CSOネットワーク 提言&コラム

インタビューシリーズ「CSONJな人たち」Vol.3 古谷 由紀子

投稿日:2021/06/25
カテゴリー: CSONJな人たち

CSOネットワーク(CSONJ)を取り巻く人たちをご紹介するインタビューシリーズ「CSONJな人たち」第3弾は、代表理事 古谷由紀子です。社会におけるCSOネットワークの役割や自身の原点など、様々な角度から語ってもらいました!

――ちょうど先月、「中期行動計画2023」が発表されました。こちらのポイントを教えていただけますか。
サステナビリティを地域、企業、社会的インパクト評価を柱に推進していく「ビジョン2020」の基本方針を踏襲しつつ、新たに「市民社会の強化」を柱に加えたところが大きなポイントです。従来より基本の考え方として「市民社会」の視点を持って進めてきましたが、団体外の人々の期待も踏まえて、あらためて明文化し、中心の活動の柱としました。

――市民社会という柱のもと、どのような活動を行っていきたいと考えていますか。
つい最近、パブリックコメントを二つ出しました。市民側の視点から提言していくべきことを発信していくということも中期行動計画の実践の一例ではないかと思います。CSOネットワークでは、これまで、地域や企業との関わりの中で依頼を受けて発信する機会はあったものの、自発的に発信することが少なかったという反省があります。今後、自ら機会を作り発信していくことで、自分たちの活動を見直すきっかけにもなりますし、依頼先企業に対してもCSOネットワークの考え方をより理解してもらえることになるのではと考えています。

――サステナビリティ消費者会議の代表も務めていらっしゃいますが、市民社会と消費者の関係性についてはどのように捉えていらっしゃいますか
「消費者」は企業のサービスを買ったり使ったりする立場で、「市民」は企業との関係だけでなく、社会の一員として、より広い意味合いを持つ概念です。例えば、労働者という立場は消費者の視点からはなかなか考えることはできませんが、市民という括りのなかで考えることができます。代表理事着任以前は、消費者という立場を大切にして活動をしてきたのですが、今は、より市民の目線を意識するようになりました。いずれの立場にも身を置くことで、視野が広がり、それぞれの活動がしやすくなったように感じています。消費者という視点と、それを包含する市民の視点が相互作用をもたらしてくれています。

座談会での一枚

――そもそも、古谷さんが消費者に関する活動に入られたきっかけは何だったのでしょうか。
もともと仕事をするなら人の役に立つ仕事をしたいという思いがあり、大学で学んだ法律の知識を活かしたいと考えていました。そこで出会ったのが消費生活アドバイザーという資格です。直感的に、消費者の立場で活動をすることが、社会の役に立ち、かつ法律の知識も武器として生かせるのではないかと思ったのです。
もう一つ思い当たるのは、社会はフェアでなければいけないと子どものころから思っていたということです。争いごとはしない性格なのに、小さな子を仲間はずれにしていた年上の子に泣きながら抗議したこともありました。大人になってから、あれは「フェアでない」ということに怒っていたのだと気づきました。消費者と企業の関係も、情報や力関係で「フェア」ではないことが問題が起きる要因でもあります。消費生活アドバイザーという資格はは企業と消費者のフェアな関係を築くために活用できる資格であり、これに携わることでフェアな社会を実現できるかもしれないということを直感的に感じて惹かれたのだと思います。

――SDGsについてはどのようにお考えでしょうか。
人々は新しい概念や枠組みが入ってきて、それがトレンドになってくるとそのまま受け入れようとする傾向がありますが、それが問題であると思っています。新しい概念や枠組みが入ってくるにはその理由があることから、なぜそれが生まれたのかを根本的に考える必要があります。SDGsであれば、持続不可能な社会の実態があったからこそ生まれたもので、そこを本質的に理解しないまま、トレンドとして、または取り組まないことがリスクだからと、無批判に受け入れてなぞるだけでは意味がありません。本質的な理解をすることで自分の立ち位置で個人や企業のできることが見えてくるはずです。

パネルディスカッションでの登壇の様子(最右席) 出典:平成30年度 消費者教育ワークショップ in ヌエック 報告書

SDGsに関するものも含め、わたしは講演をする際、何かを「紹介」するだけの講演は絶対にしないようにしています。自分なりの問題意識と考えを示しながら、参加者に問いかけていくようにしています。聞いている皆さんが自ら考え、自らの事業や活動と照らし合わせて、何をすべきか考えて欲しいと思うからです。それができれば、SDGsで示された目標があるから、ではなく、そこに持続不可能な実態があるから解決しなければいけないということになるはずですよね。現在、目標ありきで取り組んでいる事例が多いようにも見え、危機感を抱いています。本質的な理解をもとに取り組むことで小さな行動であってもたしかな問題解決に向かっていくことができるように思いますし、それを望んでいます。

――どうしたら自分ごと化して主体的に考えることができるでしょうか。
自分が社会・環境の重要な一人であるということを意識できれば、主体的に問題解決できると思います。鍵のひとつは、教育だと思っています(※)。日本ではこれまで知識を一方的に与えられる教育が行われ、社会の一員としての教育は弱かったように思います。例えばスウェーデンの教科書を見ると、個人が社会の一員であるというところから出発しています。また消費者に商品・サービスを提供する企業においても、「消費者に満足してもらう」ことを目的にしており、受け身の消費者を作るという側面を持っています。消費者の声を聞いて消費者が主体的に選択するために必要な情報を開示することが必要です。持続可能な社会を作る責任は企業だけでなく消費者にもあるのですから、ともに社会の一員として力を合わせて様々な問題に向き合わなければなりません。
CSOネットワークでは、市民がSDGsなど持続可能な社会への取り組みを自分ごと化して取り組むために、市民社会を強化しつつ、企業のサステナビリティや地域活性などにもつなげ、社会全体が持続可能になる役割を果たすことができるのではないかいと思います。このような市民を企業や地域とつなぐような役割を担っている組織はあまりなく、大変難しいので知恵も必要ですが、一歩ずつ進んでいきたいと思います。
(※)CSOネットワークのSDGs教育に関する情報はこちら

――今後どうしていきたいか教えてください。
中期行動計画で示したようなCSOネットワークの方向性を尊重しつつ、組織として成長したいと思っています。専門性のあるスタッフが多い一方、そのような「人」に依存している面もあるので、次世代の人材育成と同時に仕組みやプログラムを整備し、組織としての持続可能性を高めていきたいと思っています。CSOネットワークの持続可能性を高め、社会での存在意義を高めること、それが私の役割だと思っています。

聞き手所感:
子どもの頃から抱いてきたフェアな社会への思いを軸に、法律、消費生活アドバイザー、CSOネットワークと歩んで来られ、古谷さんの芯の通った強さを感じました。

次回もお楽しみに!

聞き手:CSOネットワーク プログラムアソシエイト 山本真穂

プロフィール:


古谷 由紀子(ふるや ゆきこ)
代表理事

博士(総合政策)、消費生活アドバイザー
・所属等:サステナビリティ消費者会議代表、CSRレビューフォーラム共同代表、日本経営倫理学会理事、(公社)日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会監事
・委員等:消費者庁「消費者志向経営の推進に関する有識者検討会」委員(2020年~)、総務省・経済産業省「企業のプライバシーガバナンスモデル検討会」(2020年~)など。
・主な著書:「消費者志向の経営戦略」芙蓉書房出版(2010年)、「ISO26000実践ガイド」(共著)中央経済社(2011年)、「現代の消費者主権―消費者は消費者市民社会の主役になれるか―」芙蓉書房出版(2017年)
・主な論文:「『責任あるビジネス』における実践と課題-国際合意・基準からの考察-」日本経営倫理学会「サステナビリティ経営研究」(2020年)、「『持続可能な消費』を進めるために」企業と社会フォーラム(2017年)

【講演テーマ例】CSR(ISO26000、SDGs、ビジネスと人権)、持続可能な生産消費、デジタル社会と個人、ステークホルダーとの対話・エンゲージメント

講師派遣についてはこちらをご参照ください。

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