるのではないか。2030年には佐賀県がSDGsの達成に日本で1番貢献した取り組みを行っている県になっていたいですね。」と地域内のさまざまな連携を通じてのSDGs達成への貢献に期待を込めた。

(ヒアリング実施日:2019年7月11日)

企業情報

会社名 有限会社谷田建設
会社設立日 平成元年
代表取締役 谷田 政行
本社所在地 佐賀県佐賀市大和町大字久留間3180-4
資本金 500,0000円
事業内容 ・一般土木建設業
・解体業
・産業廃棄物処理業
・遺品整理事業
・古物商
従業員数 35名
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