CSOネットワーク 提言&コラム

新コラムシリーズ『ケースから考える「ビジネスと人権」ライブラリー』始めます。今回のケースは『「ビジネスと人権」とSDGs』

投稿日:2022/05/02

皆さん、こんにちは。サステナビリティコミュニケーターの梁井です。ゴールデンウィーク、いかがお過ごしでしょうか。

CSOネットワークでは、2021年9月にハンドブック『ケースから考える「ビジネスと人権」』を発刊しました。ハンドブックでは、デジタル社会、気候変動、マーケティングという3つのケースをもとに、「ビジネスと人権」に関する「問題」に気づき、人権の主体である人々と「対話」し、広く問題を「解決」していくためのナビゲーションを提供しています。

ハンドブックでは3つのケースを取りあげましたが、それぞれのケースはさらに様々な視点から掘り下げ、考えることができ、また他にも「ビジネスと人権」に関連した様々なケースがあります。新シリーズ『ケースから考える「ビジネスと人権」ライブラリー』では、様々な視点から「ビジネスと人権」を考える際の視点やケースを取り上げ紹介していきます。

今回、取りあげるケースは『「ビジネスと人権」とSDGs』です。

SDGs(持続可能な開発目標)の社会的認知度は、2021年12月に実施された調査(*1)で約7割強に達したそうです。様々なメディアでも毎日、SDGsについて目にするようになりました。一方で、昨年、日本企業のビジネスと人権への取り組み状況に関する日本政府として初めて実施された調査(*2)によると、まだ3割以上の企業が「ビジネスと人権に関する指導原則」について、知らないと回答しており、企業に求められる人権デュー・ディリジェンスの内容まで把握している企業は7割に留まっています。

SDGsを含む、我々の世界を変革する持続可能な開発のための2030アジェンダのパラグラフ67には企業への期待として、「ビジネスと人権に関する指導原則」を含んだ記述があります。

パラグラフ67:民間企業の活動・投資・イノベーションは、生産性及び包摂的な経済成長と雇用創出を生み出していく上での重要な鍵である。我々は、小企業から協同組合、多国籍企業までを包合する民間セクターの多様性を認める。我々は、民間セクターに対し、持続可能な開発における課題解決のための創造性とイノベーションを発揮することを求める。
ビジネスと人権に関する指導原則と国際労働機関の労働基準」、「児童の権利条約」及び主要な多国間環境関連協定等の締約国において、これらの取り決めに従い労働者の権利や環境、保健基準を遵守しつつ、ダイナミックかつ十分に機能する民間セクター活動を促進する。

このように、SDGsの達成に向けた取り組みにおいて、企業には、人権や労働、環境に関する国際基準を遵守しつつ、課題解決のために創造性とイノベーションを発揮してほしい。と、創造性・イノベーションの発揮と国際基準の遵守の両立を求めているのです。

企業向けのSDGsガイダンスである「SDGsコンパス-SDGsの企業行動指針」(*3)を参考にされている方は多くいらっしゃるでしょう。「ステップ1 SDGsを理解する」には、「企業の社会的責任」として、「企業の規模、業種、操業地域にかかわらず、すべての企業が関連法を遵守し、国際的に定められた最低基準を維持し、普遍的な権利を尊重する責任を有するという認識の上にSDGsコンパスは成り立っている。」との記述があり、「ビジネスと人権に関する指導原則」についてもしっかりと書かれています。

4月から新年度が始まり、様々な組織で新たな事業を開始された方や、新しいメンバーでSDGsの推進を模索されている方などもいらっしゃるかもしれません。SDGsが目指すのは「誰一人取り残さない」持続可能な社会です。ぜひ、あらためてそれぞれの取り組みを見つめなおしていただき、SDGs推進のベースにしっかりと「ビジネスと人権」の視点を組み込んでいただければと思います。

『ケースから考える「ビジネスと人権」ライブラリー』、次回もお楽しみに。

 

(参考)

*1:第8回SDGs認知度調査(朝日新聞社)

https://miraimedia.asahi.com/sdgs_survey08/

*2:「日本企業のサプライチェーンにおける人権に関する取組状況のアンケート調査」(経産省・外務省)

https://www.meti.go.jp/press/2021/11/20211130001/20211130001.html

*3:「SDGsコンパス-SDGsの企業行動指針」(GCNJ,IGES)

https://ungcjn.org/sdgs/whyneed.html

 

ハンドブック『ケースから考える「ビジネスと人権」』

デジタル社会、気候変動、マーケティングという3つのケースをもとに、「ビジネスと人権」に関する「問題」に気づき、人権の主体である人々と「対話」し、広く問題を「解決」していくためのナビゲーションを提供しています。 詳細はこちらのページをご覧ください。

 

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ビジネスと人権に関する指導原則について、初めて知る、という方に向けて、ビジネスと人権に関する指導原則の3本の柱や人権デュー・ディリジェンスなどのポイントを解説しています。こちらからご覧ください。

 

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