現場の人たちから学ばないと、評価はできない

一般社団法人参加型評価センター 代表理事
田中博さん


Q1:あなたが発展的評価研修に参加したのは、どういう思いやきっかけがあったからですか?

私は、これまで参加型評価の専門家として、主に国際協力分野でNGOのスタッフや受益者の人々と一緒に評価を実施してきました。DE研修に参加したのは、発展的評価と参加型評価との間にはどのような共通点や相違点があるのだろうという関心があったからです。加えて、国内のNPOの皆さんを知りたい、つながりたいという思いも強かったですね。

 

Q2:研修中やその後を含め、発展的評価を実践してみてどうでしたか?評価者としての手ごたえや団体側の反応、変化などがあれば教えてください。

発展的評価の特徴の一つに、NPOに長期間伴走しながら助言する点が挙げられると思います。私の専門の参加型評価はプロジェクト期間の中間や終了時に、一定の期間を設けて評価するのが一般的です。この研修は、講座で学びながら実習としてNPOに伴走するという形式でしたが、NPOの動きに合わせて半年間じっくり伴走するやり方は、新鮮ですし面白かったですね。

参加型評価と同様に、ステークホルダーの関与を重視するのも発展的評価の特徴だと思います。実習では、地域づくりを行うNPOの皆さんが、評価の全プロセスに関与する中で自ら気づきを得て、改善に向けモチベーションがどんどん上がっていくのを感じました。自ら課題に気づき、すぐに動ける「柔軟な姿勢」を持っているNPOが、発展的評価を十分に活かせるのではないかと思います。今回実習で伴走したNPOはそうした素質が十分備わっていたので、よい結果になったのだと思います。

 

Q3:評価者として団体にかかわる時、あなたが一番大切にしていることは何ですか?その理由は?

NPOなど団体のスタッフや受益者を信じることです。私は彼らが外部からの支援のみに依存することなく、自らの力で事業を改善し、イノベーションを実現できると信じています。この信念は、ネパールでの農村開発や評価活動の積み上げから得たものです。支援者や評価者の中には、受益者など現場の人々は「弱者」であり、自らの手で生活改善を成し遂げることは難しいという先入観を持っている人もいます。でも私は、一定のサポートさえすれば、人々が自発的にプロジェクトを改善できることを知っています。

なぜなら、例えば開発途上国の農村において、村のことは村人自身が一番知っています。ですので、国内外を問わず、現場の人たちから学ばないとどんな活動も評価もできない。経験を積めば積むほど、そう思わざるを得なくなりました。私が団体と信頼関係を築く時は、この姿勢が土台となっています。ただ一方で、評価者として関係者と「馴れ合い」にならないことも大切ですので、そのバランスに注意しています。

 

Q4:NPOなどの事業者は、良い評価や伴走支援にめぐり合うためにどうすればよいと思いますか?

NPO自身が、評価を実施する際に、その目的や事業の性質を掘り下げて考えれば、自ずと「良い専門家、ふさわしい専門家」が見えてくると思います。評価には様々な目的や手法、特徴があり、それぞれに専門家が存在しています。旅行をする際、何のために行くのか、どこへ行きたいか、そこで何をしたいのかを自らが分かっていないと、行き先も交通手段も決められませんよね。

現時点では、NPOに評価の知識がまだまだ浸透していないし、苦手意識からかNPOが評価者を選ぶという発想があまり見られません。でも、ぜひ皆さんに知ってもらいたいのは、評価を通じて活動を改善し、目指すミッションに近づいていくことは、やはり楽しいということです。私はこれまで、NPOなど事業者の皆さんが、当初は評価に乗り気でなくとも評価をやってみて「結果的にやってよかった」と喜ぶケースをたくさん見てきました。ぜひ皆さんには食わず嫌いはせず、評価にチャレンジしてほしいと思います。

 

(聞き手:事務局 清水みゆき)

DE人物万華鏡

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