CSOネットワーク 提言&コラム

インタビューシリーズ「CSONJな人たち」Vol.1 梁井 裕子

投稿日:2021/05/07
カテゴリー: CSONJな人たち

CSOネットワーク(CSONJ)を取り巻く人たちをご紹介するインタビューシリーズ「CSONJな人たち」第1弾は、サステナビリティコミュニケーターの梁井裕子です。プログラムアソシエイトの山本が、梁井さんのこれまでと今後についてインタビューしました!

――担当事業を教えてください。
企業のサステナビリティ・CSRの推進に関わる事業をメインに担当しています。対外的には企業などを対象にした講演、執筆活動等を行っており、SDGsやCSR、ビジネスと人権をテーマにしたものが多いです。自主事業としては、現在、中小企業の持続可能性向上に関する調査・プログラム開発も担当しています。
市民社会という立場から国や自治体とも関わっています。昨年10月に日本政府が策定したビジネスと人権に関する国別行動計画の策定に向けては、CSOネットワークが副代表幹事団体として関わっている、ビジネスと人権市民社会プラットフォームと連携し、様々なステークホルダーとの対話・連携を行いました。プラットフォームでは現在も引き続き、ビジネスと人権に関する理解を促進する活動や提言等に取り組んでいます。また、さいたま市のCSR・SDGs推進に関する制度の委員も務めています。

――そもそもCSRやビジネスと人権などに関心が向いたきっかけは何でしょうか。
もともと、広報ツールや様々な文献を翻訳などを通してローカライズする中小企業で働いていましたが、業界構造や働き方などに言葉にできない「モヤモヤ」を感じていました。そんな中でリーマンショックや東日本大震災が起こりました。会社も社会全体も不安定な状況に置かれ、企業のあり方や自分にできることを改めて考えるようになりました。明確に答えがでないまま出会ったのが、ある企業のCSRレポート制作の仕事でした。震災後で、企業のCSRに対する意識が大きく変わろうとしている時期でもありました。ISO26000が策定され、少しずつ広がりつつある頃です。このレポートの制作が、CSR:企業の社会的責任に向き合い、人生における仕事の位置付けや社会における企業の役割について、客観的にも自分ごととしても考える機会となりました。その時に、私が以前に企業で働く中で感じていた「モヤモヤ」を解決するのは、CSRやサステナビリティだったことに気が付きました。この気付きが現在のキャリアにつながっています。こうした経験があるので、今関わっている企業の方々が当事者として感じている気持ちも理解できますし、そうした気持ちを大切にしていきたいと思っています。

ビジネスと人権フォーラム (ジュネーブ、2016年)にて
GCNJ初めてのビジネスと人権フォーラム参加ツアーの企画を担当しました。

――その後、どのような経緯でCSOネットワークに入職されたのでしょうか。
前職の、国連グローバル・コンパクト(※)の日本事務局である、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)で、CSR、ビジネスと人権などへの理解や関心が深まっていた中、CSOネットワークに出会いました。CSOネットワークの中期ビジョン「Vison 2020」がちょうど発表された時期で、策定時のプロセスや問題意識を丁寧にまとめ大切にしていた点や、社会の変化に機敏に対応するアジャイルな組織として持続可能な社会づくりに貢献するという点などに共感し、また、このような組織であれば、これまでの私自身の様々な経験を活かしつつも、さらに新たな広がりを作れるのではないかと思い、入職することに決めました。

(※)国連グローバル・コンパクトとは、1999年の世界経済フォーラムにおいて、当時国連事務総長であったコフィー・アナンが企業に対して提唱したイニシアチブである。グローバル・コンパクト(GC)は企業に対し、人権・労働権・環境・腐敗防止に関する10原則を順守し実践するよう要請している。

――サステナビリティコミュニケーターの肩書をお持ちですが、これはどのようなものでしょうか。
サステナビリティに関する理念・目標と実践をつなぐ、橋渡しをするものという意味の肩書で、自ら設定したものです。企業をはじめとした様々な方の活動とSDGsやビジネスと人権に関する指導原則をはじめとしたサステナビリティに関する理念の橋渡しをすることに貢献できればと思っています。
これまで複数の一般企業で勤務経験があり、その際に感じた、企業がCSRを実践することの構造的壁や従業員への意識浸透の難しさなどを踏まえながら、現在の立場からサステナビリティを軸に情報と課題を発信していくことで、様々な方の持続可能な社会づくりへの活動の後押しができればと思っています。

――コミュニケーション、という言葉が梁井さんの現在の活動ととてもしっくりきます。
活動の方向性を決める主体はあくまで企業や自治体のまま、サステナビリティ実践への橋渡しをするイメージです。これはCSOネットワークのあり方とも通じています。

――コミュニケーションを取る中で気を付けていることはありますか。
自分という枠を越えて、大きな視点からコミュニケーションを取ることを心がけています。「つなぐ、伝える、ひろげていく」というCSOネットワークのキャッチコピーは、CSOネットワークの存在をわかりやすく表していると感じており、自分自身の活動においても意識しています。正しいからといって理論などを企業側に押しつけても次につながらないので、相手の立場からもCSOネットワークの主張を考え、視点を往復することで効果的なコミュニケーションにつなげています。また、CSRやISOなどの「用語」が重要なのではなく、活動の中で実践していくことが重要であるということを伝えながら、自分自身も常に本来の意義に立ち返ることを意識しています。

2020年2月の講演風景
こちらの講演以降、2020年度はほとんどがオンライン講演でした。

――講演などの際、特に伝えたいと思っていることは何でしょう。
新しい用語を覚え新しいことを始めるのではなく、まずは今の活動を見直してくださいとお伝えしています。講演の中で得た視点から日々の活動を見直してみると、新しい活動が自然と起き上がってくると思います。会社の構造を変えるのは時間もかかる大仕事ですが、まずは講演を聞いていただいている一人ひとりが自分ごとにして行動を見直してみて欲しいと思っています。私自身は教えているのではなく、ヒントを与える立場であると思っています。「私自身が講演を聴いている立場だったかもしれない」という思いが常にあり、聞いている人の次の一歩につながるようなメッセージをお伝えするよう心がけています。私個人だけでなく、CSOネットワーク自体も、身近なところから問題提起をして自分ごとにしてもらうというアプローチをとることが多々あります。

――今後の目標を教えてください。
「サステナビリティコミュニケーター」の肩書がありふれたものになるような世の中になって欲しいと思います。CSOネットワークの考え方や活動に賛同してくれる方と輪を広げていきたいです。

 

聞き手所感:
一般企業に勤めていた過去があるからこそ、説得力があり実践的な活動ができているということがよく分かるお話でした。SDGsや持続可能性に注目が集まるいま、サステナビリティコミュニケーターの第一人者として、今後ますます活躍の幅が広がっていくと思います!

次回は、CSOネットワーク事務局長・理事の長谷川雅子のインタビューをお届けします。どうぞお楽しみに!

聞き手:CSOネットワーク プログラムアソシエイト 山本真穂

 

プロフィール:

梁井 裕子(やない ひろこ)
サステナビリティコミュニケーター

企業の社会的責任や地域に密着した中小企業の持続可能性向上に関する取り組みの調査や情報発信に関するプロジェクト、SDGsやビジネスと人権の普及に関する事業等を担当。翻訳会社でのプロジェクトマネジャー、企業のCSRレポート制作・広報担当、国連グローバル・コンパクト(UNGC)の日本事務局であるグローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)においてUNGCおよびSDGsの普及に関する業務等を経て、2018年より現職。さいたま市CSR推進会議委員、英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。

 

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